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【図解】台風被害から学ぶ。便利な時代になるほど人は弱化する!?リスクホメオスタシス理論とは。
便利さはハリボテの安心感を生む。安全技術の向上と学習技術の向上は、結果人を弱くする。それがリスクホメオスタシス理論だ。
こんにちは、語学の裏設定のゆうです。台風が去って、人間の弱さをひしひしと感じる今日だからこそ考えたい、リスクホメオスタシス理論を扱います。
なんだか長い名前でとっつきにくい印象がありますが、それもそのはず、安全技術分野の用語だからです。語学ブログ的には見当違いのテーマであるように見えますが、ちゃんと語学と絡めていきます。
筆者は昔、食品科学を専攻しており、食品衛生の授業を受けた時出てきた理論で、語学の勉強にも役立つ考え方だし、今後の防災意識向上にも役立つ考え方だなと思ったので、今日お話することにしました。
ポイントを4つにまとめます。
・技術に守られているから大丈夫という、虚構の安全感のこと
・技術を詳細に知っているわけでもなく、過信してしまう
・同じことが英語学習でも起きている
・リスクホメオスタシスの原理を知り、行動を見直すキッカケにしよう
1.リスクホメオスタシス理論とは
1982年にカナダの交通心理学者ジェラルド・ワイルドが提唱した考え方です。
どれだけ自動車の安全性を高めても、安全性が向上した分だけ、ドライバーは危険を顧みず無茶をする、という理論です。
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安全性が向上した分だけ、かえって人は危険をおかす。
台風を例に上げましょう。
・頑丈な防波堤があるから、海に近づいて動画を撮影しても大丈夫だろう
・一級河川には頑丈な堤防があるから、近くに行って動画撮影をしても大丈夫だろう
守られているから大丈夫という安心感を盾に、危険な行動に出てしまう。結果として、事故に遭うリスクが高まってしまう。
台風19号が直撃している最中、個人により撮影された氾濫の動画や実況動画がたくさんアップロードされていました。
動画の多さは、動画を撮りに川に行っている人の数をそのまま反映しているはずですので、向上した安全性を拠り所にしている人が多いなと思ってしまうのはわたしだけでしょうか?
安全技術、テクノロジーはたしかに年々向上しており、前世紀など比べたら、比べ物にならないほど大きな向上を遂げています。
しかし問題点が2つあります。
[問題点1] 人間自体は強くなっていない
人間の体の強度は太古の時代から変わっていません。22世紀になったら、頭蓋骨の強度が2倍になるなんてことは決して起きませんから、このまま安全技術やテクノロジーが発展を遂げていくと、今日では考えられないような無理をする人が増えていくのではないでしょうか?
[問題点2] 無知を拠り所にするようになる
安全技術に限らず、わたし達が拠り所にしている技術は、果たして使用者自身が十分理解しているものなのでしょうか?
緊急地震速報システム、防衛システム、もっと身近な例を挙げれば、スマホ、Wifi、ドローン、などなど。
たぶん、理解できる範囲を超えているはずです。でもみんな、それらシステムや道具を信頼しているし、手中にあるというだけで過度の安心感、優越性すら感じていることでしょう。
さきほど人間自体は強くないと書きましたが、わたし達の脳は前世紀も今世紀も大した進化を遂げていないのに、わたし達一般人の脳では捉えきれないほど遥か彼方まで進歩した技術に、ほぼ完全な信頼を置いているというのが現状でしょう。
一言で表せば、無知を信頼しきっている状態ではないでしょうか。
どういう原理で動くかは分からない。でも、ほら、スイッチを入れると、こんなスゴイことができる。素晴らしい、わたし達は進化した!
そのような感覚は、まぎれもなく「錯覚」です。それだけでなく、原理を特別知ろうと言う気は起こさず、ただますます便利になったので、知識を増やそうという欲望が起こらない。ゆえに、人間の素の能力は少しずつ減少する。
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こんなことが本当に起きているのか?
1つ例を出したら直感できると思います。
近代装備を剥がした現代の兵士と、原人で、格闘オンリー勝負をさせたら、原人の方が勝つ。
技術に頼った分だけ弱くなることの、良い思考実験だと思います。
ますます「人間」と「技術」の間の距離が広がっているけど、ますます「人間」は「技術」を過信するようになる。
自身が防波堤建設に関わった訳でもないのに、また、防波堤がどのくらい機能するか分からないのに、防波堤を過信して海に近づく。
このような行動の裏には、以上のような心理機構があるのではないでしょうか?
