2024 第36節 福島ユナイテッド×ツエーゲン金沢
※戦術は第2部です。
第1部:ポストに当たって入った、ある日曜日の物語
金沢の街は、その日、特別な透明感に包まれていた。十一月にしては温かい日曜日。空は妙に青くて、記憶の中の色彩のようだった。ニューオーダーの「Regret」のイントロみたいな、そんな透明感のある午後だった。いつもは曇り空のマンチェスターが見せる、稀有な青空のように。
その時間、日本のどこかで、誰かがボールを追いかけていた。異なる場所で、異なる夢を見ている誰かがいる。そして金沢の空の下では、また違った物語が始まろうとしていた。
時計が進むにつれて、スタジアムの空気が重くなっていく。どちらのチームも勝利を必要としていた。それは目には見えないけれど、確かにそこにあって、誰もが感じ取れるような重さだった。大森から矢島、そして清水一雅へ。彼の左足から放たれたボールは、どこか違う次元から来たかのようだった。ポストに当たったボールは、量子力学の実験でも見ているかのように、最も自然な軌道を選んでゴールに吸い込まれていった。
試合後、寺田周平監督は語った。「チーム全員でいい雰囲気を作ってきた」と。その言葉には深い余韻があった。まるで、長い長い物語の一つの章が、静かに幕を閉じるような。
この日の試合について、誰もが何かを考えていただろう。90分という限られた時間の中で、人生のすべての要素が凝縮されていた。期待、失望、希望、そして時には奇跡。
僕は車を走らせていた。遠くに見える街の灯りは特別に美しかった。J2昇格プレーオフという言葉が、遠い竪琴の音のように響いていた。
サッカーの試合は不思議なものだ。90分の間に、世界は何度も反転する。でも、最後には必ず誰かの物語が完成する。この日は、福島ユナイテッドという名のチームが、金沢という街で、自分たちの物語を紡ぎ出した。
サービスエリアでコーヒーを飲んでいると、どこからともなく風が吹いてきた。その風は、これから始まる新しい物語を運んでくるような、そんな匂いがした。
第2部:戦術総括 プレス&サイド攻撃で3バックを崩す
基本フォーメーション
福島 : 4-3-3
金沢 : 3-4-2-1
プレス成功の仕組み
金沢の3-4-2-1に対して、ここのプレスの掛け方が素晴らしかったですね。
3トップがセンターバック3枚に対して、顔が上がらないようにプレスを仕掛けていく。これだけじゃないんですよ。インサイドハーフがダブルボランチに対してピタッとマークをつけていく。で、福島のサイドバックが相手のウイングバックに対して果敢に前進で対応していく。
ここでね、Football LABが出しているチャンスビルディングポイントの「奪取」ポイントが今季平均76.19から92.59まで上がってるんですよ。これ何を意味するかというと、プレスの質が非常に高かったということです。
相手の3バックからのビルドアップに対して、数的な対応がうまくハマった形ですね。
サイド攻撃の進化
そしてもう一つの重要なポイント。森選手、塩浜選手のサイドでの動きですね。
通常であれば中央に入ってきてプレーすることが多い選手たちなんですけども、この試合ではサイドでの動きを増やしていった。これがね、非常に効果的だったんです。
ヒートマップを見ると歴然なんですね。
なぜかというと、3バックのセンターバックを横に引き出すことができるんですよ。センターバックが横に動くと、必然的に中央にスペースが生まれる。このスペースを使って攻撃を組み立てていく。
つまり、サイドでプレーすることで、センターバックを広げて、中央にスペースを作ることに成功した。これが今回の攻撃面での重要なポイントでした。
総括
この試合で見られた2つの要素:
高い位置からの効果的なプレス
ウイング選手のサイド起点の攻撃
この2つがうまく機能して、苦手な3バックに対して勝利することができました。
ただし、これで完璧というわけではありません。ギリギリの勝利だったということは、まだまだ改善の余地があるということです。
今後は:
プレスの強度とタイミングの調整
相手を押し込んでからの焦らない攻撃とカウンタープレス
90分通じての運動量の配分
これらを改善していくことで、より完成度の高いサッカーができると考えています。
次節は4バックの沼津です。沼津は4-3-3です。4-4-2とは違います。バイタルエリアの番人(ピボーテ)がいます。ただ、プレス場面では4-4-2に可変します。チャンスです。福島にとっては得意の4-4-2です。富山を蹂躙するくらい得意とする4-4-2です。今シーズンの集大成を見せてください。必ず勝ち点3を取りましょう。
以上、総括とさせていただきます。