見出し画像

みんなが騙されるデマを作る方法 | 外資コンサルが考えてみた

0.はじめに

最近よく耳にする、フェイクニュースという言葉。インターネット技術の発達で、情報量は増える一方。その中で、何が本当で何が嘘か見抜くのはますます難しくなっています。この記事はあくまで、フェイクニュースを作ることを勧める記事ではなく、警鐘を鳴らす記事です。情報を受け取る際には、この記事に書いてあることを少し注意してみるようにしてはいかがでしょうか。

2.そもそもなぜ騙される?

フェイクニュースに人が騙されるのは、大きく2つの問題があるからです。1つは、情報の発信者の問題。意図的に偽物の情報を流そうとしている人もいますし、最近は広告を見させるためにわざとキャッチーな見出しをつけたり…様々な理由が背景にはあるでしょう。もう1つは、受信者の問題です。受信者に騙されやすい特性がある場合です。

画像1

2.こんな要素にご注意(発信者の問題)

まずは、情報の発信者目線で見てみましょう。どんな要素を入れれば受信者を騙しやすいでしょうか。

威圧的なワード

「絶望的な状態」、「大変な事態」、「やばい真実」、「いますぐこうしろ」のように、強調する威圧的なワードを入れると人は信じやすくなります。例えそれが根拠に乏しい内容だったとしてもです。

一部分の切り取り、歪曲

専門的用語では「サンプリングエラー」とも呼びます。「主婦100人に調査しました!」。一見公平にみえますが、貧困地域の主婦なのか、富裕層地域の主婦なのか、若い主婦なのか、比較的お年寄りなのか、こうした要素によって結果は変わるはずです。ある一部分の集団だけ抜き取ってあたかも全体の代表のような声にする手法ですね。「市民は嘆く」、「女はいつも〜」、「学生は〜」のように、主語があたかもその全体を示しているような言葉には気をつけましょう。「お金持ちはいつもこうしている!」とかも、ある一部のお金持ちがしているだけにすぎなかったり・・・

ちょっと面白い例として、「金持ちは新聞を読む!」というのは本当でしょうか。日本社会では、高齢者が裕福な傾向にあるため、そもそも金持ちが新聞を読んでいるのではなく、新聞をたくさん読むお年寄りが富裕層なだけですよね。

数値の加工

これもよく使われる手法です。「感染者が3倍に!」。大変なことのようですが、「10000人が30000人になった」のと、「1人が3人になった」のは両方3倍です。ある100人を調査して、ある1人は年収30億円、他の99人は年収300万円でした。平均年収は約3300万円です。これは実態を表しているのでしょうか?

ちょっと高度な手ですが、背景の数字を利用するテクニックもあります。例えば、「新卒の手取り合計は昔に比べてはるかに低下している」。おそらく数字を計算すればこれは正しいでしょう。が、若年層の人口自体が昔に比べ減少しているので、合計が低下するのは当たり前です。なぜ平均や中央値ではないのでしょうか。あたかも真実に見える「統計量」には注意が必要です。

権力者、組織を主語にする

「あの芸能人も絶賛」、「米軍が認めた」、「ハーバード大卒が書いた」、こんな文言を入れると一気に信じやすくなりますね。人は権力者や組織に弱いのです。ハーバード大卒でも間違った文章を書くときはありますね。権力者=正しい情報ではありません。

多数派の意見

「みんなそう言ってる」、「日本人なら誰でも感じる」、多数派がそう言っているのだから正しい、という圧力を与えるものです。「でもみんなそう言ってるよ?」とかも同じですね。「みんな」って誰なんでしょう。何人が言っているのでしょう。人は本能的に少数派でいることを嫌います。それを利用した手法ですね。

難解、曖昧、未知な言葉

最新技術「サイコマインドリーディング」、電磁気学理論を利用した最新鋭メディカルツール、こんな文言に騙される人もいるはずです。人は難解な言葉や未知の言葉を聞くと、なんとなくすごい、と思ってしまいがちです。そもそも自分がよく理解していない言葉を信じてしまうのはよくありませんね。

偽物の根拠

情報ソースを見る人はいますが、そのソースが信憑性のあるものかまで確かめる人は少ないです。「化学研究所公認」って、どこの研究所なんでしょうか。「物は言いよう」とはこのことで、自称であればなんでも研究所です。「信頼できるソース」かどうかを確かめるようにしましょう。

感情論

「お金持ちは悪い!」、「自粛しないやつは悪!」、のように、「なんとなくイメージ上正しいこと」を人は正しいと判断してしまいがちです。「お金持ちは高額納税者でありむしろ社会貢献の度合いは高い」ことは冷静に考えればわかりますが、自分よりお金を持っていい生活をしているとムカつきますよね。これが判断を狂わせます。(もちろん全てのお金持ちが悪い人ではないとは言っていません。)

