『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編 1 巻』感想・考察? ※ネタバレ有
『ようこそ実力至上主義の教室へ』を読み始めたのは、アマプラでのアニメ視聴がきっかけでした。なんとなく選んだアニメを最終話まで見た感想としては「ここで終わりじゃないだろう」と。「この作品は、まだ盛り上がるところまでアニメ化されていないだろう」と思い、電子書籍で原作のライトノベルを購入し読んでみたのですが予想通り、いや予想以上の展開が待っていました。
久々に読み物で興奮しましたね。本編におけるターニングポイントの 4 巻、7 巻や 11 巻、また本編でないように見せて実は見どころしかない .5 巻の熱さもさることながら、新章突入の 2 年生編は既刊と異なる流れとなっていて非常に楽しかったです。
この note は、いま私に蓄積されているこの熱量をどうにかして発散すべく作られています。この記事を作成している今日 (2020.5.27) は、2 年生編の 2 巻発売予定のおよそ一か月前にあたります。新刊発売まで熱をため続けても良いのですが、そうなると日ごろの業務に支障が出かねないと判断したため、こうして文章を練りながら頭を冷やそうとしているのです。
どうでもいい前置きはさておき、次項からは 2 年生編を読んで自分なりに考えたことをまとめていきます。正直なところ、既刊で描写されたことを全部覚えているわけではないので、もしも何かおかしな点を見つけたのでしたらコメントで教えていただけたら幸いです。
全体の流れとして
2 年生編の 1 巻は、既刊とは異なる流れで物語が進行したように感じました。おそらく多くの読者が感じたことだと思いますが、伏線回収のほとんどが最終盤で発生し、1 年生編よりも過激なクライマックスになっていた気がします。
こう感じた理由を考えてみたのですが、「綾小路がそこまで隠れて行動していなかったため」かな?と。もしくは「今までは綾小路がどのような行動をとったために事件が解決したかを推理する時間があったから」。
既刊では「問題解決された結果が先に開示され、のちに綾小路(あるいは黒幕)が何をしていたかが語られる」構成のお話が強く印象に残ってるんですよね。要するに、綾小路が秘密裏に攻めたお話、でしょうか。一方今回は綾小路が守りきったお話。それも今までとは違い、実力を隠さずに、見せつけるように。こうしたギャップが読者に衝撃をもたらしたと共に、綾小路に対してより強い異物感を生み出したのではないかな、と思っています。
公式サイトでも「出し惜しみするつもりはない」と言ってるので、今後、ほかのキャラクター達とどのように関わっていくのか非常に楽しみです。
個性豊かな新キャラクター達
2 年生編のスタートと同時に、新たに 1 年生のキャラクターが 6 名発表されました。
1-A 天沢一夏
1-B 八神拓也
1-C 椿桜子、宇都宮陸
1-D 宝泉和臣、七瀬翼
1 巻で綾小路に対して積極的に関わったキャラクターは、天沢、宝泉、七瀬の三名でした。ほかの八神、椿、宇都宮については不明部分が多く、今後どう関わってくるか楽しみです。
また、公式サイトでは「ホワイトルームからの刺客は果たして誰だ」と大きくキャッチコピーが掲げられているため、おそらくこの 6 名の中に綾小路を退学させようと仕掛けてくるホワイトルーム生が紛れている、はず、です。少なくとも一名以上は。画集の方でも言及されてましたし。
SNS や動画投稿サイトなどで、このホワイトルームからの刺客に関する考察がいくつか為されており、2 年生編の見せ場として注目されていることがよく分かりました。その例にもれず、ここでも各キャラクターについて考察できたらいいなと思っています。
天沢一夏
1-A 所属の学力、身体能力共に優秀な女子生徒。OAA では機転思考力に難ありと判断されているが、本編でもその評価が妥当であるというほのめかしがあるため、彼女の背景に関して大きな問題はないと考えられます。
しかし、後述する 2000 万プライベートポイントが懸かった特別試験に関与していることが巻末で明らかになっているため、綾小路が彼女にどう対応するかが今後発売される 2 巻で最も気になるところです。
彼女に関してまず考えなければならないのが、この特別試験を遂行するにあたって、なぜ宝泉(と七瀬)と協力しているのかについてです。
