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Lapin Ange獣医師の「ネットで見たんだけど・・」 番外編: 2023年 人気の犬種

昨年11月の「#12: 短頭種の話」の中で,2022年に米国および日本国内で新規に登録された犬種別登録頭数リストを紹介しました。
先日,米国(American Kennel Club: AKC)の2023年版リストが公表されたのを受けて,ジャパンケンネルクラブのサイトを確認してみると,日本の2023年版リストも既に掲載されておりましたので,今回は番外編として,それら日米のリスト(上位20犬種)を紹介します。

米国で人気の犬種
The Most Popular Dog Breeds of 2023

American Kennel Club
(各犬種の簡単な解説はPetMDによります)

世界最大の,純血種犬の登録機関である AKC は,登録データから過去 1 年間で最も人気のある犬種をランク付けしており,2023年の結果が出ました。  フレンチ ブルドッグは,特に都市部で人気を集め,前年に続いて第 1 位となりました。  それ以前は,ラブラドール・レトリーバーが 31 年間にわたりトップの座を堅持し続けていました。

1位:French Bulldog
フレンチ・ブルドッグは,この10年くらいの間に人気が上昇しています。 気さくで明るく,おおらかで幸せに満ちた気質の犬です。 小さめのサイズは,あらゆるタイプの家に適し,そのことが人気に貢献しているようです。 ただし,短頭種気道症候群,耳の感染症,脊椎の損傷など,若干の健康上の問題を起こしやすい素因があります。
2位:Labrador Retriever
ラブラドール・レトリーバーは,見知らぬ相手にも愛情深い性格で,人間の子供や他の犬にも非常にうまく対応します。 水が大好きで,屋外で多くの時間を過ごす家族にとって素晴らしい仲間になります。 遊び好きで,生涯のほとんどを通して非常にエネルギッシュであることが知られています。 彼らは概して健康な品種ですが,股関節や肘関節の形成不全,耳の感染症,運動による虚脱などの傾向があります。
3位:Golden Retriever
ゴールデン・レトリーバーは,賢く忠実,しつけ易く,非常に愛情深い犬種です。 ラブラドール・レトリーバーと同様に,幼い子供や他の犬との相性が良く,素晴らしい家庭犬になります。 ランニングや長い散歩,水泳など、さまざまなアクティビティを楽しめます。 視覚障害者ための優れた盲導犬,またセラピー犬としても活躍します。 概ね健康な犬ですが,不適切な繁殖により,アレルギー,心臓病,眼科疾患や股関節形成不全になる場合があります。
4位:German Shepherd Dog
ジャーマン・シェパードは,大型ながら機敏で筋肉質,知性が高く,忠実な犬です。 自信,忠誠心,勇気があることで知られています。 仕事をすることを好み,軍や警察のパトロール,爆発物探知,捜索救助などに能力を発揮します。 大型犬としては平均寿命が長いものの,胃拡張や胃捻転,癌,アレルギー,心臓病などの素因があります。 
5位:Poodle
プードルは,運動能力が高く,賢くて気立ての良い犬種として,非常に人気があります。 特徴的な巻き毛の被毛は「アレルギーを起こしにくい犬」として知られますが,毛が絡まないように,定期的なグルーミングが大切です。 概して優しくフレンドリーな性格ですが,非常に活発で,規則的な運動やトレーニングで最大限の効果を発揮します。 健康上の注意点としては,股関節形成不全,特発性てんかん,フォンヴィルブランド病(遺伝性出血性の疾患)などがあります。
6位:Dachshund
ダックスフンドは,「ドキシー」とか「ウィンナー ドッグ」と呼ばれ,長いシルエット,短くて筋肉質の脚,勇敢でエネルギッシュ,警戒心の強い性質で知られています。 また自我が強くて頑固,遊び好き,いたずら好きなことでも知られています。 大好きな人間がやることなら何でも喜んでやりますが,広範囲に走ったり,ジャンプしたり,泳いだりといった活動は,長い脊椎を痛める可能性があり,注意が必要です。 代わりに,匂いの追跡,ノーズワークやパズルおもちゃなどのアクティビティを試してください。
7位:Bulldog
ブルドッグ は,幅広のスタンス,筋肉質で低い姿勢,受け口で,平坦なしわの寄った顔により,一目でそれと判る犬種ですが,概してフレンドリーな気質の持ち主です。 怠惰と思われがちですが,毎日の適度な運動を楽しみます。 運動には,早足の散歩や裏庭での綱引きなどが含まれますが,その場合,陽に当たり過ぎないようにしてください。 その形態的特徴により,体温が上昇し過ぎることがあります。 また皮膚や耳に問題を抱えていることもあり,大抵はアレルギーや皮膚のヒダに湿気が溜まることが原因です。
8位:Beagle
ビーグルは,匂いの追跡が得意なことで有名で,好奇心旺盛な犬種ですが,愛情深く,活発な性格でもあります。 その嗅覚により,鼻を地面に近づけて尻尾を振るのが大好きです。 非常に賢いのですが,意志が強く,訓練の際に集中力が持続しないことがあります。 食べ物に動機付けられた性質を利用すると,最もよく反応します。 一般的な健康問題としては,耳の感染症,肥満,アレルギー,チェリーアイなどがあります。
9位:Rottweiler
ロットワイラーも,常に人気のリストの上位にあり,人間を喜ばせることが好きで,忠実な犬です。 賢くて,ポジティブな強化トレーニングによく反応しますが,退屈すると,望ましくない行動を起こす場合があります。 彼らには,精神的な刺激を与えることが重要です。 ランニング,ハイキング,ドックダイビングや追跡を好みます。 非常に活発ですが,肥満や骨の癌などの素因あります。
10位:German Shorthaired Pointer
ジャーマン ショートヘアード ポインターは,そのスピード,敏捷性,持久力で知られています。 狩猟犬として訓練されていることが多く,獲物の匂いを追跡しているときは,匂いの方向に鼻を向けて立ち,立ち止まって合図します。 探検が必要ですが,通常,あまり手入れがかからない品種です。 走ったり,フェッチしたり,敏捷性を高めたりするゲームは,一緒に時間を過ごすのに最適な方法です。 ただし,むくみ,股関節形成不全,肘関節形成不全などには注意が必要です。 

