①実家に元婚約者を連れて帰った時の話(オカルトVer.)
数年前、元婚約者と同棲していた。お互いいい年だったし、お付き合いは結婚を見据えてと考えていたので付き合って数か月でお互いの親に顔合わせをすることになった。
彼は豊島区出身の都会っ子。同棲していた私たちの家から私の実家に近づくたびに彼の顔がどんどん不安げになっていた。
「ほら、あそこが私の家だよ。」
私の家は車窓から見えるくらい線路に近かった。彼は眉間にしわを寄せ、あんな犬小屋に住んでるんだと言った。
犬小屋、どうやら私の家の横にある物置小屋を見てそう思ったらしい。どういうことだってばよ。
家までの道中も虫が、蜘蛛の巣がと腕を振り回す彼。連れて帰ったけどすでに心が折れそうだった。
家が見え始め、あれが私んちだよというと彼は犬小屋の何倍もの大きさの家に驚いた。そりゃ田舎の家が小さいわけない。
家に入ってからも応接間の豪華な装飾に目を輝かせていた。ピアノ、シャンデリア、大理石のテーブル、革張りのソファセット、白熊のカーペット、壁にはウミガメのはく製、誰も読まない本が敷き詰められた本棚、誰も使わないレーザーカラオケ。
(ここで別ルート→)
父に彼の紹介も終わり、夕飯も風呂も済ませた後彼とゆっくりできる時間が持てた。どうだった?と聞くと良い家だし面白いお父さんだね、と言ってくれた。
喉が渇いたんだけどジュースないの?と彼に聞かれたけれど、年老いた親の家にはお茶ぐらいしかなく、二人で自販機に行くことにした。
街灯もまばらな夜の田舎道。自販機など近場にあるわけもなく、遠い遠いとぼやく彼を少しでも楽しませようと少しからかおうと、怖い話をしてみた。
「この旧道って今はあんまり通らなくなったんだけど、昔この辺で殺人事件あったらしいんだよ」
すると突然「ワハハハハハハハハ!!!!」と耳をつんざくような笑い声が耳のすぐそばで聞こえた。
彼ははじかれたように私を置いて一目散に逃げる。私は彼を追いかける。彼は私の方を振り返ることなく実家まで走り抜けた。
家に着いたあと彼に、あの声がしたところは以前消防署のあったところでシャッターが閉まっていたからその消防署の向かいにあるMくんのおうちから漏れた声がシャッターに跳ね返って反響したに違いないとおびえる彼をなだめた。
正直私も怖かったけど彼をなんとか引き留めるのに必死だったんだと思う。今思うとすべてがクソなんだけど。
結局声の主がなんなのかいまだにわからない。けれど、無意識にMくんの家から漏れ聞こえた声ではない明らかな異常は感じている。切り取られたかのような笑い声が誰もいない中、耳元でそれも爆音で聞こえるだろうか?
似たような話で「神様って見ちゃいけないんだよな?」という2ちゃんねるの過去スレッドがある。興味のある方はご覧ください。創作くさいけど。
【追記】
そういえば前に書いた私の祖母の話でも怖い話を伝えようとしてこういう事態に陥っていた。罰が当たっている?この記事も…やばい?
以前は文章としてまとめることが怖くて避けていた。霊障がありそうで。
それでもポツポツ人に話していたからこそ記憶に残っている。
きっと話していなかったら覚えてもいないだろう。