天沢は 1-A クラスなので、2000 万プライベートポイントを使ったクラス替えの必要は(特別な理由なしには)ありません。無論、クラス同士の争いの中で A クラスから落ちる可能性はあります。初期のクラスポイントが 1000 ではなく 800 であること、生徒にクラスポイントの制度について十分な説明が 4 月中にされていることから、今年の 1 年生は昨年の 1 年生よりも激しい争いをすることが可能になっています。そのため、クラス落ちや退学の保険として特別試験に挑むことに多少は説得力があります。
しかし、保険となると宝泉と組むメリットがどこにあるのかが不明です。プライベートポイントは大量に所持しておきたいものですから、仮に折半するにしても得でしかありません。ただ、クラス間競争について考えると、当然ながら他クラスとの協力はデメリットでもあります。先の考察に従えば、今年の 1 年生のクラス間競争は四つ巴になりやすい環境にあるため、他クラスに大量のプライベートポイントを与えることは、他クラスがその環境を有利に脱するための手助けになりかねません。そのため、「宝泉が天沢に協力させた」裏で(プライベートポイント以外の)何が取引材料になっていたかについて知らなければ、1 年生の思惑は見えてこないと思われます。
一、宝泉を 1-A に引き入れること
二、綾小路を退学させることだけが望み
三、プライベートポイントに関する特殊な契約
四、極めて個人的な協力関係、または暇つぶし、その他
一のケースは、天沢の「強い男の人が好み」という発言がそのままの意味ならばあり得るかもしれません。中学時代の噂からしても彼の身体的な実力は抜群のものだと分かりますから、1-A に引き入れることで今後の特別試験を有利に進めることができると予想されます。しかし、この場合は七瀬がこの一件に絡むメリットがありません。綾小路に対する憎悪に従った結果かもしれませんが、それだけの理由で A クラス行の切符が確定するのを脇で見ているだけなのかは不明です。加えて、現在の 1-D クラスから宝泉を失うことは強烈なデメリットになるため、いずれにしても七瀬が関与するメリットが(特別な理由がない限りは)ありません。
二のケースは、天沢がホワイトルーム関係者だった場合です。ただし、ホワイトルーム関係者の行動については考える余地があります。
三のケースについては、懸賞金によって獲得できるプライベートポイントを折半しない場合に発生すると考えられます。ただし、無人島試験での龍園のようなクラスポイントに関係する契約ではないため、果たしてそれが有効な契約であると言えるのかは不明です。
四については何もわかりません。ただ、宝泉が天沢のことを「よく知りもしねえ女」と呼んでいることから、少なくとも宝泉から天沢に対する特別な感情はないと考えるのが筋かと思われます。
以上のような動機が考えられるのですが、1 巻時点での彼女の行動は、全て綾小路を退学に追い込む計画を遂行するためのものとして描かれていました。今後、彼女の理念や背景が明らかになれば、より魅力的なキャラクターになる気がします。
八神拓也
学力と機転思考力が優れた 1-B 所属の男子生徒。身体能力は並だが社会貢献性が高く、総合的に見れば A クラス所属の方がしっくりきます。櫛田と同郷であることを口にしているが、彼が B クラスである理由に関係するかは不明(そもそもクラス配属の明確な線引きも不明ではあるが)。
八神に関しては「櫛田のことを知っている」程度の情報しかないため、現状考察できる要素はほぼありません。わずかに考えられる点があるとすれば、なぜあのタイミングで 2 年生の教室付近にいたのか、櫛田との会話にふんわりとした印象があること、櫛田が八神のことをやや警戒していること、1 年生とのパートナー決めに関して八神に借りを作ったこと、の四つ程度でしょうか。これらについて考えられる要素は少なく、今後どう転ぶか注目しています。
椿桜子
どの面においても並程度の能力を持つ 1-C 所属の女子生徒。作中では積極的に会話をする様子はなく、パートナー決めの相談についても同クラスの宇都宮に任せきりなのが印象的でした。
