他にない英語特有の難しさ 似たような西仏伊語から見ると、、、
私自身は、なにか物事を始める時に、難しいなら事前に言って欲しいというタイプなので言いますが、英語はかなり難しい、と言うか、やればやるほど「キリがない」「ゴールがだんだん遠くなっていく」感じがします。もちろん、西仏伊語がメイン、英語は依頼があればサブで仕事をしている状況ですから、もっぱら西仏伊語との比較となりますが、、
なので、多くの人が英語で挫折するとしても、ある意味、自然なことで、少なくとも自分を過度に責める必要はないと考えています。
前回の記事で、さらっと「英語は複雑で難しい」と書いてしまったこともあり、非英語の欧州主要言語を使っている者の目で補足をさせてもらうことにします。
抽象論だとピンとこないと思いますので、3つほど例を挙げますね。
ひとつは、綴り字と音の関係です。もちろん、西仏伊語は、少数の例外を除いて、綴り字と音は一致します。とくにスペイン語、イタリア語は、日本人にとってローマ字読みでOKです。これは、意外と、そして非常に大事なことで、文字のとおり読めば発音できること、覚えている音のとおり書けば正しく書けることを意味しています。フランス語は、多少、独特(とくに発音が)ですが、それでも綴り方と音は原則一致します。
英語は、そうはいかないことは、皆さんもご存じと思います。
実は、このことは読み書きの習得にとても大きな障害になります。たとえば、ナーダ・ピケスリー先生によると、米国のHigt School卒業生の、なんと5人に1人が小学校3年レベルの読み書きしかできない、すなわち読み書き能力に欠けるそうです。
というのも、英語のアルファベット26文字のうち音が1つなのは12文字で、残りの14文字は複数の音を持っています。なかには「o」に至っては異なる8つの音があります。文字に対して複数の読み方があるので、とくに学び始めたばかりの初学者には、負荷があまりに大きすぎて、躓いてしまうと言うのです。
ピケスリー先生は、日本での滞在経験を活かした「ナーダガニ」を開発して、解決に尽くしているのですが、itもmeもtheも読めなかった5年生のスヴェン少年(もちろん「ネイティブ」です)が、英語を読めるようになる姿は感動ものです。彼の文字がわかるようになるワクワク感がジーンと伝わってきます。先生の穏やかで、説得的な語り口とあわせて、TEDの講義動画(英語、日本語字幕付き)をぜひご覧ください。
なお、スヴェン少年は、その後、あっという間に読み書きを身につけ、さらに優秀な高校生として全米で表彰されるまでになります。この記事のテーマから外れますが、「国語」の読み書き能力が、思考力や総合的な学力の形成に深くかかわっていることについても十分に考えさせられます。
さて、「ネイティブ」でもそんな状態ですから、私たち日本人が、単語帳で必死に暗記したにもかかわらず、試験で綴り字を間違えるとか、英文を音読する際に発音を間違えることがあっても、まったく不思議ではありません。かつ、一般に、日本人は他人のミスに対して厳しいと言いますし、緊張していればなおさら、まんまとトラップに引っかかりますから、プレッシャーも最高レベルになります。
そんな英語も、昔は、綴りと音は一致していたのですが、もともと読み書きはごく限られた人たちのものに過ぎませんでしたし、フランス語からの独立と、さらに、印刷技術の普及と、真の原因はいまだに謎が多いですが、急激な音韻変化(Great Vowel Shift)が相まって、さらに、フランス、スペインのようなアカデミーによる厳しい国語の統制がないこともあり、そのまま現代に至ったということが、大方の見解のようです(スミマセン、数世紀にわたる歴史を大幅にはしょっています)。
今回は「綴り字と音」の例について書きました。このほかに、「語彙」の問題と「文法」の問題があります。すでに、長くなってしまったので、次回以降に書きます。
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