名J-POP考 第5回 松原みき 『真夜中のドア〜stay with me』
まず欧米の方々にお礼を申し上げます。なぜなら日本人の我々でもこういった名曲があるということを知らなかったからです。ということは事実上の2010年代の大ヒット曲で35年以上越しのヒット曲にもなります。日本人にとっては洋風に寄せた曲は欧米人が聞くと80年代レトロという純和風の曲ということです。そして欧米人にとっても80年代の日本というのはやはり欧米人にとっても偉大な国であったと。
厳密にはこの曲は1979年の曲なんですが。
雨の新宿駅周辺でタクシーを拾ってしばらくすると車内にこういったシティーポップが流れて……というのが彼らが言う理想的な80年代日本レトロなんですって。
そして新宿駅西口とか西武新宿線沿線とか京王線沿線とかが特にそうなんですが景色が80年代末~90年代初頭から全く進歩してない。そこがいいんですって。我々にとっては『失われた30年』という経済失政が生み出した「停滞」という屈辱的な光景ですが80年代レトロを求める欧米人にとっては最高の光景なんですって。
で、確かにこれは「J-POP」だ。J-POPという概念が出る10年前にすでにJーPOPがあった証拠だ。すごい。時代の先を行き過ぎて逆に受けなかったってパターンなんだろうな。これって。
だって1979年・年間オリコンヒットチャートってこんな順位ですよ。
1位 渥美二郎:「夢追い酒」
2位 ジュディ・オング:「魅せられて」
3位 小林幸子:「おもいで酒」
4位 さだまさし:「関白宣言」
5位 千昌夫:「北国の春」
6位 ゴダイゴ:「ガンダーラ」
7位 西城秀樹:「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」
8位 アリス:「チャンピオン」
9位 牧村三枝子:「みちづれ」
10位 ピンク・レディー:「カメレオン・アーミー」
1位が演歌ですよ。演歌全盛期にこんな曲が生まれているんですよ。もちろん『真夜中のドア〜stay with me』は年間50位内にも入っていない。したがって事実上2010年代の曲だ。
そして重要なのは2020年代になっても逆に欧米人が聞き飽きて来ない事だ。日本人は「はいはい、欧米人のシティーポップブームね」と新型コロナの件でとっくに過去のものになってるが彼らからしたらそうではない。偉大な日本の時代の象徴的音楽なのだ。むしろ日本に観光客として行けない分より日本へのあこがれが強まっている。だから2020年代はよりシティーポップブームが強くなったのである。