以下,
11位:Pembroke Welsh Corgi
12位:Australian Shepherd
13位:Yorkshire Terrier
14位:Cavalier King Charles Spaniel
15位:Doberman Pinscher
16位:Cane Corso
17位:Miniature Schnauzer
18位:Boxer
19位:Great Dane
20位:Shih Tzu
と続きますが,21位から200位はこちらをご参照ください

日本のランキング
2023年 犬種別犬籍登録頭数

ジャパンケンネルクラブ
1位:プードル(トイ,ミニチュア,ミディアム,スタンダードの総数)
2位:チワワ
3位:ダックスフンド(カニーンヘン,ミニチュア,スタンダードの総数)
4位:ポメラニアン
5位:ミニチュア・シュナウザー
6位:フレンチ・ブルドッグ
7位:マルチーズ
8位:ヨークシャー・テリア
9位:シー・ズー
10位:ゴールデン・レトリーバー
11位:柴
12位:ビション・フリーぜ
13位:パグ
14位:ウエルシュ・コーギー・ペンブローク
15位:ラブラドール・レトリーバー
16位:パピヨン
17位:ボーダー・コリー
18位:ジャック・ラッセル・テリア
19位:ペキニーズ
20位:イタリアン・グレーハウンド
21位以下はこちらをご参照ください

過去10年間の順位推移

ジャパンケンネルクラブのサイトには,各犬種の順位推移に関する講評などは見られませんが,20年以上に亘るデータが掲載されていますので,2023年の上位20犬種につき,過去10年の順位推移を下の図に表してみました。

米国では,ラブラドール・レトリーバーが一昨年までの31年間にわたってトップの座を堅持していたのに対して,日本では1位:プードル,2位:チワワ,3位:ダックスフンド,4位:ポメラニアンというトップ4が10年間全く変わらず,不動の地位を保持しています。 
2018年までは,柴犬が5位をキープしていましたが,以後,若干順位が下がって2023年は11位になっています。 NHKの番組「柴犬 深堀り!」で紹介されたように,ツンデレで奥深い性格が魅力のひとつである反面,「飼うのが難しい」と捉えられることがあるのかもしれません。 ただ,この番組は当初英語で放送され,これがYouTubeで公開されたことで柴犬が海外で大人気になったのですが,それ以前に,忠犬ハチ公の物語がハリウッドで映画化された「HACHI」や,イーロン・マスク氏が Twitter 社のCEOとして投稿した画像,また世界一有名なネットミーム柴犬の「かぼすちゃん(Doge)」も海外での人気の土台となり,海外で「SHIBA Dog」を求める声はかなりあるようです。 
逆に,近年人気が高まっている犬種としては,ビション・フリーゼが目立っており,過去には20位圏外だったのが,2019年頃から順位を上げてきて,2023年には12位に入っています。