極論、01思考

「必ず」、「絶対」はあり得ません。何事もグレーな状態で成り立っています。公務員で汚職があった、だから全員首にすべき!というわけにはいきませんよね。「全か無か」の思考に陥ってはいけません。「日本より海外が優れている!」、「海外より日本のがいい!」のように、何かを簡単に言い切ることはできません。「このような面では日本の方が優れている」、「こういう点では海外を見習うべきだ」など、様々な角度から検証をしないとダメですね。

道徳心・正義感の利用

信じないなんて不道徳、不謹慎などと、正義感を利用する方法です。いわゆる「タブー視」させることで、反対意見を沈黙させます。「お葬式はお金もかかるし不要」、「マイノリティを尊重するのは悪い面もある」などのトピックは、「本当にそうか」を検証する前に、「そんなの言ったらダメに決まってるだろう!」、「人としておかしい!」という抑圧をされることが多いです。(筆者がこのような意見を抱いているというわけではありません。あくまで例としてです。)いわゆる、「思考停止」の状態に陥っていますね。道徳心や正義感ももちろん大切ですが、何かを履き違えて盲信することほど怖いものはありません。

利益の示唆

人は自分に有利な情報を信じようとします。「1000万すぐに稼ぐ方法」、「絶世の美人とすぐ付き合える!」、のようなものですね。そんなうまい話、果たしてあるのでしょうか。

焦りの利用

人は焦ると正常な判断ができません。「あと5分以内に振り込まないと大変なことに」、「ショウガ湯を飲めばコロナが予防できる」。どちらも生命の危機などを示唆することで正常な判断力を失わせます。オレオレ詐欺と同様ですね。

2.人間の特性(受信者の問題)

デマが広がっていくのは、情報の発信者の問題だけではありません。受信者にも問題が有る場合はたくさんあります。例えば・・・

<確証バイアス>
そもそも、人は自分の意見を支持する意見を信じたがる習性があります。「確信バイアス」という言葉をご存知でしょうか。ある問題に対して、自分が賛成派だったとします。インターネットで、その問題を調べた時…

同じ賛成派の意見を目にする→「やっぱりそうか!自分の意見は正しいんだ!この人わかってるな〜」
反対派の意見を目にする→「この人はわかってない!こんなの嘘だ。」

こうなることを確証バイアスと呼びます。本来正しい議論とは、相手の意見と自分の意見で、悪い部分は直し合い、良い部分は高め合うようなものであるはずです。それがいつの間にか、自分に反対する意見は許さず弾圧する方向に向かってしまうのです。「自分は間違っているかもしれない」、「相手の意見も一理あるかもしれない」という姿勢が大切です。実際、私も仕事をしていて、成功している人は相手の話をしっかり聞く人に見えます。

<フィルターバブル>

近年では、フィルターバブルという言葉もでてきています。これは、検索エンジンなどの「おすすめ機能」によって、自分に都合の良い情報しか表示されず、それらを見続けることでさらに自分の意見だけが強化されてしまうことです。たとえば、あなたがある意見に対して賛成だったとします。とすると、あなたが検索をするのはおそらく、「○○ 賛成」などのキーワードではないでしょうか。検索エンジンはそれを学習し、同じ意見の記事しか表示しなくなります。そしてさらにあなたの意見は強化されていきます。まさに、泡(バブル)のなかに閉じ込められた状態ですね。

画像2

あなたが普段目にしている情報は、すでに「相当偏ったもの」として考えると良いでしょう。

3.どうデマを見抜くか?

たくさんの情報を扱うコンサルタントとして、普段気を付けていることをご紹介します。

「デマの兆候」を見逃さない

上のパートでも述べたような、「デマ」によく使われる手段を知っておきましょう。そして、常にアンテナを貼りましょう。基本は疑ってかかることです。コンサルではよく、何事も疑ってみろ、といわれます。

自分を過信しない

コンサルファームでは、相手の目線に立つことが常に求められます。よく、自分だけの視点に固執しすぎないよう注意されることがあります。物事は多角的にみるようにしましょう。

ロジックツリーを常に頭の中に。

コンサルがよく使う「ロジックツリー」は、デマを見抜くのにも有効です。

ロジックツリーとは、ある「メッセージ」を分解していき、ツリー構造にするというテクニックです。例えば、「この会社は新事業が失敗して売上が落ちている!」というメッセージは、以下のように分解できます。

画像3

つまり、サブメッセージ(分解されたメッセージ)が全て言えて初めて、大元のメッセージが言えるわけですね。逆を言えば、これら全てが言えてないのに、元のメッセージを言い切ってはダメということです。ロジックツリーについてはまた別記事で詳しく解説しますね。

4.おわりに

コンサルタントとしてリサーチを行う際、必ずそのデータの信憑性は問われます。信頼性のないデータを使っているとわかればそのコンサルタントの、ないしはそのファームの信頼度は地に落ちます。たしかにインターネットや他メディアはとても便利なものです。ただそれは正しい使い方をした時のみです。それは仕事に関わらず、日々の生活でも気をつけるべきことですね。
もし皆さんも、「こんなデマに騙されるな!」みたいなのがあればコメントなどで教えてくださいね。笑

いいなと思ったら応援しよう!