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ご近所ジャングル

私は一年前からシングルマザーになった。
三年前に夫の暴力から娘ちゃんを守るために、近所の交番に駆け込み、そこから濁流に流されるように調停離婚となった。
現在は80代の実母と娘ちゃんと3人で実家に暮らしている。

十年前に舌ガンの手術をして後遺症は負ったが、食べたい欲が功を奏し、今ではお餅と繊維質の強い野菜、ナッツ類以外は食べられるようになった。喋りも言語学習アプリのスピーキングで合格をもらえるくらいに回復している。
日常生活家事全般に支障はないので、料理は私の担当になっている。
娘ちゃんは仕事柄家事をする時間がないし、母上は高齢なので風雨の強い日などは外へ出るのは危険だからである。一度強風に日傘ごと飛ばされて怪我を負ったことがあるので(それでも人生で骨折ゼロという強者)、危険回避できる私が買い物を担当するようになった。

食材の買い出しには毎日行く(私が外へ出たいだけ)。
近所には大型スーパーと中規模スーパーがそれぞれ一軒ずつあり、個人商店も何軒かあるので、買い物には大変便利な場所である。が、買い物ルート上に中高一貫校(男子校)があり、そこの生徒が中々に曲者なのだ。
有名私立中高一貫校なので、学力はあるのだろうが、どうやら一般的なマナーをご存知ないらしい。
学校から駅への道が狭く、車同士がすれ違う時は歩行者が道の端の凹んだ部分に入って待ち車を先に行かせてあげないと、立ち往生になってしまうので、この地域にお住まいの方々は子供からお年寄りまで、絶妙な感覚で道を歩いていく。
だがこの学校の生徒は、ほとんどが電車通学で遠方から通っているため、土地のルールをご存知ないようだ。親御さん共々。
土地のルールを知らないのは仕方ないとしても、先生方や地域の方々から注意を受けても知らんぷり。自分達以外は存在していないかのように、人や物を蹴散らして歩くのだ。駅までの道に商店街があるのだが、その歩道を追いかけっこやスマホゲームをしながら進むもんだから、お店のワゴンを薙ぎ倒し、前を歩く大人たちやお年寄りを突き飛ばし、車道に飛び出し車を急停止させる始末。先日、とうとう我慢できずに、前を広がって歩く坊や達に向かって
「Hey!Boys!Mey I pass?」(おい、坊主たち、通ってイイかい?)
と呼びかけた。
舌ガン摘出手術の後遺症があるため言葉がクリアに話せないので、通じないかもなぁと思いながら呼びかけたのだが、不明瞭な発音➕英語がめちゃめちゃ効果あったらしい。健常者の大人が言うより、よっぽど興味をひいたらしく、秒で道が開いた。レアキャラを見つけたと思ったのか、スマホを向けてくるガキ・・・いやいや坊ちゃん達もいたが、思いっきりスマホに向かってピースしてやったら静か〜に引いていった。

娘ちゃんが中学生だった頃、授業参観に行った時、同じクラスの子が
「お母さん、アジア系出身?」
と娘ちゃんが訊かれたということがあった。
理由を尋ねたら「テンションが日本人ママじゃない」と答えが。
娘ちゃんが英語が得意で外人先生としょっちゅう英語でお喋りしていたのと合わせて「〇〇(娘ちゃん)のママはアジア系の国の人」と言う結論に達したらしい。面白い分析をするものである。
坊や達が道を開けてくれたのも、私のテンションのなせる技なのかもしれない。

我が家は観光地にあるので、夏になると、もっともっと猛獣・・・いやいやお客様がたくさんいらっしゃるので、外人さんに対してよりも日本のお子達に、このテンションと英語をぶつけてみたら、思わぬ効果が出るかもしれない。今度の夏、試してみようかな・・・ほどほどにね。
日本の子供達は(大人もいるけど)言語アレルギーなので、聞きなれない言葉で話しかけられると爆速で逃げる。
中国語と韓国語も勉強してるから試してみようかと企むBBAである。

今のこのジャングルを、ハンデを抱えたまま生き抜くのは厳しいか?と凹んでいたが、このハンデも使いようによっては身を守る武器になると言うことを経験できて、坊や達に感謝。

だからって甘くはしないけどね。マナーとルールは守れよ若人。

今回はこれにてドロン。

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