名CM考Ⅱ 第四十回 2007~2008年 日立 「Wooo UTシリーズ」
松下電器がプラズマで大失敗してる頃、同じようにTV事業から撤退を考えている会社がありました。日立です。しかし日立の姿勢は松下とは真逆です。
何度も言いますようにこの2006年~2008年というのは団塊世代の大量退職とプレッシャー世代と呼ばれる新卒の大量入社、ゼロ金利解除と「失われた20年とはならないのじゃないか」という期待がありました。経済成長率が1%の時代に、ですよ。しつこく言いますけど。
だから日立はこう考えたのです。
今が攻め時だ。定年退職世代は暇になるから定年退職世代のTV受信機買い替え需要を狙おう。ちょうど地デジ化も始まるし……。
だから「自由すぎる奴はいつだって敵が多い」と言ったのではないでしょうか?これってずばり定年退職した奴の隠語の事じゃね?考えすぎですかね。だってWoooに「操作性としての自由さ」があるとはちょっと……。超・薄型テレビだから置く形が自由?そんなのは当時から他社の液晶だって作ってるよ。
定年退職とはずばり社畜からの卒業。つまり「人間としての尊厳と自由の回復」です。現役会社員全員が嫉妬する瞬間です。特に伝統的日本企業は転職した奴だけでなく定年退職した奴も会社村からのはみ出し者として社内の友人からの連絡がピタッと止まるのはそれなのです。そこが学校の同窓会との大きな違いです。だから「自由すぎる奴はいつだって敵が多い」というセリフには裏の意味があると考えたのです。
でも企業の姿勢として正しいのは間違いなく日立です。たとえ事業撤退となろうとわが社は最後まで全力でTVを開発し、売り込みますってそれは「消費者を裏切りません」って意味ですからね。
で、リーマンショックが起きたときに日立は2009年に社史上最悪の赤字額を出し、瀕死になりました。たしかに日立も事業売却、事業売却とリストラが本業になってしまった企業ですがこの企業はまだどっかに明るい希望を持ってます。
しかも当時は定年退職金による爆買い需要なるものまで予測してたのです。結論は息子世代の面倒を見ることでそんな需要など吹き飛んだし年金記録問題が2007年に発覚して老後に不安を覚えてそんな需要など生まれなかったし、それどころか年金受給年齢繰り下げ開始が2007年開始となったのであろうことか60歳以後になっても働く羽目になったのです。だから定年退職金需要なるものは起きずそこに2008年にリーマンショックが起きてジ・エンドとなりました。
それが両社のCMの違いとなって現れたのではないかな。