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演奏鑑賞記録②バンドネオンとチェロと…?

近所のイチョウが色づいてきて視覚にも嗅覚にも秋を感じる11月初旬、宮城県の旧県知事公館で開催されたバンドネオンとチェロのアンサンブルを聴きに行ってきました。
旧県知事公館は歴史的な建物は元々は伊達家の家臣の邸宅だったものを、知事公館に使用して要人を招待して接待したりしてたそうです。
洋館とか歴史的建造物が好きな私。これは行かねば!と思って母を誘って行ってきました(本当は多分知り合いと思われる常に状態異常な近所の人を誘おうかとも思いましたが、何か忙しそうなので遠慮しました)


コンサート??いいえ、〇〇の部屋

知事公館は横浜の山手や旧古河邸のような豪奢な雰囲気、というよりはどこか「ちょっといいお家のお屋敷」というような親しみ易い雰囲気でした。
会場は20畳くらいの演奏会をするにはこじんまりとしてましたが、ステージらしいステージはなく、プレイヤーとお客さんとの距離が近くて「サロンってこんな感じかしら?」と思うくらいに良い意味で気楽な、会場の雰囲気も相まってとても居心地のいい空間でした。
肝心の演奏者ですが、バンドネオン:渡辺公章さん、チェロ:山本純さんのデュオです。このコンサート、主催が渡辺さんでゲストに毎回違う方をお呼びするという形式らしくて(ご本人曰く、某〇〇の部屋的な)、今回は地元の交響楽団で長年チェロを弾いてた山本さんと一緒に、という具合です。
本当に〇〇の部屋よろしくで、「曲の合間にトークなのか、トークの合間に曲なのか」という感じで、また、トークの内容もバーか居酒屋かで音楽談義をしているのを聞いているような肩肘の張らないもの。
しかもそのトークに常連のお客さんの「ソレあの時のこと?」みたいな合いの手が入って「そうそう!ソレです!!」て自然と演者が答える。
変に畏まってなくて、こういう演奏会もアリなのね!と自分が演奏する側になった時の参考にしようと「フムフム」と聴いてた身の程知らずがここに一人。演奏会というよりはファンミーティングに近いような、でもファンじゃなくても楽しめる。いいなこの形式。(ただ、トークする側の引き出しの多さが問われる気もしますが)

ダンディーとはこのことか!

肝心の演奏ですが、良かったよ!!
バンドネオンもチェロも。特にチェロは「定年まで交響楽団に居たは伊達じゃない!」と言わんばかりの安定と深みのある演奏でした。
元々チェロの音は好きですが、改めていいなチェロ!と。ほんとにね、あと身長が20センチ大きかったらチェロ弾きたかったの!!
私がチェロを背負って歩ったら間違いなく、「勝手に移動するチェロ」という都市伝説ができあがります。
曲目はバンドネオンなのでピアソラが中心。
サクソフォン上野耕平さんとバンドネオン三浦一馬さんのピアソラも聴いたことがあるのですが、なんだろう、チェロとバンドネオンってすごく男性的というか、演奏されてる方の年齢の積み重ねもあるんですが、とても深みのあるスモーキーというか、もう語彙力なくてアレですが渋いカッコイイ男前!!(音楽が)
そして、ピアソラのほかにもなぜか異色のプログラム「おしん」が入ってまして。
なぜに「おしん」と思ったらお二人とも山形県酒田市のご出身なのと、「おしん」のあるフレーズがタンゴ?のフレーズに似てたそうです。
「おしん」まったく見たことないけど(人の家のゴタゴタなんて見たくないので橋田壽賀子女史のドラマは観ません)、何か言われなければ泉ピン子は出てこないくらいオシャレアレンジでした。インスピレーションとそれを形にできる経験と知識と音楽性。もう凄い!の一言です。

Comme Au Premier Jour 

もう良いウィスキーを頂いているような極上の音楽会だったんですが、特別ゲストに素敵な方が!
私にとっては本当にすてきなサプライズだったんですが、渡辺さんの奥様がアルパ奏者でして小型アルパを持ってこられて!
まさかここでアルパを見れるなんて!と駆け出しハーパーの私としては素敵なご縁に感謝で、「あ、そういえばこの前引いたおみくじ大吉だったな」なんて思ったものです。
アルパはハープとは似て非なるもの、というか簡単に言うと、ハープは寒い地域の楽器で「指で弾く」のですが、アルパは暖かい地域でハープを元にした「爪弾く」楽器です。
弦の感覚とかも色々違って、アルパの方が弦の間隔が狭く、今回の方の手も小さく、母が言うには「手が小さくても弾ける楽器なのね」と感心してたので、「アレ?アルパの方が向いてたか?」と思ったりもしましたが、ピアノ経験者にとっては「爪を伸ばす」は大罪なので、多分無理。(爪を伸ばすことに罪悪感を植え付けられてるので基本深爪)
奥さんアルパ、旦那さんバンドネオン、冷やかし鍵盤ハーモニカのチェロ奏者山本さん(本人がそう仰ってたので)で演奏されたがアンドレ・ギャニオンの「めぐり逢い」。
夫婦でこれ弾かれるなんて、そりゃ山本さんも冷やかしますよね鍵盤ハーモニカで。演奏も演出も言うことなしで、本当に素敵な演奏ありがとう!でした。
特に私にとってこの「めぐり逢い」という曲は「葬式でよく流れる曲」というイメージが強かったので(我が家親戚多くて、婚はほぼないですが、はほぼ毎年のようにある家だったので。日本の出生率の縮図を見ているよう)、言ってしまえば「負のイメージ」を払拭してくださって本当に感謝!
寧ろ作曲者的にはそっちが本意のような?原題「Comme Au Premier Jour」はフランス語で「初めての日のように」だそうで。あれ?出棺に使うのおかしくね??

色々と収穫のあった素敵な演奏会でしたが、次回はバンドネオンの渡辺さんのピアノのお師匠さんとのコラボレーションだそうです。(会場は知事公館ではないのが残念ですが)
今回の二人のお話を聞くだけでもトークも、演奏も期待できそうです。
春の楽しみが1つできました。

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ゆるり
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