2.英語学習も同じ。装備を剥がせばタダの雑魚
さて、このへんから語学ブログらしくして参ります。
英語学習を支えるツールは、数年前と比べたら格段に便利になりました。それだけに留まらず、英語学習の必要すら消してしまう「ポケトーク」のようなツールまで現れてきています。ポケトークの賛否については以前記事にしましたので、興味のある方は一読してみてください。
ポケトーク、各種アプリの翻訳機能、誰でも使えるオンライン辞書、色々なツールがありますが、仮にそれら全てが使えなくなったとしましょう。
その状態で、どれだけ英会話をすることができるでしょうか?
いつか使おうと記録していた単語リスト・表現リスト。ブックマークしておいたページ。全部使えません。
おそらく手も足も出ない人が多いのだと思います。
装備がある時の英語力と、装備がない時の英語力に差がありすぎる。
このことから、わたし達が日頃どれだけ装備品に頼っているかが分かります。
リスクホメオスタシス理論を当てはめれば、
どれだけ教材の便利さを高めても、便利さが向上した分だけ、学習者はだらしなくなる
と言えませんか?
3.英語学習の罠
道具への過信は慢心を生みます。慢心は怠惰を生みます。結果、努力によってではなく、更に便利な道具で解決をしようとします。
すると、現在の典型的な英語学習はこのように図示できると思います。
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以前「英語という巨大産業」という記事で、「良い教材とは、売れる教材だ」と書きましたが、英語産業はこの辺りをよく熟知しているのだと思います。
英語力が付かないか!→ではこの教材をどうぞ!
しかしそのような教材を使用しても、英会話はできるようになりません。なぜなら、英会話を支えるのは「背景知識」ですから、「背景知識」を抜きにしてしまったら英会話は成立しません。
かといって、
英語力が付かないか!→じゃあ背景知識をつけよう!
というマーケティングは、教材を作る側はあまりしたくありません。なぜなら、背景知識を付けるという根本的な解決をされたら、教材が売れなくなってしまうからです。
だから、「背景知識」の問題は伏せておいて、英語が話せないのは英語力が足りないからだ、という誘導をし、何個教材を買っても英語力が上がらないけどお金だけは払ってくれるという無限ループにわたし達を入れてしまいます。
こんな話をすれば、英語産業が悪者に見えるかもしれませんが、ちょっとまってください。元はと言えば、これは「道具で全てを解決しよう」という私達の心が生んだ構図に他ならないと思うのです。
これは災害でしょうか?
私はそうだと思います。ただし、自然災害ではなく、人災だと思います。
第一章で、
・頑丈な防波堤があるから、海に近づいて動画を撮影しても大丈夫だろう
という文章を見て、バカだなぁと思ったかもしれません。
ならばきっとこれにも同じ反応を示したくなるのではないでしょうか?
・教材が便利だから、もっとラクしても大丈夫だろう
と長々書きましたが、1000年に一度と言われる自然災害を機に、毎日起きている人災について考えてもらえたらなと思い執筆したのが本記事でした。
まとめ
・技術に守られているから大丈夫という、虚構の安全感のこと
→人間の能力は上がっていない。装備を剥がしたら非力。
・技術を詳細に知っているわけでもなく、過信してしまう
→無知を過信し、知ろうとしない。ゆえに、人間の能力は下がる。
・同じことが英語学習でも起きている
→教材が便利になった分だけ、学習者はラクをしたがる
・リスクホメオスタシスの原理を知り、行動を見直すキッカケにしよう
→その性質を利用し、教材マーケティングは行われるが、英語産業は責めれない。私達の心が生んだ問題だから。
このように色々書けましたが、それは私が台風であまり被災しておらず、執筆するだけの余裕があったからに他なりません。
まだ台風の影響で苦しんでいる方が居ます。もし、読者さんの中でそのような方が居ましたら、一日でも早い復興を願っています。
本記事が皆様の糧になったことを祈って、
それではまた!
PS
さきほど本文で登場した、「英語という巨大産業」と「背景知識」に関する記事です。もしよろしかったら、合わせてお読みください。
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