Lapin Ange獣医師の「ネットで見たんだけど・・」 #13: パパにはヒートテック,ワンちゃんには?
命に関わるような酷暑の夏に続く終わらない残暑が大きなニュース素材となった2023年も12月に入り,お笑い賞レースの話がメディアやネットに流れ,我が家には例年通り紅白の観覧申込み落選の通知が届きました。 「不都合な真実」が紛れもなく私たちを覆ってきたことを思い知らされつつも,この季節なりの寒さに慌てて冬支度を整えている方も少なくないと想像します。 私が子供の頃と違い,発熱素材のアンダーウェアや高級ダウン,高機能のアウターなどのおかげで,着ぐるみのような姿にならずとも冬を快適に過ごせるようになりましたが,ワンちゃんたちはどうなのでしょうか? 夏には日中の外出を控えて早朝散歩をしていたワンちゃんたちでしたが,地面が凍りつくような季節は,どうすればいいのでしょうか? 「タロ・ジロのように極地でも活躍できるワンちゃんは,日本の夏の暑さには弱いけれども,関東や関西の冬程度なら問題ない」という声も聞かれますが,本当のところどうなのでしょう?
おそらく皆さんがお考えの通り,答えは「犬種による」ですが,American Kennel ClubおよびPetMDに,冬期におけるイヌの防寒着の必要性についての記事がありましたので,それぞれ紹介します。
私のイヌには冬コートが必要でしょうか? Does My Dog Need a Winter Coat?
[American Kennel Club]
冬の日々の散歩では,人間もイヌも暖かい装備が必要かもしれません。 これまで愛犬にコートを着せたことがなくても,外出する際には愛犬にも防寒対策の必要性を考慮してください。 一般的な経験則として,厚く密な被毛を持つ大型犬は寒さからよく守られています。 これには,アラスカン・マラミュートやシベリアン・ハスキーなど,暖かさを保つように遺伝子的に設計された被毛を持つ北方系の品種が含まれます。 一方で,厳しい気象から保護する必要がある犬種もいます。
チワワやフレンチ ブルドッグなど,小型のトイ,ミニチュア,ショートヘアの品種。 これらの小さなイヌは,身体を暖かく保つのに十分な体温を生成・保持することが容易でありません。
体高が低い,ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのような犬種は被毛が厚いものの,腹部は雪や氷に擦れるほど地面に近い位置にあります。
プードルのように,通常は長い毛を持っている品種でも,グルーミングによって刈り取られるなど,被毛による保護が損なわれる場合があります。
グレイハウンドやウィペットなど,痩せていて毛が短い犬種も寒さから守る必要があります。
シニア犬は,関節炎や免疫力の低下など,冬用のコートが必要となる症状に罹りやすいです。 年齢とともに体温調節機能が低下する場合があり,たとえ毛が厚いイヌであっても寒さに不快感を感じるようになります。
イヌに冬用のコートが必要だと考えられる場合,首とお腹を保護するコートを探しましょう。 首の付け根から尻尾までを覆う必要がありますが,排尿が困難になるほど長すぎないように注意してください。 締め付けずにぴったりとフィットするコートが必要です。 衣服がイヌの動きを妨げないようにしてください。
(この後は,幾つかの実際の商品の紹介ですので,省略します)
実際にコートが必要な犬種があるか? Do Some Breeds Actually Need Dog Coats?
[Pet MD]
外が寒いとき,私たちはコートを着るのですから,当然,あなたのイヌにもコートを着せるべきか考えてみましょう。 一部の犬種は,他に比べてコートをより必要としますが,どんなイヌでも,状況によってコートを着ることの恩恵を受けることができます。
(以降の記述において実際の商品名に言及している部分は割愛しました)
イヌのコートは冬の必需品か?
ミネソタ州の獣医師 Dr. Lisa Powelは,トイレのためにちょっと外に出る程度ならおそらくコートは必要ないけれども,気温が氷点下まで下がった場合にはコートが役立つことがある,と言います。「非常に寒いときには,犬に何か着せてあげましょう。」
ウィスコンシン州の獣医師Dr. Susan Jeffreyは,犬のボディランゲージを観察してコートが必要かどうかを判断するように,と述べています。
「犬によっては,寒くなると前足を上げたり,歩くことを拒否したりすることがあります。 震える犬もいるかもしれないし,ウォームアップのために十分な長さのコートが必要な場合もあるでしょう。 ドッグランに到着した犬は最初はジャケットが必要ですが,数分間走ったり遊んだりすると,それは必要なくなるかもしれません」と彼女は言います。
コートが必要な犬種は?
