踏んだり蹴ったり、天井おちたり水でなかったり(後編)
ということで、前回の続き。
2日間汗だくなのに風呂に入れない状態が続き、しかも二日目は水すら出ないので水シャワーも浴びれない状況が続いている。
それでもお蚕さんはこちらの状況はお構いなしで育ち盛り。
<前編はこちらをご覧ください。>
そんな状態で眠りに就こうとするが、汗をぬぐい切れない私は何故か眠ることができない。
その理由の一つは天井の足音。
そしてカリカリと木をかじる音。
やつだ。
そうネズミだ。
普段なら「あーまた出たか」で済むんだけれど、もう何も考えれない私はその音が妙にイラついた。そして朦朧とした意識のまま罠を仕掛けに天井裏にのぼった。
そう。確かにあの時は冷静さを欠いていた。
天井裏にのぼると、鉄骨伝いに歩を進める。
と、その時。いた!
やっぱり居やがったか!
このやろう!!
と思うか思わないかの瞬間
視界からネズミが消える。
気が付くと私はスレート屋根の裏側を見ていた。
なんでああなったのかいまだにわからない。
思ったより疲れていて足が上がらなかったのか。ネズミがいたことに気を囚われすぎたのか。
確実なのは足を踏み外して天井のプラスターボードに穴をあけ、天井裏で転んだって事だ。(ラオスでは鉄骨の上にプラスターボード一枚という非常にやぐい作りで天井を貼っているため鉄骨の上以外は足を踏み入れてはいけない)
ネズミどころの騒ぎではない。
しかもこの天井は先月付けたばかり。
私のエネルギーは枯渇した。
完全にゼロになった。
一応罠を置いてとぼとぼと部屋にもどり、もう何もかもいいやと寝ころんだ。
しばらくするとドーーーーンと音がする。
チラッと見ると、先ほど穴をあけた天井部分が周囲を含めて剥がれ落ちていた。
はぁ・・・・もう好きにしてくれ
と私はベッドから一歩も動かずあきらめの境地にいたり、気が付くと眠りについていた。
それでも日はまた昇る
眠りについてから4時間後、養蚕は未だに最高に忙しい真っただ中。
もちろん一晩眠っても水が復旧していることはない。
さらに落ちたままの天井が気持ちに追い打ちをかける。
とはいえ寝てるわけにはいかない。起きなきゃとベッドから体を起こすと、足に痛みが走ることに気が付いた。昨日は気づかなかったが踏み外した際に強く打ったようだ。
それでも少し眠ってHPが1から3に少し回復した私は、足をずりながら朝からまず養蚕にとりかかる。
そして優先順位をつけた。
天井はこの際、すべてが終わってからの修理でいい。
それよりもまずは水だ。
朝のお蚕さんのお世話をスタッフが来る前に終わらせて、残りの掃除をまかせればサラワン市にポンプを買いに行ける。
ポンプの容量が足りないことが分かった私は、朝一からサラワン市まで行くことを決めた。サラワン市はバイクで50分ほどのところ。
往復すると2時間。
時間は惜しいが仕方がない。
朝からバケツの水を浴びると、とりあえずのお蚕さんの世話を済ませ、スタッフに残りの作業をお願いすると早速バイクにまたがった。
水道復旧の残りの作業量は見えている。
街でポンプをかって、また井戸からポンプを引っ張り出して、接続しなおしてスイッチオン。ポンプさえあれば2時間もあればできる作業だ。
無事にサラワンについた私は2件めぐるとちょうどいいポンプも見つかった。いや、焦ってはいけない。ラオスでは初期不良なんてのもざらだ。
店の人にお願いして、しっかり稼働するかを確かめる。
うん。今日はさえてる。
と心に平静を少し取り戻した私はしっかりと稼働するポンプをもって農場へと帰路に就いた。
無事に帰宅して早速ポンプをつけたいところだけれど、往復二時間・店でのあれこれをいれれば3時間以上が経過している。これではまずはお蚕さんの世話からしなければいけない。
それを終えると既にお昼の時間。
ここまでくれば焦る必要はない。
お昼を済ませて、ゆっくりとポンプをつけよう。
そういえば久しぶりのご飯だ。
お昼を終え再びみんなに集まってもらい、昨日つけたばかりのポンプを引き釣り出す。もう手慣れたもので、それぞれが役割を果たしていけばすんなりと作業が終わっていく。
・・・が、どうも雲行きがおかしい。
湿気を帯びた強い風が吹き始めると、一気にあたりが暗くなる。
これはまずい。
と思うと同時にどどぉっと雨が降り始めた。
もちろん作業は中断。
いつやむとも分らぬ雨に、
「これでシャワー浴びなくてもすむじゃん」
と冗談を言い合うスタッフたち。
そ、その余裕が羨ましい・・・・
1日あれば余裕でつくと思っていた私が甘かった!
