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しん・たま《短編・前編》

本シリーズは、心霊等、超常現象の表現を含みます。苦手な方はご注意ください。

なにげなく「心霊」という言葉をつかう。
本来、何を示す言葉なのだろうか。

心霊(しんれい)は「神霊」とも書き、サブカルチャーの世界では、超常現象あるいは超能力の意味として用いられる。もとは「精神」の意味で使われていた。1910年代の念写写真が「精神のなせる写真」という意味合いで心霊写真と呼ばれていたのだが、その後見世物としての幽霊トリック写真が流行した際、この言葉が広く使われ、心霊=幽霊という意味合いが定着した。
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もともとは「精神」の意味なんだ。知らなかった。確かに、今ではすっかり心霊=幽霊になっている。幽霊ってホントにいるのだろうか。いるなら、ぜひ一度見て見たいものだ。

「おはよー。日曜の朝からボックスのパソコンに向かってる人がいるー。まじめー。」
「ボックス」と呼ばれる、大学キャンパスの体育館裏にひっそりと建っている同好会の部室棟。
その扉を勢いよく開けて飛び込んできたのは、同じ3年生の中島真琴。研究部長のまこっちゃんだ。
同好会の名称は、しん・たまサークルという。一昨年までは、心霊・霊魂研究会だった。まこっちゃんの発案で名称変更になった。
それまで、部員5名で細々と活動していたが、4年生の2人が卒業となり3人になってしまった。ボックスを貸与される同好会の条件は5人以上。なので、ボックス返上の危機に瀕した。それで、まこっちゃんをリーダーとする「部員勧誘大作戦」が開始されたというわけだ。
まこっちゃんが言うには、「霊」の印象がよくないとのことだった。それで霊が外されて、「心・魂」が残った。堅苦しいとのことで、「しん・たま」となってしまった。なんだか、ふわふわしすぎてないか?との僕の意見は完全にスルーされた。そして、変わったのは名称だけではなかった。

まこっちゃんの勧誘はとても強引だった。
「どういった活動をしているサークルなんですか?」とボックスを訪ねてくる学生があると、まこっちゃんが対応した。「なんのサークルだと思いますか?」
「いやあ、その、サザエさんの、磯野家のたまが好きでして・・・」
「あ!それ、正解かも」
「”しん”って辛っすか?自分、辛党なんで。あと飲んだあとの、シメのラーメン替え玉無料とか最高っすよね。」
「だよねー!!」
たちまち意気投合し、入部希望届へのサインを獲得した。新たな2名の部員加入により部室は守られた。まこっちゃんの危機突破力はさすがだ。ただ、猫アレルギーで、お酒が飲めなくて、夏に向けた身体づくりのためにダイエットしていた僕は退部したくなったが、なんのかんのと説得されて、あきらめてしまった。

「ねぇねぇ。ところで、新人歓迎のプチ合宿の企画進んでる?」
「いや、まだ。心霊スポットと、猫がつながらない。あと、ご当地ラーメンってのもなかなか難題。」
「なんだよー!がんばってよー」
「そうは言ってもさぁ・・・」
「しょうがないなぁ。知り合いの旅行代理店のツアコンからの情報なんだけど、とある温泉宿にあるらしいよ。そこに案内されたら、必ず断れってツアコン仲間の間で噂になっている部屋が。」
「なんだよ。それ。」
「まったく鈍いなぁ。だからぁ、その部屋に出るんだよ。アレが。日頃は、“開かずの間“になっているんだけど、お盆休みなどの繁忙期に部屋が空いていない時には、ツアコンがそこに泊められてしまうことがあるらしいよ。」
「ふむ。それはちょっと興味引くな。」
「おー。乗ってきたね。ここからJRで2時間弱ほどだよ。今から行ってみる?」

つづく