トーナメントにおけるブラインドヘッズの戦い方【前編】
こんにちは、ラプラスです。
ポーカーを勉強しているとある大学生です。
本記事はGTO wizard の公式YouTubeチャンネルの以下の動画のまとめ記事の前編となります。以下に後編記事のリンクを載せておきます。
0.この記事でわかること
この記事では大雑把に以下のことがわかります。
3人以上残っている段階でのSB,BBヘッズアップの前提知識(前編)
スタックサイズによるSBのオープン戦略(前編)
スタックサイズによるBBのリンプへの対応(前編)
SBリンプにBBレイズされた時のSBの対応(後編)
SBレイズへのBBの対応(後編)
極端なICMがある時のレンジの変化(後編)
1.前提知識
本記事では3人以上残っている段階でのヘッズアップ(つまりSB≠BTN)を前提とします。
ブラインドヘッズの戦い方を解説する前にその前提知識について触れます。
これを知っていると解説がより理解しやすくなる程度のものなので、以下の内容を「もう既に知ってるよ」という方は読み飛ばしてもOKです。
トナメの中でSB vs BB は頻繁に起こる
以下の表からわかるようにSB vs BB のシチュエーションはトナメの中で頻繁に出くわすスポットです。
$$
9\text{max}(\text{BB ante})でブラインドヘッズになる確率\\
\begin{array}{|c|c|}\hline
エフェクティブスタック&確率\\\hline
200bb&7.47\%\\\hline
50bb&8.57\%\\\hline
25bb&10.24\%\\\hline
10bb&13.04\%\\\hline
\end{array}
$$
さらに実戦では9maxよりも少ない人数のことも多いですし、ICMの効果でさらにこの確率は上昇します。
トナメの状況によっては30%を超える場合もあります。
この値を暗記しても何も意味はありませんが、ブラインドヘッズが勉強する価値のあるシチュエーションということが伝わったと思います。
ポジションの優位性とEV
ブラインドヘッズはBBが圧倒的に有利なゲームです。
以下の図からもわかるように一般には全体のチップのうち60〜70%をBBが獲得します。(EVはチップの期待値であり、勝率ではないことに注意)
これの原因となるのがポジションの優位性で、ブラインドヘッズにおいては常にBBが優位なポジションになります。
逆にSBは常にポジションを取られていることになるため、かなり慎重なアクションが求められます。(トナメ最後2人のヘッズアップはSB=BTNなので除く)
SBのポジションの不利を緩和する条件があります。
それはスタックが浅い(=少ない)ことです。
スタックが浅いとアクションの中でAll-in になることが増えてくるのでその後のアクションがなくなり、ポジションの不利が消えるわけです。
実際に上の図でもスタックが小さい方がSBのEVが高くなっていることがわかります。
プリフロはポラライズされたレンジで大きいレイズサイズを使う
前提として、ブライドヘッズはお互いに広いレンジで戦うことが多いのでコールレンジを守るためにも3betが少ないという特徴があります。(例:BBのKQoなどはBTNのopenには3betするが、SBのopenに対してはコールが多い)
そしてブラフレイズレンジとしてはかなり弱めのハンドが使われることもあり、SBのリンプに対してはT4oでレイズすることもあります。
結果的に強いバリューレンジと組み合わせてポラライズしたレンジとなります。
また、ブラインドヘッズは様々な要因でレイズサイズが大きくなります。
SBのレイズサイズが大きくなる要因
BBに対するフォールドエクイティを確保するため
大きいレイズサイズでも3betが返ってきにくいため
SPRを小さくできるため(≒All-in を近づけさせるため)
( SBリンプに対する)BBのレイズサイズが大きくなる要因
SBに対するフォールドエクイティを確保するため
大きいレイズサイズでもリンプリレイズが返ってきにくいため
レイズサイズを小さくできる例外としては
・スタックが少なく、SPRがそもそも小さい
・ICMの影響で小さいレイズでもたくさんフォールドする
場合などがあります。
ポストフロップは混合戦略となる
