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2025 J3 第2節 テゲバジャーロ宮崎×福島ユナイテッドFC

守るべき哲学、見失った戦術的真実「それが、何かを知るということ」

いちご宮崎新富サッカー場。

季節の変わり目を感じさせる風が吹いていました。

期待は裏切られ、希望は砕かれました。

1-3の完敗。

シュート数わずか4本。

1試合4本は2024 13節奈良戦まで遡ります。

2024シーズンの平均14.2本から激減した数字が、全てを物語っています。

しかし「不正解は無意味を意味しない」のです。

この敗北には、明確な理由があるのです。


初期配置:宮崎4-2-3-1 福島4-3-3


戦術スタッツ

監督と選手の言葉

寺田周平監督は試合後こう語りました。

「試合では、僕も含めて勇気を持って試合に臨めなかったと感じました。選手は一生懸命にプレーをしていましたが、ピッチの中で自信を持って、強気でいつも通りのプレーができるように、もっともっと後押しをしてあげなければいけなかった」

この言葉の裏には、戦術的な本質が隠されています。

勇気の欠如とは、システムの不適合に他なりません。

私は昨年、何度かこのビルドアップの不安定さを指摘してきました。

しかし、タレントが揃っていた昨年は何とかできていた。

大関選手という才能に依存することで、本質的な課題から目を背けていた状態だった。

森晃太選手は得点を挙げながらも、こう語っています。

「テゲバジャーロ宮崎は球際が強く、組織的にうまく守備をしてくるチームだったので、自分たちの良さを出せず、悔しい敗戦となってしまいました」

これは球際の闘争心だけの問題ではありません。

組織的な守備に対して、我々の攻撃システムが機能不全に陥ったということです。

三つの課題

この試合の問題点は、明確です。

  1. ビルドアップ時にCBが相手と数的同数であること

  2. 中央攻撃のみでサイドを使わないこと

  3. セットプレー守備の脆弱性

ビルドアップの問題

1つ目のビルドアップについて。

宮崎は守備時4-4-2で、福島ピボーテ針谷選手を背中で消しながらCBにプレス。

これでCBからピボーテへのパスコースが消えるのです。


宮崎のプレスは4-4-2。カバーシャドーでピボーテを消しながらCBへプレス。

お分かりですね?

昨年2024シーズンは、ここにインサイドハーフ(IH)の大関選手が降りてきて、ビルドアップの出口となっていました。

彼が相手を引き付けてスペースメイク、サッカーIQの高さを見せたのです。

しかし彼はいません。

2024シーズンも決して、陣形的に利があったわけではありません。

「一生快適な自己否定に留まるか、全てを捨てて自己肯定に賭けて出るか」

現状維持か、戦術的革新か。

答えは既にあるのです。

クライフが、ペップが答えをだしています。

すなわち相手2トップに対し、3バックをつくること。

可変で3バックを作ります(この場合、鈴選手が左の方がスムーズです)。

ピボーテが降りても構いません。とにかく3バックを作ります。

これで数的優位がつくれますのでサイドCBが持ち上がります

相手2トップに対し3バックをつくることで数的優位をつくる

「現状を前に向かわせる希望は...他者が引き起こす捩れが、現状を前に向かわせる希望なのかもしれない」

バルセロナ、マンチェスター・シティ、そして世界の最先端。

彼らが示した道筋を辿ることに、解決策があるのです。

あとはやるかやらないかです。

幾何学的真実

2つ目は中央攻撃への偏りです。

福島Uの攻撃スタイルはウイングも中央化し、中央に人を集め最短経路でゴールを目指すスタイルです。

突破できれば即チャンスとなりますが、ピッチの幅を使えず相手も密集するため引っかかりやすいデメリットがあります。

中央に密集する福島のスタイル。相手も中央を閉めるので中にスペースがない。

戦術とは、ピッチの幾何学です。

ウイングがタッチラインを踏むことで生まれる戦術的利点は、幾何学的に説明可能なのです。

ピッチ幅を最大化することで、相手ディフェンスは横方向に約5-7メートル間隔を空けざるを得なくなり、中央エリアのマーク間隔が拡大します。

4-4-2陣形は凸形ブロック。WGは幅を取る。Uの字でサイドチェンジをし、相手を広げる。

戦術を理解するためには、ピッチを平面図形として捉え直す必要があるのです。

2000年代後半のバルセロナにおけるペップ・グアルディオラの戦術革新は、ウイングの役割を根本的に変化させました。

リオネル・メッシやアンドレス・イニエスタのような、タッチラインを踏むポジショニングと中央への切り込みを組み合わせた新しいプレースタイルが確立されました。

最新の戦術トレンドでは、タッチライン際のポジショニングが単なる幅の確保だけでなく、攻撃リズムのコントロールに活用されています。

2024-25シーズンのマンチェスター・シティでは、ジャック・グリーリッシュが左ウィングでボールを保持することで、攻撃のテンポを意図的に遅らせつつ、逆サイドのフィル・フォーデンが縦方向への突破を仕掛ける「非対称攻撃」を展開しました。

これらはあくまで一例です。

サッカーは相手あっての競技です。

長くなったのでセットプレーについては今回は割愛します。

未来への道標

次の試合はアウェー3連戦の最後となります。

立ち止まっている時間はありません。

今がチームの岐路なのです。

個性を生かしながらも、陣形の利を活かしたサッカーへと進化する。

それが我らが福島ユナイテッドFCに求められる「今」の姿なのです。

サッカーとは単なる勝敗を超えた芸術です。

攻防の中に哲学が宿り、戦術の中に知性が光る。

そして今こそ、私たちは問いかけなければなりません。

自分たちの本当のサッカーとは何か?

「あの感動を生き残らす」ために、我々は何をすべきなのか?

敗北から学び、変化を恐れず、進化することを選ぶこと。

きっとそれが、何かを知るということなのでしょう。


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