ちょい残しベットのすゝめ(全文無料)
こんにちは、ラプラスです。
ポーカーを勉強しているとある大学生です。
本記事はGTO wizard の公式YouTubeチャンネルの以下の動画のまとめ記事となります。
全文無料でお読みいただけます。
0.この記事でわかること
プリフロでのコミットレイズの意味
プリフロでのコミットレイズのレンジ構成
リバーでの1チップ残しレイズについて
1.プリフロでのコミットレイズについて
コミットレイズとは
まずコミットとは木原直哉さんのブログから引用すると「オールインされてもオッズコールしないといけないくらいのチップをポットに投入した状態」のことです。
そして本記事ではプリフロでのこのレイズのことをコミットレイズと呼ぶことにします。(より一般的な名称があればぜひXのリプやDMで教えてください)
例えばお互い100bb持っているキャッシュゲームで80bbの4betをしたとします。ここで仮に相手に100bb All-in をされたらどうなるでしょうか。その時点からの収支を考えると
Fold:±0bb
call→勝ち:+180bb
call→負け:-20bb
となってcallするのに必要な勝率はたった20/(20+180) = 10%しかありません。これは自分が27oを持っていて相手がAAだと確定していても満たす勝率です。(スートがどっちも被っていても10.84%の勝率があります笑)
逆にこのシチュエーションになるくらいなら自分からAll-in をしてフォールドエクイティを最大化する方がまし、ということになるのでコミットレイズとなる80bbの4betは一般的によくないプレーということになります。
しかしこれと似たプレーがトナメでICMの影響を強く受けるシチュエーションだと正当化される場合があります。ICMって何??って人はぜひ以下の記事を読んでみてください。
実用的なコミットレイズの狙い
実用的なコミットレイズは主にショートスタックの人が行うプレーでその狙いは「ヘッズアップAll-in を狙いつつ、マルチウェイで誰かが飛ぶリスクを負ったら降りること」です。
つまり例えばLJで10bb持ちのときに6bb open した際には以下のようになります。
なぜこのアクションになるのか、そのシチュエーションなどを具体例で見ていきましょう。
コミットレイズの具体例1
以下のシチュエーションでのLJのオープンレンジを見ていきましょう。
$$\text{6人残りのFT, ave:40}bb\\
\begin{array}{|l|c|c|c|c|c|c|}\hline
&\boldsymbol{LJ}&HJ&CO&BTN&SB&BB\\\hline
スタック&\boldsymbol{10bb}&50bb&20bb&30bb&70bb&60bb\\\hline
\end{array}
$$
詳しいレンジ構築は2つ後の節で扱います。ここで注目してほしいのはアクション割合としてAll-in がほとんどないことと6bbレイズがレイズの中で最も頻度が高いいうことです。
この後にCOが20bb のAll-in をしてそれ以外が降りてLJにアクションが戻ってくると次のようなアクションとなります。
なんと見ての通り100%コールします。
この際のリスクプレミアムは4%程度しかなく、一番ショートなLJがAll-in を受けない理由がありません。(というより、コールできるようなレンジで6bb オープンする必要があります(後述))
一方でCOが20bb のAll-inに対してさらにSBが60bb All-in をした場合はどうなるでしょうか。
先ほどとは打って変わってかろうじてJJだけはコール優勢ですが、AKoやTTなどですらほぼ100%フォールドしていることがわかります。
この場合は降りることでCOがSBによって飛ばされる確率がある程度あります。LJは残りたった4bbですが降りることで順位を一つ上げることができるかもしれません。
逆にいうと、ここで順位を一つ上げることが非常に利益的になるFTのようなシチュエーションでないと意味がないことに注意して下さい。
コミットレイズの具体例2(,3)
さらに極端な例と、コミットレイズをする必要のないシチュエーションを見ていきましょう。
$$\text{4人残りのFT, ave:60}bb\\
\begin{array}{|l|c|c|c|c|}\hline
&CO&BTN&\boldsymbol{SB}&BB\\\hline
スタック&50bb&70bb&\boldsymbol{30bb}&90bb\\\hline
アクション&2bb オープン&6.5bbレイズ&\boldsymbol{???}&\\\hline
\end{array}
$$
ここでのSBのアクション頻度は以下のようになります。
先ほどと同様、スタックの半分のコミットレイズが正当化されていますね。
ここで14.94bbのレイズをして、CO,BTNがどちらもAll-in をしたときのSBのコールレンジは以下のようになります。
なんとKKまでフォールドします!!