一部の考察では、花言葉から椿がホワイトルーム生ではないかと疑われていますが、個人的にはその手の考察はあまり当てにならないと思っています。ただ、あそこまでそれらしい花言葉になっていることについては非常に驚きましたね。
宇都宮陸
身体能力が特に優れた 1-C 所属の男子生徒。1 巻では登場するシーンが少なかったものの、今後、部活動に関連するイベントがあるならば再び登場するかもしれないなと思っています。
OAA の評価では社会貢献性が低く見積もられており、これは会話中で一回だけ示された、敬語を使う事を忘れた描写に由来しているのではないかと推測されます。しかしながら、学力は B 相当であることから、そこそこ学力のある人物なのに上級生に対して敬語を使うことが苦手になる背景とは?と疑いたくなります。1 年生のときの幸村のような思想を持っていたために、学力が下の先輩に対してため口で話そうとしてしまったとも考えられますが、この場合は椿の手助けをしていることが不自然に映ります。
綾小路とのパートナー決めの相談ではひたすら椿のフォローに回っている印象が強く、(機転思考力の低い)椿と組んでいることが不自然に感じられるため、二人の関係には何か裏があるのではと想像できます。まあ、綾小路が堀北に協力する関係と似たようなものと考えれば、そこまで不自然ではないかもしれませんが。
仮に宇都宮が椿に対して不利な立場にいる場合、宇都宮は椿に公開されたくない弱みを握られているというシチュエーションが考えられます。このとき、宇都宮の弱みとは何か、なぜ椿はその弱みを掴めたのか、宇都宮を動かすことによって椿は何を成し遂げたいのか、などの疑問点が生じます。あくまで想像に過ぎないため、これ以上の考察はできませんが、今後彼らが二人組で登場するのか、あるいは一人で登場する機会が多いのか、どういったシチュエーションで絡んでくるのかなど、気になる点が多く楽しみです。
宝泉和臣
1-D 所属の学力、身体能力が共に優れた男子生徒。2 年生編 1 巻のキーマンで、今後、1 年生が絡んだ問題や特別試験では必ずと言って良いほど警戒しなければならない人物かもしれません。身体能力が B 程度と評価されているのは、学業に生かさなかっただけだと考えられますね。
現状、1-D を取り仕切るリーダーとして君臨しているようで、入学直後にも関わらず 1-D を統率できるだけの発言力を手に入れています。クラスポイントを巻き上げるような行動はとっておらず、また 1 巻時点では 1 年生の中で暴力騒ぎが起きたような描写もないため、龍園とは異なるタイプのリーダーになる可能性があります。
初めての特別試験では 1-D クラスの全員に、50 万プライベートポイントの支払いを許容した 2 年生(2-D の生徒のみ?)とだけパートナーを組むように強要しています。もしクラスメート全員がこの価格でパートナーを組んだなら合計で 2000 万プライベートポイントとなりますから、この 50 万という数字には何らかの意味があったかもしれません。しかし、この空想の 2000 万プライベートポイントはクラスメートで分割された形で所有されるものです。作中では、宝泉がプライベートポイントを巻き上げることはしていないと七瀬が説明しているため、仮に空想の 2000 万プライベートポイントが集まったとしても、宝泉がそれを回収して一人だけクラス替えをするような真似はしないだろうと考えることはできます。単に、クラス内で退学者を出さないようにするための保険として考えていたのでしょうか。だとするならば、宝泉に対する印象が少し変わって見えるかもしれません。
また、裏で進行していた特別試験を達成するため綾小路に挑戦した人物であり、ホワイトルーム生を除けば、綾小路の実力を目にした最初の 1 年生です。七瀬の発言から、最初からこの特別試験を達成することを最優先に動いていたことが示唆されています。おそらく、1-D をまとめ上げるために使用していた秘密の手段はこの特別試験を利用したことではないかと考えられます。そう考えると、宝泉らがどの時点で、誰からこの特別試験を知った(伝えられた)のかという部分が今後の展開に関わってくると思われます。
まず、1-D を統括する手段についてですが、特別試験を利用したとすると以下のようになったと考えられます。
学校から生徒全員に特別試験(パートナーテスト)について通知。(初日、2 限目)
一之瀬が交流会を提案・設置。(初日、昼休み?)
