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英語で話すために一番必要なのは英語力じゃないと思った話。
What is your 'highlight'?
ボランティアで教えている週2回のクラスはたいていこの話題から始まる。
How are you? に続いてこの手の質問を投げかけた当初、生徒さんたちの反応はと言うと"It was… usual." とか "I went to work. " 以上。仕事をしている彼ら、何って仕事だったよ、という答えももちろんわかるんだけど、些細なことをキャッチアップしあえるクラスでありたいと思うし、スモールトークはアメリカで生活していて避けて通れない文化でもあるので少しずつ練習したいなと思ったことから、このルーティンは始まった。
つい先日の授業のこと。いつもは大人しめで、仕事に行った、○時〜○時まで働いた、と決まって報告してくれる生徒さんが嬉しそうな顔でこう答えてくれた。
"I went to the beach today!"
ビーチで何したの?と聞くまでもなく、彼女の方から、〇〇というビーチに行って貝と蟹をとったと教えてくれる。誰と行ったの?など私ともう一人の先生とで質問を投げかけると、そのどれに対しても言葉を探しながら一生懸命説明してくれた。
正直言って、彼女がこんなに多く発話しているのは初めてと言っていいくらいだった。講師として英語を教えていて、素直に嬉しい瞬間だ。
と同時に思う。
人は話したいことがあるだけで、こんなにもいきいきと話せるのだ。
語彙だの文法だの流暢さだのといったいわゆる「英語力」は、「言いたいこと」ことがあってはじめて活きてくる。つまるところ、もっとも重要なのは伝えたいことがあること、伝えたいと思うその気持ちなのだと思う。
事実この彼女も、これを話したいというだけで、自然と今知っている言葉を使ってビーチでの出来事を私たちに教えてくれた。その様子を見て、クラスメートたちも言いたいことを助けてくれたり引き出してくれたりする。コミュニケーションなのだから、相手とのやりとりの中で、お互いが理解していければそれで良いと私は思っている。
もちろん語彙や文法の知識は伝えられることの幅を広げてくれるし、流暢さが増してくるとより会話自体を楽しめるようにはなるわけで、語学学習にとって必要なプロセスであり醍醐味にもなる。だから講師としてはそこを扱うことも、もちろん大切にはしていくつもり。
ただ、見たこともないような得意げな顔で「35個も貝を採ってきた」という彼女をみて、単語や文法を何個教えることよりもパワフルなことがあるのだなと思わずにはいられない出来事だった。