2023年登録頭数上位20犬種の過去10年間の順位推移

雑記

以前,「#12:短頭種の話」でも少し触れたように,ワンちゃんは,単一の種(species)の中に,非常に多様な姿形の犬種が多数存在し,更に日々新たな犬種が作り出されています。  日米の人気犬種を比べると,生活習慣や住環境あるいは国民性に拠るのかもしれませんが,米国では比較的大型の犬種が人気を博しているのに対して,日本では小型で「可愛い」ワンちゃんに人気が集まる傾向があるようです。 ワンちゃんに関して「流行り廃り」という言葉は,あまり使いたくないのですが,メディアやネットで紹介された新しい犬種や,文句なく可愛いワンちゃんに人気が集まるのは,極く自然なことですね。 
私が幼少の頃は,今のように多種多様な犬種を巷間で(というより,私が暮らしていた下町では)見ることはなく,大流行していた日本スピッツの姿ばかり目につきました。 私の生家でも,飼っていた2頭のうちの1頭は日本スピッツでしたが,その後,スピッツの流行は急速に終息し,見かけることも少なくなりました。 その結果,一時,日本での飼育頭数は1000頭以下にまで減少したそうです。 甲高い声で,よく吠えることが人気の衰えの原因だと言われることが多いようですが,当時,今のように愛犬をしつけ教室やスクールに入れる飼い主は,圧倒的に少数派だったので,必ずしも犬種の特性が原因だったかは定かではありません。 実際,最近になって日本スピッツの人気は復活し,登録頭数は30位前後で推移しています。 国会議員の蓮舫さんも,愛犬の日本スピッツ「うるる君」の画像をよくinstagram に投稿されています。
近年,柴犬と同様に,秋田犬などを含めた日本犬が,海外で人気を得ているようです。  海外での柴犬人気は,NHKの番組や映画が一因となったことは上に述べた通りですが,映画「HACHI」はもちろん秋田犬の人気にも貢献しました。 言うまでもなく「ハチ公」は秋田犬ですが,映画での幼犬時代のシーンには柴犬が使われたため,両犬種の人気につながるという,一粒で二度美味しい効果があったようです。 秋田犬はまた,フィギュアスケートの金メダリスト アリーナ・ザギトワさんに贈られた「マサル」が有名になったほか,元横綱の朝青龍や現ロシア大統領が飼っていることもよく知られていますが,後者の2人が飼っていることが秋田犬の人気を押し上げたかどうかは,よく分かりません。  私は日本犬の中では甲斐犬や紀州犬が好きなのですが,2023年の国内の登録頭数では,それぞれ67位および127位ということです。 ランキング的にはちょっと寂しい順位ですが,そもそも維持されている絶対数が限られていることを考えると,健闘していると言えるのかもしれません。 
なお,私たち Lapin Ange のInstagram に度々登場する,映画「石岡タロー」にタロー役で出演している「ダイちゃん」は,ビーグルのミックス犬で,この映画のモデルになった実在の犬と同じなのだそうです。 ビーグルと聞いて頭に浮かぶのは,世界一有名なビーグル,スヌーピーが活躍するコミック「ピーナッツ」です。 NHKの「アナザー・ストーリー」では,米国の新聞に50年間連載された「ピーナッツ」の作者 Schultz 氏は,その最終回の前夜に亡くなったという逸話などが紹介されました。
その他,南極観測隊のタロ・ジロ(樺太犬)や,漫画の「のらくろ」(ボストン・テリア),ディズニー映画のレディ(コッカー・スパニエル )や101 ダルメシアン等々,日本あるいは世界で有名になったワンちゃんたちによって,その名を覚えた犬種も少なくありませんが,コーイケルホンディエ(大谷翔平選手のデコピン)や,ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ(バラク・オバマ元米大統領のボー),オーストラリアン・ラブラドゥードル(木村家の愛犬たち)などは,言いにくいし覚えにくい…。

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