放課後より前の時刻で、特別試験(綾小路の退学)について生徒数人に通知。(初日、時刻不明)
放課後より前の時刻で、宝泉が特別試験(綾小路の退学)を達成することを目標にしたことを 1-D で共有。達成報酬 2000 万プライベートポイントをクラスメート全員に分割して配布することと引き換えに、これが達成されるまではパートナー決めを 50 万プライベートポイントと引き換えに行うことを提案。(初日、時刻不明)
交流会への参加を拒否し、解散。(初日、放課後)
この提案と自身の強さを武器に、1-D をまとめ上げたのではないかと予想しています。この後(おそらくナイフを返品したとき)に天沢と接触し、具体的なプランを練っていったのではないかと思われるのですが、ここでいくつかの疑問が発生します。
一つ目は、天沢という協力者の存在です。もし上記のような条件で 1-D をまとめたのだとしたら、協力者である天沢には報酬のプライベートポイントが入りません。この場合、何を条件に互いに協力することを提案したのかが問題です。この取引の内容が 1 年生を知る上で重要な要素になると考えられます。
二つ目は、七瀬の発言です。七瀬は「まだ 1 年生のごく僅かな生徒しか知らない」と言っているため、特別試験の存在について宝泉はクラスメートに話していないことになります(具体的な特別試験の内容は伏せて話したとも考えられる)。こうなると、宝泉は机上の空論よりも粗末な提案をしたことになりますから、作中のような統率は不可能だったと思われます。
1-D を統括する手段をより詳しく考えるためには、綾小路の退学を目的にした特別試験の詳細が明かされる必要があります(単にクラス内だけで話題にならないよう暴力に訴えた可能性もある。だが宝泉が粗暴な性格なのは明らかなのに、それを綾小路に対して秘密にする必要はない)。現時点では不明点が多いため、2 巻以降で明かされることに期待したいです。
以上が宝泉についての考察になります。宝泉が特別試験で用いた作戦について、綾小路からは「無茶苦茶な作戦」で、「おまえだけだったら破綻していた」と酷評されているので、知略に関しては未だ成長の余地があるようです。
七瀬翼
全体的に高水準でバランスの良い評価を得ている 1-D 所属の女子生徒。OAA の評価は見る限りは B クラスは堅いと思われる能力を有しているが、おそらく「別途資料」を参考にした結果 D クラス配属になったと考えられます。
宝泉の補佐をするような行動をとっているが、彼女がどんな目的を持っているのかについては明かされていません。また、度々綾小路に対して敵対するような姿勢を露骨に見せることがあり、その態度がホワイトルーム生のそれと同一なのかについては不明です。
また、「暴力に屈しない」など人一倍「暴力」に対しては敏感なようで、別途資料には過去の暴力事件について書かれていたのではないかと推測できます。寮の裏手でのシーンでは、堀北が宝泉に不意打ちをされそうなときは思わず顔を背けたのに対し、綾小路の流血には動揺を見せていないという一見不可解な態度を見せています。女性に対する暴力に敏感なのかと思いきや、伊吹が宝泉に絡まれたシーンでは同様の描写はされていませんでした。暴力に対して許容できる彼女なりの基準があるのかもしれません。
(余談ですが、1 巻時点で私が最も嫌いな新キャラは七瀬です。終盤の宝泉に立ちふさがるシーンで、彼女は宝泉のやり方は間違っているなどと言っていますが、次の宝泉の行動が分かっていた上での演説なのだとしたらめちゃくちゃ気持ち悪い茶番ですよね。綾小路含め周囲の生徒に対して「これから宝泉が綾小路を刺す」ように意識を向けるためのセリフを、あたかも綾小路をかばうように演技した上で言ってるわけですから、人命の危機を自分の利益のために利用していることになります。彼女がそのような非人間的行動をとることができるという背景、それこそが D クラスに配属された理由なのではないかと考えています。)