そもそも混合戦略とは「同じハンド、シチュエーションでも確率で取るアクションを変えること」を指します。
先ほど「ブライドヘッズはお互いに広いレンジで戦うことが多い」といった話をしましたが、これの影響でポストフロップは混合戦略となることが多いです。
というより、UTG vs BBのようなお互いのレンジに差がある特殊な状況で、レンジCBのような簡単な戦略ができるのであって、混合戦略を取るのが普通、くらいの感覚でいいかもしれません。
もちろん人読みも含めてですが、複雑だからこそシチュエーションについて詳しく知り、理由を持ってアクションをすることが重要です。
Chip EVによる注意点
本編に入る前に一つだけ注意点を述べておきます。
本記事は断りがない限りChip EVでの戦略を解説します。
実際のトナメではICMによる戦略を考える方が獲得賞金の期待値は高くなるため、本記事で解説されている内容をそのままFTや最後のヘッズアップまで実践することはないでしょう。(というか、しないことを推奨します)
実践的には基準となるChip EVモデルの戦い方を理解してその場でのICMやリスクプレミアムを考慮してそこから戦略をずらして戦うようにしましょう。
その考え方については私の前回の記事が参考になると思うのでぜひ目を通してみてください。
2.SBのオープンレンジ
概略
SBのオープンレンジはスタックサイズによって以下の4つに大別されます。
このようなスタックサイズで分けているのはスタックサイズごとのSBのアクションの割合を表した以下の図を見ればわかりやすいです。
大まかに18,35,70bbを境に取られるアクションが変わってきていることがわかります。
さらに注目したいのはスタックサイズが増えるほどリンプが多くなっているという点です。
スタックサイズが大きいと利益を最大化したいからポットを大きくしたいという思考になりがちですが、それよりも弱いレンジを守るようにリンプする方が期待値が高くなります。
そしてフォールドするハンドはスタックサイズによって大きな変化はありません。
常に下位10〜20%のハンドしかフォールドしません。
それにも注目しながら以下のレンジを見てみてください。
さてそれぞれの戦略を見ていきましょう。
70bb以上の戦略
先ほど述べたように70%以上リンプ戦略となります。
(ちなみにここでは4bbのレイズがGTOで推奨されています。)
極端に弱いハンド以外はほぼ全ハンドリンプの余地があり、レイズレンジとしてはバリューはQTs以上、ブラフには弱めのスーテッド系(54s,T4sなど)や半端なオフスート系(Q8oやK6o)、バランスにポケットやAxoが入っています。
正直スタックの深いようなトナメの序盤はブラインドが小さく、あまり重要ではないので全ハンドリンプできるのかくらいの認識でいいでしょう。
35〜70bbの戦略
先ほど「15〜25%のポラライズレイズ戦略」と述べましたが、70bb以上の戦略と比べてレイズ率が上がり、さらにポラライズされます。
(ちなみにここでは3.5bbのレイズがGTOで推奨されています。)
ここではハンド全体を以下のように区切って考えるとわかりやすいです。
最高位のハンドのレイズは弱いブラフハンドと合わせてポラライズして、そこよりもさらに弱いリンプハンドを中程度のハンドで守るという構造です。
18〜35bbの戦略
先ほど「さらに極端なポラライズレイズ+All-in戦略」と述べましたが、35〜70bbの戦略と比較して考えましょう。
(ちなみにここでは3bbのレイズがGTOで推奨されています。)
35〜70bbのときと比較したときの変化は
全体的にレイズ頻度が上がった
Q9sなどのAll-inよりもフロップを見たいハンドのリンプが増えた(中程度のスーテッドハンドのリンプが広がった)
QToのようなブロッカーの点で優れているハンドのレイズ頻度が増した(中程度のオフスートハンドがレイズ優勢になった)
プリフロを戦いたくない弱いポケットや中程度のAxoをAll-inする
スタックが少なくなってAll-inが近くなったのが特徴です。
その中でもあえてリンプしてフロップを見たいのは強いフラッシュを見込めるAKQJハイのスーテッド系です。
そしてここが弱いオフスート系のリンプハンドを守る役割をしています。
レイズレンジとしてはAAなどの純粋に強いハンドだけでなくA〜Tハイのオフスート系やブラフとして弱いスーテッドのハンドから構成されています。