もちろんここまで極端なシチュエーションは実戦ではほぼないでしょうけど、コミットレイズの目的を遂行していますね。
次はこんなシチュエーションです。
$$\text{6人残りのFT, ave:60}bb\\
\begin{array}{|l|c|c|c|c|c|c|}\hline
&LJ&HJ&CO&BTN&SB&\boldsymbol{BB}\\\hline
スタック&100bb&30bb&35bb&25bb&40bb&\boldsymbol{10bb}\\\hline
アクション&2bb オープン&フォールド&フォールド&フォールド&フォールド&\boldsymbol{???}\\\hline
\end{array}
$$
ここでのBBのアクション頻度は以下のようになります。
一応候補として4.5bbのコミットレイズはありますが、当然このシチュエーションでは無意味ですね。コミットレイズの目的を理解すれば当然です。
コミットレイズレンジ構築について(具体例1)
最初の具体例に戻ってそのレンジの詳細を見ていきましょう。
見やすいように先ほどと色を変えています。
$$\text{6人残りのFT, ave:40}bb\\
\begin{array}{|l|c|c|c|c|c|c|}\hline
&LJ&HJ&CO&BTN&SB&BB\\\hline
スタック&10bb&50bb&20bb&30bb&70bb&60bb\\\hline
\end{array}
$$
先に要約を述べると次のようになります。
まずは2bb オープンについて見ていきます。
相手に降りてほしくないJJ+, AKs, AQsのハンドとそれと混ぜてポラライズするAxs, Axo, KJoなどで構成されています。
2bbオープンは当然フォールドエクイティは一番低いのでプレミアハンドに近いハンドとブロッカーに優れたブラフハンドで構築されています。
次に6bb オープン(とAll-in レンジを合わせたもの)について見ていきます。
先述したように、ヘッズアップであれば6bb オープンしても降りることはないので実践的にこの二つのレンジは同様のものとして扱ってもいいでしょう。
レンジ構築は中程度以上のAxs, Axo, ミドル以上のポケット, ブロードウェイスーテッドというようにプレミア以外のヘッズアップAll-in で勝率の高いハンドのみで構築されています。
レイズに対して降りないことはもちろん、コールされてポストフロップを戦うことも多いのでブラフハンドは混ぜない構築になっています。
2.リバーでの1チップ残しベットについて
1チップ残しベットの概要
ポストフロップでのコミットベットについては基本的にはリバーにおいてのみ行われ、スタックの90%以上をベットするような極端なプレーになります。
ベットの量もほとんど変わっていないことから、基本的にはAll-in するレンジと同じようなポラライズしたレンジ構成で行います。
注意しなければならない点はAll-in を返された時の対応です。
以下のシチュエーションを考えます。
これをまずはチップEVで考えると必要勝率は1.4%になり、以下のようにブラフではないトップヒット以上でコールすることになります。
ここに「200人参加の100人残り」というトナメの条件を付与してみましょう。
これはまだまだインマネには遠く、リスクプレミアムが低い状況です。
しかしそれはハンドが配られる前の状況であり、24bbをベットした後という状況になるとリスクプレミアムは変化します。
$$
リスクプレミアムの値\\
\begin{array}{|c|c|}\hline
ハンドが配られる前&24bbをベットした後\\\hline
3.5\%&\boldsymbol{12.4\%}\\\hline
\end{array}
$$
元の必要勝率1.4%を合わせて必要勝率は13.8%にもなります。
トナメにおいて得るチップが1.4bb変わることは大差ないですが、1.4bb残りか飛んでしまうかには大きな差があります。簡単にいうと、スタックが残り少なくなるとチップの価値が上がるのです。
このため、多くのシチュエーションにおいてリバーで1チップ残しベットが正当化されます。
3.実践的な注意点
プリフロでのコミットレイズの注意点
先ほど少しだけ話題に出しましたが、10bb持ちでAll-in してもいいハンドで6bb オープンし、ヘッズアップAll-in にならないシチュエーションは当然あります。
その場合は残りスタックが4bb で、ポットに13bb程度あるというSPRが極端に少ない状態でポストフロップを戦う必要があります。
この経験がある人は少なく、人によって以下のような極端で雑な戦略をとってしまう人も多いです。
相手がどのタイプのプレイヤーかを見誤ると大きなロスにつながりかねないので注意が必要です。
1チップ残しベットの注意点
1チップ残しベットは「バリューで得られる金額を少し減らす代わりにブラフ失敗しても生き残る」ためのものです。
この後者のみが先行してしまって、ブラフの時にしか(もしくはブラフの時に頻繁に)1チップ残しベットをする人がある程度います。
「バリューの時には素直にAll-in」 では明らかにバランスが取れません。
また、細かなテクニックとして1チップ残しをした後に復活する、もしくは誰かがすぐに飛ぶことを期待する、ためには以下の状況がさらに有効になります。
自分が今SBでBB ante を払うまでのハンド数が多い
ブラインドアップ直前で、全員のBB数が減る+勝った時に取れるante が増える
もちろんこのために牛歩することは推奨はされませんが、ICMではブラインドアップを考慮できないため、人間が自ら考えてあげる必要はあります。
まとめ
本記事ではプリフロとリバーでのコミットベットについて見ていきました。
アミューズなどであまりやっている人は多くないですが、知っていれば誰にでもできるプレーなのでぜひ取り入れて見て下さい。
最後におまけとしてリバー1チップ残しベットをポラライズしていないシンバリューで使ってしまったWSOP2022Mainの3人残りのFTでの有名なプレーを載せておきます。(単に GTOから乖離している例であって、当時の卓の雰囲気やその場の本人にしかわからない細かな情報が当然あるのでプレーそのものを批判する意図はありません。)
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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