七瀬に関しては綾小路に対する怪しい態度が 1 巻の中で幾度も出てきますから、ホワイトルーム生であることを匂わせている感覚があります。ただ、綾小路に対する感情が特別試験(綾小路の退学)を実施した人間からの刷り込みによる可能性も否定できません。事実、宝泉は綾小路に対して「結局最後まで分からなかったな。おまえの『凄さ』がよお」、「タダモノじゃないとは聞いてた」と言っていることから、綾小路の実力を知っている人間から情報が与えられたことが分かります。七瀬がこの情報を信じているのであれば、「この学校に相応しい人だとは思えなかった」というのも無理はありませんが、綾小路が実力を隠していたからといって、それに対して感情をむき出しにするほどかと問われれば疑問が残ります。
七瀬の出自についてはストレートにホワイトルーム生か、あるいは空白の一年含めて過去の綾小路を知る人物か、はたまた暴力と死が身近にあった人間か、といった感じでしょうか。いつかその背景が明かされる日がくるとは思いますが、現状では彼女が日常を過ごしているシーンを想像することが難しいですね。何を考えて生活してるのでしょうか、ある意味で興味はあるのですが。
ホワイトルームからの刺客
ホワイトルーム出身の 1 年生は上手に学校に溶け込んだようで、綾小路もその正体を掴むには至りませんでした。しかし、このホワイトルーム生には「綾小路を退学させること」以外の目的があるらしく、今後、どのような形で綾小路に接触するのか想像もつきません。そこで、作中に散らばった断片を拾い集めつつ、この刺客について少しだけ考察したいと思います。
まずは簡単なところから。冒頭、2 月に月城と刺客であろうホワイトルーム生が会話をしていますが、地の文ではこの子が 15 歳だと書かれています。そのため、1 年生が全員同じ年度に生まれているのならば、この刺客の誕生日は少なくとも 3 月ではないことが分かります。この密会以降に誕生日を迎えた場合は綾小路と同い年になりますから、年齢を偽っているか、あるいは綾小路の元同期になるはずです。1 年生の誕生日については現在は不明ですから、今後の情報開示を待つことになります。簡単なことと言いながら大して絞れてはいないのですが。
次に考えるべきなのは、このホワイトルーム生の目的でしょうか。刺客が月城の考えた予定通りに行動しなかったということが正しいとすると、その人物がこの学校で何を達成したいかについて考える必要があります。一つ考えられるのが、綾小路との力比べです。綾小路よりも優秀になることを求められ続けたホワイトルーム生にとって、綾小路の能力を凌駕したことを示すことは、自分の人生に価値を見出すことに等しいわけです。
しかしそうなると、どのような方法を以てすればより優秀であると認められるかという優劣の基準が必要不可欠です。綾小路が 1 年生のときは筆記試験に全力で取り組んでないですし、そもそもホワイトルーム生にとって学力を比較することに意味はありませんから、筆記試験で優劣を決めることはないでしょう。必然的に、特別試験が要になるはずです。
では特別試験の結果で優劣を比較するとして、何を用いればよいのでしょうか。たしか作中では 3 年以上のローテーションでカリキュラムが組まれてたり、生徒会の意見が特別試験に反映されると言及されていた気がするので、昨年に綾小路が受けた特別試験と同じ試験を受けて結果を比較することはできないはずです。そうなると、学年の垣根を超えた特別試験で争うしかありません。昨年行われた特別試験では、混合合宿がそれにあたります(体育祭は特別試験ではないため除外)。また、南雲生徒会長の提案によって、全校生徒が参加する個人戦形式の特別試験が開催される可能性もあるのではないかと思います。個人主義がより強まっていくという危惧が最悪の形で実現した場合は、そのような特別試験が実施されると予想されますし、刺客もその機会を逃すことはないでしょう。ただし、特別試験が南雲生徒会長の意向だけで運営されるとは思えません。場合によっては、その刺客が試験に対する第三者の介入を抗議することも考えられます。いま思い出しましたが「文化祭」も対決の場になりそうですね。
