Instructionlessと行列推理
わんど100の5番目の記事です。
Intructionlessと行列推理
Instructionless
Instructionlessというのはペンシルパズルを利用した遊びの1つです。
一般的なInstructionlessの問題では、例題とその解答が与えられた状態で唯一解となるルールを求め、
本題に対して、そのルールで唯一解となるような解答を導きます。
InstructionlessGridなどで問題を解くことができます。自分も作問側で参加してます。
行列推理
行列推理(Matrix Reasoning)とは、並んだ図形から法則性を見抜き、空欄マスに入る図形を当てる問題です。
行列推理は、知能モデル研究において、一般能力(g因子)モデルを提唱したCharles Spearmanによって発明され、彼の学生であるJohn C. Ravenが
考案したRaven's Progressive Matricesとして知能検査に取り入れられました。
決められた時間で行列推理の問題を解くコンテストとして、昨年より行列推理BeginnersContest(行BC)が謎垢さんによって毎月開かれています。
自分もテスターとして参加しています。
ペンシルパズルのルールの分類
InstructionlessGrid制作時、生まれたルールについて、いくつかのルールの分類を行いました。
これらは特に分類基準があるわけではなく、主観的なものになります。
バリエーション
魔改造
ルール開拓
モチーフ
新概念
バリエーション
バリアントとも。既存のパズルの変種ルール、大まかな見た目や解き味は元のパズルと似ているもの。
Instructionlessパズルの場合は、解き手の既存のパズルへの知識に依存する。
(例)
黒マスが常にドミノとなるヤジリンなど
魔改造
バリアントの発展型。元のパズル種をベースとしたルールでありながら、見た目や解き味が大きく変わっているもの。(=追加ルールが支配的なもの)
Instructionlessパズルにおいては純粋に解釈が難しい。
(例)
桂馬隣接Snake、HEXシャカシャカ
拙作では逆美術館、シンプルガコなど
ルール開拓
既存のペンシルパズルにおいても一般的なルールや制約の組み合わせで作られた新しいパズル
Instructionlessパズルにおいては制約が足りているかに迷うことも。
(例)
Aqre、チョコバナナなど
モチーフ
既存のテーマや概念をペンシルパズルに落とし込んだルール
モチーフがある分、若干複雑なルールでも受け入れられやすい。
Instructionlessパズルにおいてはルールの細かい部分の扱いなどに気を使う。
(例)
修学旅行の夜、
シリトリング、スノスノーマン、全通寺、いのちの輝きループなど
拙作では焼肉、タージ・マハル(共作)なども該当します。
新概念
いままでペンシルパズルに用いられて来なかった、もしくは非常にマイナーな制約を取り入れたパズル。
Instructionlessとしては難易度が高くなる一方で、既存のパズルへの知識への依存度合いが少なくなる。
(例)
「辺の通り方を決めるパズル」であるワメーバ
ぼんさんにおける「移動(矢印の書込)」
流れるループにおける「風」(モチーフ+新概念)
など
「最初に出たときに新しかったルール」という意味では多数。
例えば「2*2禁止」もぬりかべ(1991)が初出、など。
いくつかのパズルで用いられているペンシルパズルの固有概念についてはルール要素 - ペンシルパズル百科を参照
まとめ
以下のチャートで分類できます。これに加えて、モチーフがあればモチーフ系にも分類されます。(thx by fff氏)
行列推理の閃き方
行BCのような高難易度の行列推理コンテストの法則推理に用いられるやり方は大きく4つに分けることができます。
知識型
手筋型
発想型
直観型
分析型
知識型
知っている法則を適用すれば解ける問題。
知っている変換を適用すれば見知った形に帰着できる問題。
XORやトーラスなど、もはや前提となっているものもありますが、
難易度高めの問題でも、知っているかどうかで差がつく問題はありそうです。
ペンシルパズルのルール分類で言うところのバリアントやルール開拓など
手筋型
知識型より一般的、汎用的な要素を「手筋」として、組み合わせやバリエーションを探すタイプ。
知識型<手筋型<分析型
の順で汎用的かつ探索範囲が多くなる。
発想型
ペンシルパズルのルール分類でいうところの新概念。
過去問が対策にならないようなもの。
作問する時は法則大喜利をするイメージ
直観型
突然見えてくるもの。感覚よりもアブダクションに近いため、「直観型」と命名
知識型の法則をアレンジしたような作り方だが、法則を試すというよりは
ボーッと見てると「これっぽいな」と見えてくるイメージ。
細部のルールを詰めるための微調整が要る
分析型
どのマスがどう変化したかを細かく見て法則を詰めていく。
81マスだが、やっていることはわんど謎なんかに近い。
1000Ovalsもこの系統。
行BCにおいては最終問近くに置かれる3つぐらいの法則が混ざったような問題が分析型とされるが、大抵解くのは困難。
これらは、解き手向けの閃き方の分類で、同じ問題によっても人によって違ってくるものですが、Instructionlessにもそのまま適用できそうです。
Instructionlessと行列推理
ゲームの性質としては、
Instructionlessから初見手筋やパズル知識など、ペンシルパズルに依存するパートを取り除き、ルール推測のみに特化したものが行列推理
と言っても概ね正しい気がします。
Instructionless - ペンシルパズル = 行列推理
ペンシルパズルのルールについての研究をしていたところ、
競技行列推理の文化を一人で進めている謎垢さんから、上記の理由で「行列推理の方が法則という意味では純粋」という話を聞いて納得し、より深く行列推理コンテストに関わることにしました。
まとめ
Instructionlessや、ルールや法則についての考察が好きであれば、行列推理コンテストも楽しめるかもしれません。
次回の行列推理Beginnerコンテストは今週金曜日3/25の21:00より開催されます。
既に解説付きの過去問も7回分ありますので、興味を持った方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
協力: fffさん、謎垢さん