レイズするかどうかはハンドの強さだけでなくレイズでのフォールドエクイティとフロップ以降の戦いやすさを天秤にかける必要があります。
最後にAll-inレンジはフロップ以降戦いにくい弱いポケットとそれを補う弱〜中程度のAxoから構成されます。
AKoなどの強いAxoはポストフロップを戦う方が利益が出せますし、弱いポケット
だけだとJ9oくらいの弱いハンドでもコールされてしまいます。
18bb未満での戦略
ここまでスタックが減ってくると3bbなどのミニレイズがなくなります。
ここでのコールレンジは「BBからAll-inが返って来たときにスナップでコールかフォールドができるハンド」になっています。
AKoなどAll-inしている例外はあるもののこのレンジのリンプレンジが大きく3分割されていて、スナップでアクションできるレンジ構成になっています。
K5sやT8sなどもたとえプリフロAll-inが返ってきてもオッズ的にコールせざるを得ないハンドです。
それ以外の中途半端なハンドと強めのAxoをAll-inします。
このあたりのレンジはトナメの状況によって大きく変化しますが、リンプレンジの構成の方法はぜひ覚えておきましょう。
3.SBリンプへのBBの対応
概略
SBリンプへのBBの対応は非常に単純で覚えやすく、スタックサイズによって以下の2つに大別されます。
SBのときと同様の図を見てみましょう。
スタックサイズに関わらずレイズ頻度はほぼ一定なので変えるべきはレイズレンジとAll-inレンジをどう変えるかに注目しましょう。
28bb以上の戦略
ここでは「45%程度でポラライズしたレイズ戦略」を取ります。
45%程度のポラライズしたレイズレンジを構築したいのでハンドの上位20〜25%程度のハンドでは100%に近い頻度でレイズします。SBのリンプレンジに上位のハンドは少ないのでここでチェックレンジを積極的に守る必要はありません。
ブラフレイズにはオフスート系の弱いハンドが用いられます。これはSBの18〜35bbの戦略でも登場したようにドロー系のハンドはフロップを見る価値が高いことに起因します。
なのでスーテッド系や87oなどのコネクター系はレイズよりもチェックが好まれます。
28bb未満の戦略
スタックが小さくなってくるとポラライズがより極端になり、All-in 戦略も入ってきます。
見て一瞬で分かるようにスーテッド系、コネクター系のチェック頻度が高まり、よりポラライズした戦略になります。
A5s,K8s,Q9s程度の強いハンドでも、スタックが小さくBBはポジションがあるのでフロップを見てからポットを膨らませるのでも間に合うという判断です。
そしてAll-in レンジはAll-in に適しているハンド(≒フロップ以降戦いにくいハンド)のうち弱いハンドから採用されることが多いです。
All-in に適しているハンドはポケット系やAxo系のハンドです。それらは多くのハンドに対して50%程度の勝率がありつつ、その中でもフロップ以降戦いにくい弱い22〜やA2o〜などから採用されます。
もちろんこれはスタックが小さくなるにつれてミニレイズレンジがAll-in レンジに変わっていきます。
まとめ
トーナメントにおけるブラインドヘッズの戦い方【前編】ではSBのオープンレンジとBBのリンプへの対応を見ていきました。
実践において重要なことはハンドレンジを暗記することではなく、どのハンドがリンプ・コール・レイズに適しているかを理解して相手によってアクションを変えられることです。
SB,BBどちらもポラライズが重要になっていて、バリューとブラフ、どのレンジでどのレンジを守るのか、どのレンジでAll-in をするのかを意識しましょう。
SBは以下の図、BBは強いハンドとオフスートでのポラライズができるようになりましょう。
後編においては「SBリンプにBBレイズされた時のSBの対応」「SBレイズへのBBの対応」を見ていきます。ぜひnoteやXをフォローしてお待ちください。
(4/19更新)後編の記事をアップしたので以下リンクからぜひみて見てください!!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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