ヤジリンの例題を審査した話
2022年9月25日から10月23日の間で、自身が運営しているサイトであるPuzzle Square JPにて、
サイト上でのルール欄に載る例題を募集する企画を実施しました。
共同管理人で、パズルの解き手、作り手としても活躍するfffさんが審査委員長となり、全問題の審査を担当しました。
パズルスクエアの例題投稿を境に1日の投稿数、解答記録数が平均して1〜2割増しになるなど非常に盛り上がったのですが、
290問もの例題の審査は相当な負担で、次回開催はしばらく先になるかもしれません。
募集の際に、
と記載したのですが、審査の際はさらに細かく言語化する必要があり、
その知見はfffさんが以下のnoteにまとめています。
その中でも、12問投稿されているヤジリンが最も激戦で、
ある日fffさんがヤジリンの審査について頭を抱えていたのを見かけ、
自分の方でも目を通してみることにしました。
この記事はその際にまとめたものを記事化したものです。
(10作品の時にチェックしたものを記事化するにあたって後から応募が増えた2作品を足してます。両方選外だったので構成はさほど変わっていません)
例題が満たす要件の精査
良い例題の定義の記事では、
サイズが小さく難しすぎない
ルール文すべてが説明できている
初級手筋のチュートリアルとなっている
の3点が構成要件として挙げられていました。
これをfffさんの要件とすると、
わんどの例題要件はこうです。
サイズが小さい
ルール文すべてが説明できている
初級手筋のチュートリアルとなっている
fffさんの構成要件から、「難しすぎない」が消えました。
1について、今回は画像サイズ的な制約からも6x6以下が妥当であり、2, 3も優れた例題としての要件だと考えています。
一方で、「難しすぎない」は「難しい問題」は3の「初級手筋のチュートリアルになっている」の時点で弾かれるので条件として不要だと考えました。
チュートリアルとして成立している、ルールや初級手筋から道筋が丁寧に引かれていれば最終的に高度手筋に到達するような問題であっても理論上良いのではないか、
ただし実際には6x6以下でチュートリアルを行おうとすると、初級手筋のみに絞られるのではないか、もし絞られなかったとしてもチュートリアルとして適していれば最初に解かれるパズルとしての役割を果たしているのではないかと考えました。
また、サイズが小さいことは
画像一枚で簡単にパズルの概要がわかる(解き手順を試すことが容易)
スマホ縦画面で例題と解答を横に並べて比較できる
などといったメリットがあるため、こちらもチュートリアル性と並んで重視しました。
ヤジリンにおける例題要件の判定
1のサイズ制約については小サイズで作るのが困難なパズル種ではないため、6x6以下として良さそうです。
これは当時チェックした10種すべてが満たしていましたが、その後応募が来た中で1作7x7のものがありました。
2,3のチェックには使用手筋を見れば良さそうです。
2は必須手筋(ルールの補助として扱うために必要な手筋)について
3は初級手筋(他のヤジリンを解くための補助となる手筋)について
2の必須手筋が全て入りつつ、3の初級手筋がなるべく網羅できている、
さらにより高度な手筋は初級手筋の後に現れるという条件で機械的に判定できそうです。
この判定方法で念のために漏れがないか、fffさんの例題レビューも確認します。
詳細は割愛しますが
「展開が単調すぎる」というコメントがありました。
手筋をたくさん盛り込む方が高評価という単純な判定基準ですが、この基準で高得点のものほど展開が豊富になりそうです。
さらに今回はそこまで細かくしていませんが、
矢印付き数字による1マスの黒マス確定でも
初手で確定する
白マスが置かれたことにより確定する
数字の引き算により確定する
というのをそれぞれ区別した上で手筋の種類が多いものを選ぶと展開の豊富さも手筋で評価できるのではないでしょうか。
また、見た目の美しさ、解き味の気持ちよさについても触れられていました。見た目については一旦考慮に入れず同率だったりした時に初めてみるので良さそう、解き味については、「解き味が気持ち良くない」という違和感は大事にしたいので、違和感があった時に基準を考えることにしましょう。
ヤジリン例題の必須/初級手筋
ヤジリンの基本手筋の確認にはペンシルパズルWikiが参考になります。
[必須] 数字による白マス(線の引かれるマス)の確定
[基本] →0による白マス (0のヒント)
[初級] 矢印の指す方向の黒マスが数字と同数になったため残りのマスがすべて白マスになる (黒マスもうあるの白)
[必須] 数字による黒マス確定
[基本] 1マスの空間が→1で示されており、そのマスに黒マスが1つ入る (1 in 1)
[基本'] 1マスの空間がヒントを跨いで2つある部分が2→で示されており、両方が黒マスになる (2 in 2)
[初級] 連続した3マスの空間が→2で示されており、そのマスに一つ飛ばしで黒マスが2つ入る (2 in 3) (一般にn in 2n+1)
[必須] マスから伸びる方向の確定による線の発生
あるマスが白マスで、上下左右に線が伸ばせる場所が2本ある場合(ヤジリンwikiの線確定)
あるマスに線が1本通っており、上下左右に線が伸ばせる場所が1本ある場合 (線端伸ばし)
[必須] 数字以外の黒マス発生
3方向が塞がっていて線が通っていないマスが黒マスになる(通れずの黒)
ループが完成しているなどで、4方向が塞がっているマスが黒マスになる(通れずの黒)
[必須] 小ループ禁止
小ループ禁止による線延長
小ループ禁止による黒確定
この大分類で5手筋、小分類で10手筋について、
必須手筋: 5つの大分類が全て入っていること
初級手筋: 小分類した10手筋がなるべく多く入っていること
によって判定することとしました。
その他の手筋としてはニコリではウラ手筋とされている(*1)出口の手筋などもありますが、こちらは必須には含めませんでしたが、特に採用対象外ともしませんでした。他の手筋もしっかり入っていてチュートリアルとして優れていれば出口の手筋を用いているものも含めたり、加点しても良いのではないかと考えています。
判定結果
まず、大分類の5つの手筋がすべて入っているものとして、
6x6の5作品+7x7の1作品が残りました。
それらの作品について10個の手筋のうち使われている手筋の種類の数の順に並べると、
9手筋を網羅しているものが1作品、
8手筋を網羅いるものが1作品あったため、それぞれ最優秀、次点として推薦することにしました。
また、fffさんの方でも自分とは別の基準で判定しており、その結果においても最優秀、次点が同じ作品となったため、文句なしで採用となりました。
採用作
次点
採用作のペンギン王者さんの作品、得点には含めていませんでしたが、初手で確定しない、矢印による黒マス確定もありますね。多様性ポイントが高い。見た目も綺麗です。
先に挙げた10手筋の中では、2作品とも「黒マス確定後に矢印の示された残りのマスがすべて白になる」手筋が入っておらず、確かに6x6サイズの盤面でこの手筋を取り入れるのは困難かと思えたのですが、
必須手筋をすべて含んだ5作品のうちの2作、pid:100028, pid:101400 では用いられており、レベルの高さに舌を巻きました。
最後に
この度、例題募集に参加してくださった方ありがとうございました。
今回の募集で定番パズルのほとんどに例題が設定されましたが、
すでに設定されているパズルについても、この記事に書いたような基準で、6x6にこだわらず、チュートリアル的な作品を作ってみるのも面白いかもしれませんね。
その際はぜひハッシュタグ「#チュートリアル」をお使いください。
(*1) オモパ大全集 p.69
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