仮に今回の「綾小路を退学させるために設けられた特別試験」を利用するとして、それが自身の優秀さの証明に繋がったかと考えると、微妙な気がします。宝泉の策に則った場合、そもそもあの場に綾小路が参加することは義務付けられていなかったため、不確定要素の多い賭けだったように感じます。また、表立って開催された特別試験は実質ただの筆記試験なので言わずもがなです。そう考えると、少なくとも宝泉と天沢はホワイトルーム生の候補から除かれると思いました。七瀬は今回の事件の根幹には関与していないため、刺客である可能性がまだ残っていると考えています。
以上の欠片をまとめてみると、ホワイトルーム生まわりの展開はこう考えられないでしょうか。
月城の指示である「特別試験で綾小路と組み、彼を退学させること」をホワイトルーム生が無視した理由は「綾小路よりも高い実力を有していることを示す」ため。そのため、月城が用意するような直接的に退学の懸かった試験については 4 月と同様に無視する可能性が高い。この力比べを目的にしている場合、このホワイトルーム生と綾小路が、両者の退学を賭けて直接対決をする展開ならば、月城の指示に従いつつ自身の目的も達成できる。しかしながら、このホワイトルーム生は、昨年度の綾小路と坂柳の対決に月城が介入した事実を知っていると考えられる。もしも互いの退学を賭けた戦いに月城が水を差したならば、実力を示すという目的が達成できないことは目に見えている。そのため、ホワイトルーム生が月城の指示よりも直接対決を優先して考えている場合、このホワイトルーム生は月城を学校から追放する(坂柳理事長を復権させる)ための行動をとることまで視野に入れている。この月城追放のための協力者として綾小路と共闘する......なんて展開だったら熱いですね。
こう書き連ねてみると綾小路の心労は大変なことになりそうですね。願わくば 1 年生の生徒の中に彼の味方となってくれるような人物が現れると良いのですが。
特別試験
2 年生編の 1 巻において最も重要な要素となった特別試験です。これは表立って行われた方ではなく、秘密裏に進められようとしていた「綾小路を退学させた生徒に 2000 万プライベートポイントが支払われる」試験を指します。この試験について知っていることが明記されたのは天沢、宝泉、七瀬の三名です。しかし、それ以外の情報についてはほとんど開示されておらず、この試験が行われた背景は不明です。そこで、現在分からないところを整理しつつ、考察したいと思います。
重要と思われる情報から書き連ねていきます。
誰がこの特別試験を実施したのか、誰がこの特別試験の存在を知っているのか、いつ特別試験について伝えられたのか、どんな方法で特別試験の詳細を伝えたのか、この特別試験に期限はあるのか、この特別試験に参加する条件はあるのか、罰則規定はあるのか、この特別試験に参加する生徒は綾小路の情報についてどの程度知っているのか、綾小路を退学させるための理由付けを主催者は行ったのか、この特別試験の存在は 1 年生しか知らないのか、この特別試験に参加する生徒が守らなければいけないルールがあるのか、「綾小路を退学させた生徒」は一人に限るのか、報酬は誰から支払われるのか、などなど。
きっと重要な疑問点はまだ沢山あると思われますが、とりあえず思いついたものだけ書きました。
この特別試験を提案したのは綾小路パパ・月城サイドだと考えられますが、では月城が生徒に直接伝えたのかについては疑問です。月城側はできるだけ秘密裏に綾小路を退学させることを良しとしている節がありますから、当の本人が目立つような振る舞いをするとは考えにくいです。別の人間を立てる、あるいは匿名で済む方法を用いて特別試験の詳細を伝えたと考えられます。後者の場合は生徒が本気にするかどうかは怪しいため積極的に用いることはしないでしょう。そうなると、前者の方法を用いることになります。では誰が伝えたのかですが、最も分かりやすいのは教員、次点で南雲生徒会長、もちろんその他の生徒の可能性もあります。