使えない帰国子女、使える帰国子女 | 外資系コンサルタントが語る
0.はじめに
外資系企業にいらっしゃる方(もしくは就職活動中の方)は特に共感できるかも知れませんが、帰国子女、最近多いですよね。この記事を読んでいる人の中にもいらっしゃると思いますが、最近は帰国子女の中でも格差が生まれているように感じます。今回は「使えない帰国子女、使える帰国子女」と題してこのトピックを深掘りしたいと思います。
1.帰国子女の優遇
「海外大に交換留学していました」、「アメリカの大学を卒業しました」、「イギリスで院を出て」こんな文言を最近とても頻繁に耳にします。特に私の勤める外資系コンサルファームだと、このような人は大変多くいらっしゃいます。こうした方は、「ボスキャリ」や「ロンキャリ」など、特別な就活ルートが存在しそれらを経由して入社する人もいます。最近は傾向も変わり始めているものの、日本においてこのような「帰国子女の優遇」はまだまだ存在していると感じますね。
ただ、社内でそうした方々を観察していると、どうも帰国子女も二極化しているように思えるのです。それが、タイトルにもある「使える帰国子女」、「使える帰国子女」です。失礼かも知れませんが、「この人、帰国子女でなければ絶対うちに入れなかったな」なんて人がいるのも事実です。とはいえ、「この人は本当に優秀だなあ」と思えるような帰国子女の方ももちろんたくさんいます。では、この格差はどこからくるのでしょうか。
2.帰国子女優遇の落とし穴
この格差を生む、帰国子女が陥りがちな「落とし穴」を羅列してみました。
①「帰国子女」であること自体をアピールしている
そもそも、帰国子女であることの価値とはなんでしょうか?たまに、留学経験者や海外生活経験のある人を無条件に特別待遇しているような企業を見かけます。が、これは正直ありえません。帰国子女だから偉いということもなければ、帰国子女だからというだけですごいわけがありません。帰国子女限定で選考をゆるくしたり、特別ルートを用意したりするのは、企業にとって何の意味もありません。
帰国子女だからすごい は間違い
帰国子女特有の価値を持っているからすごい が正しい
②英語が喋れることをアピールしている
帰国子女だから英語ができる、ことをアピールする人もよく見かけます。ですが、「英語ができる」のはもはや差別化になりません。ありふれています。TOEIC900点台は普通です。何なら3カ国語、4カ国語を喋れる人もたくさんいますし、それでさえ最近は珍しくありません。そもそも言語とは「ツール」です。重要なのは何にどう使うかであって、ツールを持っていること自体は重要ではありません。
先日の記事でも書いたのですが、「ネイティブらしい発音の英語」などにはビジネスにおいて価値はありません。(https://note.com/3consultants/n/nf1bba266e3d7)
ビジネスにおいて求められているのは「コミュニケーション能力」です。
③海外に縛れている
これもありがちなパターンですが、「グローバルな仕事が絶対したい」というように海外に縛られてしまっているというものです。そもそも、真にグローバルなプロジェクトはあまりないのが現実です。例えば、アメリカの案件であれば日本企業の進出などよほど特殊な事情がない限りアメリカの担当者が業務を行うはずです。また、日本企業の進出において報告相手になるのは結局日本人であることも多いです。また、絶対グローバルじゃないとだめ、のように自ら案件の幅を狭めてしまっていてはかえってマイナスになります。
④日本の事情に無知である
上のものに似ていますが、日本と海外では異なる文化や考え方があり、海外経験があるが故に日本のやり方を忘れてしまっている場合です。これは筆者の経験ですが、グローバルの事例を日本にそのまま当てはめてうまくいくことはほとんどありません。もちろん日本のやり方に常に従え!というわけではありませんが、日本でビジネスに参加する以上、日本の顧客特性、ビジネス体質などは把握しておかなければいけません。
3.帰国子女が出すべき価値とは?
では、本来帰国子女である人に見出されるべき価値とはどのようなものでしょうか。
①重要なのは何をしたのか、何ができるか
重要なのは何をしたのか、何ができるかです。どこで生活してきたかはそこまで重要ではありません。アイビーリーグやMIT、オックスフォードのような超名門校のMBA卒であれば話は違ってくるかもしれません。ただ、「世界大学ランキング上位の大学を卒業した」とか「イギリスでは有名な大学を卒業した」とかは何の意味もありません。大学ランキングは英語圏の大学が有利です。入学試験は東大や早慶の方がはるかに難しく、授業レベルも大差ありません。「在学中こんな偉業を成し遂げた」、「在学中はこれを誰にも負けないくらい研究した」、「在学していた大学でしかできないことをした!」もしくは、「自分はこんなことができるんだ」のようなストーリーが必要です。
②特定の分野への強み
今まで何をしたか、という観点では、専門科目や専門知識が挙げられます。例えば、宇宙工学はアメリカやロシア、経営工学はアメリカやイギリスが有名です。特定のキャリアを歩もうと考えている場合、その分野において昔から培われたノウハウやナレッジがあるような国に行くのは合理的なことです。例えば、MITは工学で非常に優れた実績や教育力を有しています。
③多角的な視野
何ができるかという視点で、国際的な経験のある人が優れているのは多角的な視野を持っているということです。1つの物事を、「日本ではこうだが海外ではこんな考え方もある」という風に多様な視点で見ることができます。斬新なアイデアを生むきっかけにもなれば、自己レビューをする力を養うことにもつながります。
④ネットワーク
また、海外で知り合った人たちのネットワークも強みの1つです。様々な国の最先端の情報や事例、角度の違ったアドバイスを、リアルタイムで教えてもらうことができるのはとても大きいです。また、相談をすれば異なる視点でアドバイスがもらえることも多いでしょう。MBAの1番の収穫はネットワークである、といわれることもあるほどです。
4.「海外採用」がなくなる!?
もし、帰国子女の方々が前章で述べたような「正しい価値の出し方」をしなければ、これから評価されることは少なくなってしまうでしょう。すると、企業によっては海外採用を縮小、停止するようなところも出てくるかも知れません。例えそうなったとしても、自身の価値をアピールできるような「意味のある海外経験」を積むことが重要ですね。
実際、某コンサル企業では海外採用の特別ルートを廃止したと聞いています。これからこのような流れが続くこともあり得るでしょう。
5.おわりに
ただ「帰国子女であること」、「海外経験があること」を強みにするのではなく、培った多角的な視野や専門知識など、「何をしてきた」、「何ができる」ということに重心をおいて自身の価値を上げていかなければなりません。ぜひこれを読んでいる皆さんは「使える帰国子女」側にまわってください。
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