時間がたつとともに焦り始めたが、この行き場のない焦りはどこへも向けようがない。何せ相手はお天道様だ。
こんな時は、ただ待つしかできない。
しかし待てば必ず晴れる。
夕刻に近づくころ、雨があがった。
電気系統を触るので細心の注意を払いながら仮接続が完了。
あたりはすっかり暗くなっていた。
ともあれ、これでいよいよ水が使える!
さぁスイッチオンだ!!
・・・・
・・・・
・・・・
水が出ない。
え?なんで?
とスタッフが一言
「ファイダップ(停電だ)」
今度のは町全体の停電。
もーーーー!!!なんでこんな時に!
・・・なんて普段なら思うだろうが、この時の私はただ笑うしかできなかった。
乾いた乾いた笑い。
ハハハハハハ
きっとさっきの雨でどこかの電線がやられたんだ。
そしてすっかり日が落ち、あたりが暗くなると、スタッフがそろそろと帰っていく。
「明日には直るから大丈夫。ぼぺにゃんぼぺにゃん。」
川に行けばいいじゃんってのが当たり前だから、水が出ないことに対する不自由をそれほど感じない彼らにとって1週間くらい水がでなくても問題ないらしい。しかもバケツにはまだ水が残ってるではないか!だからボペニャンなのだ。
しばらく後に電気は復旧したけれど、さすがにこの闇の中で雨も残る中では作業はできない。
まさか本当に雨シャワーで済ますことになるとは思ってもなかった。
それでもさすがに終わりはやってくる。
あの永遠に続くと思われたトラブルの連続もいよいよ終盤に差し掛かった。
翌日はしっかりと電気がきている。
ここまでくれば、養蚕より先に水の復旧の確認だ。朝4時。
まだ暗いなかでスイッチをいれる。
と同時に水があふれかえる。
「あーーーーー水や!!よかった~~~~」
あとは本接続。パイプをタンクにつけ、フロートの接続も終え、しっかりとタンクに水が溜まっていくのを確認する。
ここ数日ポンプの付けかえなどで水が上がったり落ちたりしてたため出てくる水はまだ土がまざっていた。それでもお構いなしだ。
まずは水を存分に浴びる。
いや、ここまでくればお湯でシャワーだ!
とタンクに水がたまるのをまち、シャワーを浴びる。
久しぶりに綺麗さっぱり体を流して一安心。
まだしばらく養蚕は続くし、天井が落ちたままだけれど最悪の数日間は乗り切ったらしい。
夜、湯船につかると今度は私のスイッチが切れたかのように深い眠りについた。
おまけ:トランスの蛇対策
実は、水の復旧作業を始めたとき、再び蛇が電柱付近で発見された。
また蛇が昇って絡むといけないんだけれど、その時の私はそれをどうにかしようとする余裕がなかった。
しかしありがたいことにスタッフはいたって冷静で、アルミの板があったよね?なんてい言っている。
「使っていいか?」というので「良い」と答えると、それを持ち出し電柱に巻き付け始めた。
こうすると蛇が登っていかないんだそう。
とってもありがたいスタッフの行動にほんの少し心が晴れた瞬間。
ところでこれでほんとに蛇が登らないか?は不明である。
なにせ
「なんで登らないの?」の答えが
「ツルツルしてるから」
というわけなのだ。
何はともあれその気転とやさしさに感謝感謝。
井戸の修理もできるし、良いスタッフに恵まれているのは確かである。
サポート頂いた場合は、食べれる森作りを中心に、南ラオスの自然を大切にする農場スタッフのための何かに還元させてもらいます。