教員ならば、多少の信ぴょう性はありますし、上の指示で仕方なくといった雰囲気を出すこともできます。また、仮に 2000 万プライベートポイントの入った端末を説得材料として用いたとしても、他人に覗き見られる機会は少ないでしょうから生徒を用いるよりは安全に事を進めることができると思います。次点の南雲生徒会長ですが、これは生徒会の進めようとしている個人主義の強い特別試験などが月城側にとって有利に働く可能性があるからです。ホワイトルーム出身の 1 年生を十全に利用するためには、学校側としても学年を超えた試験を実施せざるを得ないため、これを摩擦なく行うために生徒会と癒着することは月城側にとってメリットになると考えられます。当然、南雲生徒会長としても、改革のための要望が通りやすくなるため協力しない手はありません。
少しだけ生徒会について触れたのですが、月城と南雲が接触することは南雲にとってもメリットである一方、デメリットでもあるとも考えられます。
そもそも 1 年生編の時点で、南雲は現在の学校に退屈を感じていることを動機に学校を変革するような描かれ方をしていたように思います。そう考えると、学校側の一方的な謀略によって堀北学に目を付けられていた綾小路を退学に追い込むことが、果たして彼にとって面白い事態なのかは疑問です。南雲に関しては未知数な部分が多いため彼の本心は想像もつきませんが、今後の展開として、生徒会が特別試験にどう関わっているか深堀することはあるのではないかと予想しています。実際、綾小路と堀北の対決に決着がついたため、その物語は近い内に描かれるのではないかなと思っています。
あとがき
色々考えてみた結果をまとめようとしましたが、なんだかとっ散らかってるような気がしますね。たったの 1 巻から読み取れる情報は非常に少ないので、考察もお遊びみたいな感じになっちゃってます。加えて、1 年生編で回収されてない伏線っぽいものも今後の展開に関わってくることが予想されますので、目の前にある情報だけで背景を透かしてみようとするのには無理がありました。きっと次に考察が出回るようになるのは、新キャラクター 6 名の描写がもっと増えてからでしょうね。
とっ散らかりついでに既存のキャラについても考察してみますか。
茶柱先生と星乃宮先生の過去については、2 年生編で当時と似たような状況が作られるのではないかと思っています。具体的には一之瀬と綾小路の恋愛関係ですね。2 年生編で軽井沢が綾小路との恋愛を経て完全に過去を克服した後で、一之瀬と綾小路が関係を持ち、クラスを超えた恋愛関係が特別試験に影響を及ぼす展開が期待されます。ここで先生の過去が判明し、その情報を基に綾小路が行動する、みたいなお話は面白くなるんじゃないでしょうか。
南雲生徒会長については分からない部分が多いですが、おそらくは桐山副会長が綾小路に情報を流していることを前提に行動していそうな気がします。あえて桐山副会長に情報をリークさせて、それを指摘することで彼を窮地に立たせ、綾小路に桐山の貸しを返させる形で表舞台に引きずり出す、みたいな筋書きでしょうか。綾小路が桐山の利用価値をどれだけのものと踏んでいるかは分かりませんが、桐山の退学を阻止すれば借りを返してもおつりがきますし、南雲を失脚させることに成功すれば堀北にとって大きなアドバンテージになります。綾小路が全力で挑むならば、デメリットのない戦いになりそうです。
1 年生との対決も気になりますが、生徒会やクラス担任が絡む展開にも期待したいですね。堀北は生徒会に入って何をするのか、既に生徒会入りをしている一之瀬との関係はどうなるのか、これらを利用して綾小路は学校のルールにどれだけ踏み込むのか、などなど。2 巻の発売が楽しみです。
......仮に 4.5 巻が 2 年生編でも発行されるとしたら、きっと一年後ですよね。綾小路と軽井沢が夏休みをどう過ごすのか。首を長くして待っています。
**********************************追記 (2020.5.29) いくつかの表現を修正、展開の予想について追加しました。