犬種によって,寒い気候が問題となる場合があります。 Dr. Jeffreyによると,被毛の短いあるいは薄い犬,骨格が華奢な犬は,寒い季節にはジャケットを着用すべきだといいます。 「これらには,チワワ、トイ・プードル,イタリアン・グレーハウンド(およびウィペット),ヨークシャー・テリア,チャイニーズ・クレステッド,ハバニーズなど,ほとんどのトイ種,小型犬種が含まれます。」
小型犬やバセットハウンドのような足の短い犬にもコートの恩恵が及ぶもう一つの理由は,「彼らは地面に非常に近く、腹や体が雪や氷と接触する可能性が高いため」とシカゴの獣医行動学者Dr. Kelly Ballantyneは言います。
ハスキーやマラミュートなど,毛が抜けやすい大型犬には通常,コートを着る必要はない,と獣医救急・救命救急の認定資格を持つDr. Powellは言います。 ただし,身体の大きさが必ずしも決定要因ではありません。
「グレートデーン,グレイハウンド,さらに一部のピットブルテリアなどの一部の大型犬種は,被毛が非常に短く断熱効果がないため,効果がある可能性があります」とジェフリー博士は言います。
犬のコートを購入するかどうかを決めるときは,犬の品種,サイズ,被毛の長さをすべて考慮する必要がありますが,他にも考慮すべき点があります。
「耐寒性には個体差が大きく,年齢,基礎的な健康上の問題,身体の状態が関係している可能性があります」とDr. Ballantyneは言う。 あなたのワンちゃんに最適な推奨事項については,獣医師に相談してください。
あなたの犬にはどんな防寒着が必要でしょうか?
それは犬(個体)によるとDr. Jeffreyは言います。 「たとえば,私は非常に筋肉質のフレンチ ブルドッグを飼っているので,厚いジャケットは必要ありませんが,外で暖かく保つにはセーターが最適です。 一方,チャイニーズ・クレステッドには毛皮がほとんどあるいは全くなく,冬に外出するときは厚手のジャケットが必要です。」
シーズーなど他の小型犬種は,毛の長さにもよるけれども,セーターだけで十分かもしれない,と彼女は付け加えました。
犬を屋外で長期間飼う場合,Dr. Jeffreyは,防水または耐水性の素材で作られた犬用のコートやジャケットを推奨します。 「フリースなどの軽量の断熱材も暖かさを維持するのに役立ちます。」
犬用のコートが大きすぎると,歩くのが困難になる可能性があるとDr. Jeffreyはアドバイスします。 「誤飲や消化管閉塞のリスクがあるため,ボタンやバックル,その他の小さな装飾品がついたジャケットも避けてください」と彼女は言います。
身体に合ったものを選んでください
フィット感は愛犬の快適さと安全のために重要な要素です。
「ペットのセーターやジャケットがきつかったり緩過ぎたりしないようにすることが重要です。 毛皮で覆われたイヌにとって危険である可能性があります。 首や脇の下の部分のフィット感をチェックして,摩擦や刺激がないことを確認することが特に重要です」とアリゾナ動物愛護協会のKelsey Dickerson氏は言います。
適切なフィット感を見つけるには,サイズを測る方法を知る必要があります。 柔らかいメジャー (または紐と定規) を使用して,首,胸,胴の長さを測定します。 これらを衣類のサイズ表と一致させ,イヌがそのサイズの間にある場合は,上のサイズを選択してください。
専門家はまた,フリース素材などの,脱ぎ着しやすいコートやジャケットを見つけることを推奨しています。
イヌを安全に保つためのヒント
コートを着ていても,イヌが凍傷になりやすい場合があります。
「飼い主は,ペットを寒さから守るために,散歩の時間を短くするなど,他の予防措置を講じる必要があります。 気温が氷点下になると,イヌも人間と同じように凍傷になりやすく,耳,尾,足など,コートで保護されていない部分が罹患しやすい」とDr. Ballantyneは言います。
Dickerson氏はまた,過剰な喘ぎ,流涎,体温の上昇,歯茎の赤みなど,過熱の兆候に注意することを推奨しています。 「このような場合,熱中症の兆候である可能性があるため,すぐに獣医師に連絡してください。
ジャケットやコートを着ているときは決してペットから目を離さないでください。また極端な気温のときにペットを屋外に放置しないでください。 子犬の敏感な肉球を保護するため,寒さまたは暑い季節に備えて保護靴を検討する意味があるかもしれません。」
ブーツは,ペットの足を雪や氷から保護します。 また肉球に非常に有害な,歩道に撒かれた融雪剤からペットの足を守る優れた方法でもあります。
