2024 33節 福島ユナイテッド×カターレ富山
4-4-2をめぐる戦術の物語
―あるいは、バイタルエリアにまつわるほとんどすべてのこと―
プロローグ
僕はよく考える。サッカーのピッチで、選手を結ぶラインの間に生まれる空間のことを。それは時として、魂の居場所のような気がする。三角形や四角形。そこは誰のものでもあり、誰のものでもない特別な場所だ。
その日、富山の強風の中で僕らは、サッカーにおける空間の謎に、一つの答えを見出すことになる。
福島ユナイテッドはアウェーでカターレ富山と対戦し、4-1の快勝を収めた。この勝利により、福島は昇格プレーオフ圏内となる6位に浮上。残り5試合を控え、チームの戦術的成熟が如実に表れた一戦となった。
試合の基本構図
初期配置
両チームの布陣
福島:4-3-3
富山:4-4-2
(敬称略)福島は4-3-3、富山は4-4-2のフォーメーションで臨んだ本戦。福島は相手の4-4-2システムの弱点を的確に突く戦術を展開した。富山のプレスは2トップカバーシャドー。2トップがピボーテを切りながらCBにプレス。これに対して福島は、ゴールキーパーを含めた3バックで対応。相手を自陣深くまで誘い込むことでバイタルエリアのスペースを創出し、ファルソ・ヌエベや中央に切り込んでくるウイングがそのスペースを効果的に活用した。
富山の守備構造は明確だった。ブロックは4-4-2。中からの侵入を防ぐように4人の中盤が中央を固めた。
富山のプレスへの対応
CBにプレスがかかるとキーパーを含めた3バックで対応
相手を自陣深くまでおびき寄せる
バイタルエリアを広げる意図的な展開
広がったバイタルの活用
F9(フォルスナイン)の降下(樋口)
中央化したウイングの動き
CB、キーパー、MFからのバイタルへの縦パス
4-4-2システムの本質的な弱点
4-4-2は以下の2つのエリアに弱点がある:
2トップとWボランチで囲まれるボックス
WボランチとCBで囲まれたボックス(バイタルエリア)
例えば、CBが前に出ればスペースが空く。ボランチが下がれば中盤にスペースができる。どちらが対応するか判断が必要で、そこに時間差、空間が生まれる。
攻略法
これらのエリアへの人の配置→ピボーテ、F9
理由:これらのエリアに選手が侵入した際、守備側の対応が曖昧になる
実践での成功例
特筆すべきは3点目、4点目の得点シーンだ。3点目は山田から大関への鋭い縦パスから始まり、大関の巧みなターン、樋口、森とのパス交換を経て、最後は塩浜が決めた。4点目は継続的なパス交換とカウンタープレスで奪取したボールから、樋口、吉永を経由し、森が抜け出して決勝の一撃を放った。
逆足サイドバック
逆足のサイドバックを起用する革新的な試みも功を奏した。前節に引き続き、左利きの鈴選手を右サイド、右利きの森瑠太選手を左サイドに配置することで、攻撃の幅を広げることに成功。63分30秒には、この配置を活かした効果的な展開シーンが見られた。ワンタッチでRSB森からピボーテへ展開。
戦術的成果と今後の展望
残り5試合中4試合が3バックシステムを採用するチームとの対戦となる。これまでの対戦成績は、3バック相手と4バックで明暗を分けている。3バックシステムの攻略が、プレーオフ進出の鍵を握ることになりそうだ。
対戦相手フォーメーション別の成績
対3バック:5勝2分10敗
対4バック:10勝2分4負
残り5試合の展望
対戦相手のフォーメーション
相模原(3バック)
奈良(3バック)
金沢(3バック)
沼津(4バック)
いわて(3バック)
寺田周平監督は前述の"逆足サイドバック"や針谷選手をピボーテで先発起用。これら采配は、残り5試合での昇格を見据えた新たな戦力強化の一環と見られる。
エピローグ
ここからは戦術も大事だが、それ以上に大切なのは、チームが持つ見えない力。普段以上の何かを発揮できるか。それが、すべてを決めるのだろう。