ヨルシカの衝撃。
初めて書いたエッセイは”つまらない大人になりたくない”という文章だった。Noteに書いて反響が地味に大きかったのは自分の青さは今の自分の強みかもしれないけれど、その青さにもいつまでも頼ってられないよねという文章だった。
書いているうちに欲が出てきて、サークルの友達にこの二本のエッセイを読んでもらった。返ってきた言葉は
ヨルシカ好き?
だった。拍子抜けしつつ、名前は聞いたことがあるけど、曲は聞いたことがない、と答えると
多分みのり好きだと思うよ、ヨルシカの歌詞とエッセイが似てるもん
と返ってきた。家に帰って、すぐにYoutubeで”ヨルシカ”と検索をかけた。
そして一瞬で虜になった。
この歌詞、サウンド…すごいと圧倒される一方でもう聞かないで!やめて!と叫んでいる自分がいた。
どうしてこんなに心が揺さぶられるのに、胸が締め付けられるんだろう。
ヨルシカの曲を聴いていると心が痛くなってくるんだ。共感と苦しさの波が襲ってくるんだ。
鳥居 乾いた雲 夏の匂いが頬を撫でる
大人になるまでほら、背伸びしたままで
遊び疲れたらバス停裏で空でも見よう
じきに夏が暮れても
きっときっと覚えてるから
追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く
口に出せないなら僕は一人だ
それでいいからもう諦めてる
(ヨルシカ ただ君に晴れ より引用)
なんでこんなに情景描写がきれいなんだろう。どうしてあの夏の思い出が頭に浮かんでくるのだろう。とってもきれいなのに、ちょっぴり切ない。その描写がヨルシカはとってもうまい。そしてこのメロディが、歌詞が終わったのかな…?というタイミングで入る
だけ
という言葉のエモさ。天才でしかない。二文字に詰め込まれた情報の多さ。こんなに情報の詰め込まれた”だけ”が存在したでしょうか?いやない(急な反語表現)
”ただ君に晴れ”を初めて聞いた時の衝撃を私は忘れないだろう。ヨルシカを聞くたくさんの人とあの夏を共有した大学3年の夏を私は忘れないだろう。
そして私はただただ嫉妬したんだ。こんなに胸に刺さる歌詞を描ける(歌詞の文字面ですら美しいのだから、文字で絵を描いているんじゃないかと思うんだ)ナブナさん(ヨルシカの作詞家であり作曲家)に。
似てるはさすがに失礼だよ…これは同じ土俵に立ってはいけないよ。月とスッポン以上に埋まらない溝があるよ。そう思いながら私はヨルシカの音楽をむさぼるように聞いた。
自分の思いを代弁してくれるから、胸が締めつけられるのはきっと図星だからで、きっとそれを完璧に表現しきった曲達に嫉妬しているからだ。
考えたってわからないが、
本当に年老いたくないんだ
いつか死んだらって思うだけで
胸が空っぽになるんだ
将来何してるだろうって
大人になったらわかったよ
何もしてないさ
(ヨルシカ "だから僕は音楽を辞めた"より)
私はこの"だから僕は音楽を辞めた"が一番嫌いで一番好きなんですよね。めっちゃ矛盾してるんですけど(笑)速いメロディに載せられた言葉はこれ以上ない重さを持った心の叫び。一番ウッ…(胸に手を当てる)ってなるんです。
年老いたくないという恐れから将来に対する漠然とした不安に移り変わる。大人になったら分かったよ、と答えを見せるような歌詞を置いてからの"なにもしてないさ。そしてサビにつながるパートで苦悩のギアが一段階上がります。
幸せな顔した人が憎いのはどう割り切ったらいいんだ
満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感
何度言ったか分かりませんがもう一度改めて言いましょう。え、天才なの…?劣等感を頭の奥の化け物に例えるところといい、"幸せな顔した人が憎い"というフレーズをサラッと入れ込んでしまうところといい…。何度このフレーズに頭を殴られて、苦しくなったかわからない。
綺麗なんだけど苦しい、中毒性のある音楽。それがヨルシカ。suisさんのまっすぐな歌声も心に刺さる理由なんだろうな。
情景が綺麗なことに気を取られてると綺麗事なしのフレーズに頭を殴られます。そしてそれこそがヨルシカの魅力なんだと思います。ヨルシカの衝撃。大嫌いだけど大好きです…。
ちゃんとその世界観を活かしたMVも好き。
(もし良かったら、ヨルシカを聞いてみてください。)