ペットに新品の冬のファッションを着せ替えるときは,じんましんやかゆみの兆候に注意してください。 一部の犬は特定の生地や洗剤に対してアレルギーを持っている可能性があるため,犬が快適で安全であることを確認する必要があります。
結論
ワンちゃんの防寒着の必要性と,それを選び,着せる際に考慮すべきことについて述べた2つの記事を紹介しました。 両者とも,冒頭に述べた通り,必要か否かは犬種によるということで,必要なワンちゃんには「イヌに洋服なんて」「イタいと思われへんやろか」などと躊躇せず,適切な防寒着を着せてあげてください。 特に,記事中にもありましたが,冬の道路には融雪剤が撒かれていることが多く,ワンちゃんの足に影響する可能性がありますので,是非,靴を履かせることも考慮してください。
残念ながら先日グリーンランドで遭難された冒険家,山崎哲秀さんは,そのブログで自らを「犬ぞり案内人」と仰っていますが,一般の方からの質問に対して,次のように答えておられます。
「犬の足の裏,写真を撮ってきました! かなり長い毛で足の裏が覆われてしまっています。でもこの毛は2月末か3月早々から予定の犬ぞり旅行前には短く刈って手入れしてやります。 季節や雪質にもよるのですが,毛が長すぎると長距離を走っているうちに,雪が氷玉となって(ビー玉みたい)長い毛にへばりつき,爪と爪の間に食い込んだりして痛いらしく,犬たちはそれを歯でむしりとります。足裏を傷つけてしまうので,その防止のためです。それと肉球ですが,走り込む犬たちですから,普通よりは皮が分厚いかもしれないです。それでも雪が全く積もっていない,ツルッとした海氷の上では,擦り減らしてしまったり,太陽で雪面が融けたザラメになったような雪質では切ってしまったりします。状況によって靴下を履かせるなどしてやるんですよ。」
ワンちゃんにソリを曳かせている飼い主さんは多くないと思いますが,意外と傷付きやすく繊細な肉球や毛の手入れは怠らず,しっかり守ってあげてください。
雑記
上記の記事で,概ね小型のイヌは防寒の必要があると解説されています。 これは,身体が小さな動物は,大型の動物に比べて,相対的な体表面積が大きいことによるものです。 ざっくり言うと,面積は長さの2乗,体積は3乗に比例するので,体重(体積)が2倍になっても体表面積は2倍未満であるため,大型の動物は身体が冷えにくいということです。
私たちは通常,薬剤を投与するとき,「体重当たり」の量で投与量を計算します。 「体重1kg当たり100mg」を投与すべき薬剤の場合,体重2kgなら200mg,体重が10kgなら1000mgを投与すれば,同じ程度の作用が期待できます。 しかし,ある種の抗癌剤など,薬剤によっては,その作用は「体重当たり」よりも「体表面積あたり」の量によく相関する場合があります。 このような場合,体重が10kgのワンちゃんによく効いた薬剤を,体重1kgのワンちゃんに1/10量を投与すると,体表面積はそれほど小さくならない(1/10よりも大きい)ため,「体表面積あたりの量」は小さくなり,期待したほどの効果が得られない可能性があるのです。(かえって解りにくくなったら申し訳ありません)
さて本稿では,防寒着としてのワンちゃんの洋服について記しましたが,もちろんファッションとしての価値もあります。 家族の一員であるワンちゃんを誰よりも可愛くしてあげたいと思うのは,当然の感情だと思いますので,ワンちゃんに不自由や危険をもたらさない範囲でファッションを楽しんでいただければと思います。 というところで,私はワンちゃんの洋服やアクセサリーのメーカーさんなどに詳しくないので,ネットで少し調べてみました。 概ね「これくらいかなぁ」と想像していた価格帯のものから結構な額のものまで様々ですが,Business Insiderのサイトで "11 of Most Expensive Dog Outfits Money Can Buy" という記事を見て驚きました。
この記事に掲載されている品の一部を紹介します。
高級過ぎて私は聞いたこともなかったので,名前だけは馴染みのあるLOUIS VUITTONでワンちゃん用品があるのか,見てみたところこれが。
今回の主旨が洋服だったことを思い出し,Monclerも覗いてみると,ちゃんとワンちゃん用品ありました。
Monclerのドッグベスト約10万円。 ドジャーズに移籍が決まった大谷選手なら,24時間365日,5分ごとに新しいのに着替え続けても払えるんか・・などと空想する私はヒートテックで冬を越します。
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