DINNER IN AMERICA 〜パンク精神に則ってパティは歌い出すのだ!〜
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「パンク音楽を扱った映画では、音楽が最も酷い部分になりがちです。この映画では、音楽に全てがかかっているのだということを強く意識しました。まっとうなライブを見せて、主人公が“本物”だったと伝われば、それほど最高なことはありません」アダム・レーマイヤー監督
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デトロイトと言えば自動車産業と廃墟。中心市街地をドーナツ状に囲む宅地は、荒んでいると思いきや。ぎりぎり明るい郊外生活が営まれており、家族で食事を摂っていました。豊かさよ。
⭐️家でパンク音楽を聞くとああなるよね⭐️
「DINNER IN AMERICA」は第一に、パンク音楽を扱った映画です。この映画を1週間で3回見た私が煮詰めてみてまだ面白かったのは、主人公たちがパンク音楽にしびれ、ギグで演奏するシーンです。ラストシーンも面白い。
まず、
自宅でパンク音楽を聞き、じたばた踊り狂うパティの素晴らしさよ。むちゃくちゃダンスですが、ダイブのタイミングは実はばっちりです。しかも2回!
ダイブとダイブの間に手を叩いて踊るシーンが来ると、お腹がよじれるほど笑ってしまいます。最高に良い。高まり過ぎてああいう動きをすることあるよね、人間。
もう、
「誰にも寿がれないから自分で寿ぐ」とか、そういうロジックによる理解を超えたものだと思います。
そうなれる彼女にはパンク音楽の根幹が伝わっていることが見て分かり、序盤で「おお!これは確かにパンク音楽の映画だ」となります。
特にダイブのタイミングが素晴らしい。
⭐️PSYOPSのパンクギグのシーンが良い⭐️
「ディナーインアメリカ」も、最近よくあるように1990年代のような現在の映画ですが、ヒップホップが出て来ない映画です。
観客がサークル状に取り囲むPSYOPSのシークレットギグのシーンはサイファーではないのです。
そのギグのシーン、
演奏する自動車スクラップ工場のような場所が、往年の「爆裂都市」を思い出すステキな場所で高まります。
また、1990年代に日本のバンドが渡米して演奏しに行ったという米国のガレージの延長のように見えて、当時の音楽の楽しみ方はすごく身近で何なら家の近く、地域地域にあったのだなあ、と思います。
さらに、映画の全てがかかっているパンク音楽の演奏時間を最短に刈り込んだ判断が的確です。
おそらくマストで聞かせたかった「従わない」の曲だけフルで演奏して、テーマ曲の「ディナーインアメリカ」はフルでは聞かせない、というのがうまい。あれぐらいが、まっとうなパンクのライブに見える限界だと思います。
(すごく上手いバンドに見える)
PSYOPSのボーカル・ジョンQ役のガルナー氏はヘンリー・ロリンズを参考にしたという事ですので、おそらく歌う時の動きを真似したのだと思いますが、3回見るとぎこちなさが分かる(笑)
あと、楽曲を提供したカナダのハードコアパンクバンド「ディスコアサルト」の人が最前警備員係の役で出演しているのもかわいい。
(真ん中の3人を見ると、パンクの高齢化、ファッションの変わらなさを感じるなあ!このまま続けていただきたい)
(ディスコアサルトTシャツを着ている2人がディスコアサルトの人)
(左端は、現在お料理番組をしているという、リアルパンクロッカーのデヴィッド・ヨウ氏)
⭐️パンク音楽に全てをかけること、シンデレラストーリーにしないこと⭐️
さて、
思った以上にラブストーリーだとの評価がある「ディナーインアメリカ」ですが、確かに、キスシーンが見所のひとつでありラブストーリーではありますが、ふつうのラブストーリーと違うのは、女性が男性にフックアップされてジ・エンド、という訳では無いというところです。
※ キスシーンについては、3つめのエントリーに書きました。
「ディナーインアメリカ」の肝要は、音楽ファンを最も掴めるであろうパワーポップ曲「すいかの歌」を、命をかけたパンクギグのシーンで女性主人公に歌わせなかったこと、にあります。
なんで1番良いシーンで1番良い歌を歌わせないのかなあ?と、最初は思いましたが、
この映画は、
パティとサイモン(シド&ナンシー=死)のキスシーンで終わるのではなく、
サイモンの服役シーン(現実、成長)で終わるのでもなく、
サイモンの覆面とジャンパーとリュックを継承したパティが嘲笑う人をぶん殴り、地平線が見えそうなサバービアのバス停で1人(サイモンと作ったデモテープをウォークマンで聞いているので2人でもある)満たされて踊るところでラストを迎えます。音楽の力よ。
つまり、
憧れの人にフックアップされて本来の人生を知るとはせずに、女性主人公はある意味では男性が去った後、バンドに入って歌う道を主体性を持って歩み出すのです。
ギグのシーンで歌わなかったことが、女性主人公のその後を可能性がある方向に引っ張っています。
パンク音楽を扱った映画で、他力本願を選ばないで本当に良かった。物語のオチとしてギグを使ってしまうのであればあそこで「WaterMelonSong」を歌わせたと思いますが、それをしなかったことは光明でした。
パンク精神はDIYにありと言われ、それを実践する人はパンク音楽リスナーにも案外と多いです。
ですので、他人に引き上げられて歌うのではなく、自分で作る未来に歩めるようにしたことはパンクの精神に則っており大変納得できます。また、未来に光明があることで、読後感も良いのだと思います。
余談:
序盤の、パティの排泄や死との並列感は、GGアリンへのオマージュなのだろうと思う。
ここ大好き。
ハンバーガー屋さんのフライヤーが単色刷りなのにも、監督のパンク愛を感じました。
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