名CM考Ⅱ 第九回 1997~1998年 TDK 「MD」

もちろんMDの発明者はソニーです。MDの特徴はカセットテープと違って録音した曲に直接飛べる、音楽名を付けられるといった点です。でもこんなCMじゃ訴求力が無かったのです。どうしちゃったんだろう?当時のソニーは。

1994年当時のソニーのMDに関するCM(開発年は1992年)

で、ですよ。実際の訴求力を持ったMD普及の貢献者は……。そうです。TDKとかですよね。

TDK's MD 1997年 (ELTのFuture World』を採用)


TDK's MD 1998年 (GLAYの『誘惑』を採用)

ソニーのCMには何が足りなかったんだろう。そう、メジャーアーティストの採用じゃねえの? だってTDKってこの時のCMはELT→GLAYと来たんですよ。ヒットしないわけがない。もちろん当時のソニーのMDプレイヤー本体価格が約9万円というのも阻害要因として大きいですがそれでも当時のミニコンポを持ってたらたぶんMDプレーヤー付だったはずなので。結局CMと音楽の力の勝利なのです。ソニーは子会社にソニーミュージックを持っていたというのに。

特に1998年版はもうCM自体が音楽作品ですね。こういうCMも無くなったよね。

ただご存じのようにMDはその後i-Padにやられて行きますよね。でもさ……あれって光ディスクの容量を大きく増やせば実はi-Padに対抗出来たんじゃねえのかなって。

MDはよく「失敗作」とも言われています。それでも見てください。なんとカセットテープの出荷数と音楽用MDの出荷数が2000(平成12)年に逆転しているんです。わずかであるんですがMDの天下が4年ほどあったんです。つまり、MDは失敗作では無かった。その貢献がたぶんこれらのCMだったと思う。後続メーカーの方がMD普及の貢献度が大きかった。

もちろんi-Padに対してソニーはHi-MDで対抗しましたよ?でも容量2倍増程度ではi-PadのHDDには負けてしまうんです。まず、HDDでは容量が桁違いに違う。

だから僕はね、とっぴょうしもない発想だけどAドライブで動かせる光フロッピーディスク、つまりMOの後継としてMDに汎用性を持たせるべきだったと思うの。実際に2023年の今の時代になってもFDは現役で役所や銀行を中心に動かしてるのだしね。フラッシュメモリって小さすぎてよく紛失して個人情報が大規模に漏れる要因の一つだしね。「個人情報保護の観点からフラッシュメモリは社内のみの使用」ってすればMDは今でも生き残っていたに違いない。しかし、この時のソニーは「動画も記録出来るMD」を作ってしまったんだ。違う、そうじゃない。それじゃ負けていく。そう、アイフォンの登場だよ。そう、当時のソニーはもう動画カメラの時代じゃないってことに気が付かなったんだね。

お客様はワードやエクセルなどを大量に保存できて、ついでに音楽も保存できる光FDが欲しかったんだよ。CD-Rじゃデカすぎるしねw

それにカセットテープやMDと言った記録媒体は「私的録音録画補償金制度」が含まれており、アーティストの印税に含まれます。そういったものを殺すと音楽が死ぬのです。

小室氏の引用部分でも話しましたが「音楽はタダ」じゃないのです。そういうものを殺すと音楽は死ぬし、現に今の音楽はほぼほぼ全滅状態とも言っていいでしょう。特に80~90年代はエアチェックを行っているものがおりました。本人はたぶん自覚してないんでしょうけどたとえ本人がCDを買うお金が無くともカセットテープを買う事でもアーティストの手助けになっていたのです。ましてや、MDなんて価格の高い記録媒体ともなるともっとそうなります。

だからこういう商品が消えたことを実に残念に思います。

音楽は、公共財なので。

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