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【百合OL】巨乳の先輩と貧乳の後輩。「episode9.“誘乳”誘われ、流される」

episode9.“誘乳”誘われ、流される


カフェを出ると、夜の空気がひんやりと心地よかった。

彩「……結構長居しちゃいましたね」

彩花がぽつりと呟く。時計を見ると、すでに22時を回っていた。

彩「そうだね。でも、彩花ちゃんと話してると楽しくて、つい」

さりなは微笑みながら、自然と彩花の隣に並ぶ。

さ「それに、まだ帰るには早いんじゃない?」

彩「えっ?」

さ「うち、寄ってく?」

彩「……えっ」

彩花は一瞬、耳を疑った。

彩「いやいやいや、もう遅いですよ!?」

さ「だからこそ。送るついでに、ちょっとお茶でもどう?」

彩「いえ、でも……」

彩花は言葉を濁しながら、さりなの顔をちらりと見る。

(……いや、これ絶対まずい流れでしょ)

このままついて行ったら、間違いなく喰われる。

さりなは最近、やたらと距離が近いし、カフェでも「可愛い」だの「魅力的」だの、まるで口説かれているような発言ばかりだった。

しかも、さりなはただの先輩ではなく、仕事のできる上司。経験値も違うし、何より押しが強い。

(……この人、誘い方が自然すぎる)

さ「ちょっとだけなら……どう?」

さりなが覗き込むように微笑む。

彩「ほら、彩花ちゃん、この前言ってたでしょ? 家と職場の往復ばっかりで、人の家に行く機会も減ったって」

彩「そ、それは……」

さ「じゃあ、たまには誰かの家でゆっくりするのもいいと思うよ?」

さりなは軽い調子で言うが、彩花の警戒心はまったく解けない。

(行ったら、絶対流される……!)

彩「……いや、でも」

さ「うん?」

彩「……」

(……でも、ここで断ったら、なんか負けた気がする)

そう考えた瞬間、自分でも驚くほど簡単に理性が揺らいでしまった。

(いや、何に負けるっていうの!?)

彩花の中で警報が鳴る。

だが、さりなは何も急かさず、ただ穏やかに待っている。

――それが、ずるい。

彩「……ほんの少しだけ、ですよ?」

彩花は、諦めたようにため息をついた。

さりなは一瞬驚いた後、ふっと微笑む。

さ「うん、分かった。じゃあ、行こっか」

(……しまった)

そう思った時には、もう遅かった。


(第10話へ続く)

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