余談 経済学と社会学で見るCMの見方はまるで違う

よく社会学ってチラシを集めて50年、100年レベルで保存するとか言いません? それは経済学でも同じなんです。ただし経済学の場合は物価を調べるためなんですよ。でも社会学は違う。そうですよね、世相を調べるためですよね。

じゃあ、実例を紹介します。

1:トヨタ「ハイラックスサーフ」1997年


経済学の場合、4×4の車が250万円程度で買えたのか。そりゃ若者は「そーだ! 海に行くか!(ハイラックスサーフを買って)」という見方をします。そうなんです。車はグローバル商品ですので貧困国にだけ値下げするという事が出来ないのです。逆に富裕国ほど車の値段は驚くほど安くなります。今のハイラックスサーフのレベルの車なら450万円はするでしょう。だから若者の車離れとか大嘘です。だってスマホ本体+通話料金を入れてもアイフォンという高級スマホを使ってもたかが年20万円くらいにしかなりませんから。しかもこのCMの放送年を見てください。1997年の金融危機の時ですよ。山一や拓銀が倒産した暗く、危機的な世相です。そんな時代ですら「そうだ、車買って海にでも行くか!」と言えるくらいには当時の20代は豊かだったということです。バブル期に就職した20代後半だったら、ね。
これが経営学なら「トヨタさんってやっぱダサいですよね。ソーダとそーだ!をかけるCMを全国ネットで放送するなんて」という考えになるでしょう。

社会学の場合は違います。「遊び心が止まらない」というセリフなどに注目します。つまりそんな危機的な時代でも割と余裕があったんだなと。就職氷河期世代という存在は隠したままで。本当の危機的時代は東日本大震災以後でもう刹那的なお笑いか「死」を堂々と見せつけるか「ニッポンスゴイ」と自画自賛することです。でも当時のトヨタは違います。「クルマが未来になっていく」と一瞬だけプリウスの画像を見せるチャレンジャーの側です。つまり、まだこの時代は「チャレンジ精神が生きていた」という世相を証拠物として残すのです。

2:トヨタ「サイノス」1996年

もっと衝撃的なCMをお見せします。なんとクーペだとたったの当時102万円です。下手すると即金で買えます。つまり自動車ローンに頼る必要性すらないし若者でも100万円なら分割で払える金額だったのです。今なら軽自動車で150万円、クーペともなると250万円でしょうか?
では社会学はどう見るか。小室ファミリーを起用するほど自動車産業はたとえエントリーモデルであってもお客を大事にしてたしエントリーモデルを買ってくれるお客様こそ将来の高級車に乗ってくれるお客様だと理解していたという事です。今は違います。永久に軽でしょうね、下手すると。よくても一生中古自動車。つまり客を大事にしてないなと思うのです。

3:1995年 トヨタ「スターレット」

見てください。親が約90万円の車を娘に即金で買って渡してますよ。じゃあ社会学ならどう見るか。「笑い」ですよね。自動車のCMにくすっと笑うCMがもう日本から消えてしまった。もうそのくらい日本に精神的余裕もないのです。

スターレットって文字通り「駆け出し」という意味です。今じゃこの値段だと軽のアルトすら買えないでしょう。スズキ・アルトなんて今や100万円を越えてますしね。札束持って「今すぐ買おう」なんてセリフは出ないです、絶対に。ミラ・イースなら最下位グレードならギリギリこの値段で買えそうです。ちなみにスターレットは軽じゃないですからいろんな意味でここでも日本経済がダメになってる証拠を突きつけられたのです。だってこのCMは1995年放映ですよ。今とは物価が全然違うんですよ?もうすぐ30年前になります。

ちなみに全部トヨタ1社で比較しました。

それがこうなったらダメでしょうね

自画自賛、内輪受けになったらどんな企業でもダメになります。かつての日本の電機産業もそうでした。残念ですが日本人は何一つ反省していないのでしょう。だもんだからトヨタはとうとう世界時価総額からトップ50位内から消えてしまったのです。もちろん主力産業というのは変遷します。じゃ日本に主力新産業なんて生まれているのか? 残念ながらIT企業なんてほとんどが外国製ですよ。OSからして外国製、PCも外国製、アプリも勿論ほとんどが外国製ですもの。

つまり日本はこうやって自画自賛しながら終わっていくのだなと。社会学の視点ですと「ああ、他業界の失敗を何一つ学んでないばかりか自社が過去に流していたCM手法すら失ったんだな」と。だってお客様にとって「トヨタイムス」なんて社外報なんてどうでもいいですもん(「日立ニュース」のように製品も宣伝するのならともかく)。誰が社長になるかなんてお客様にとっては一番どうでもいいのです。いい商品を作ってくれれば誰が社長になろうが関係ない。そんなことよりも新型ヤリスのCMでも流してくださいよ?

出来ないんでしょ?

中国のBYDに敗れるほどもう電気自動車の技術力が無い。そんな事実は天下のトヨタ様は認めたくないから自分の企業城下町である名古屋都市圏のノリでトヨタイムスを全国で流している。

ああ、ダメだなと思ったね。この会社。

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