スキルアップとキャリアプラン
スキルという言葉をよく聞くようになりました。「スキルが高い人」とか、「スキルを持っている人」なんていうふうに使うのではないでしょうか。早く走れる人をスキルが高いと言ったり、たくさん食べられる人をスキルも持ってるなんて言うことはありません。どうやら身体的な能力とは別のものを言うようですね。
辞書で調べるとこう出ています。「獲得された技能」。獲得されたというのがミソで、持って生まれたものではなくて、その後の努力によって獲得されたものなんですね。努力や経験によって獲得された技能、これをスキルというようです。
高校や大学の入学試験では「学力」を試されますが、就職試験ではこのスキルが問われるのです。単なる知識だけではなく、それを使って何ができるか、それがスキルだとも言えます。努力や経験によって獲得された「何ができるか」、それを表したものがスキルです。
スキルは、学習と経験によって獲得され蓄積されます。すると私たちは、長く働くとそれだけたくさんのスキルが蓄積され、長年働いてきた人はスキルが高いと思いがちです。それも間違いではありませんが、スキルは経験したその場所でしか通用しない「ローカルスキル」と、どこへ行っても通用する「ポータブルスキル」の2種類あることを知っておきましょう。長年働いて蓄積されるのは、ローカルスキルの方です。ローカルスキルは、とても役に立つ一方で、そこでしか通用しないという欠点があります。ある仕事に精通していても、職場を変わると「ウチにはウチのやり方があるから」と言われればお終いです。使う機械や道具がちがったり、環境や条件が変わると、それまでと同じようには行かなくなるものです。
一方、職場を変わっても通用するようなスキルがあります。その代表格は「資格」です。資格は共通の基準に従ってスキルを評価し認めた証です。どこにでも持ち運んで使えるスキルという意味で、ポータブルスキルと言われています。人生100年時代になり働く時間が長くなって、転職したりしながらステップアップするキャリア形成も普通になってきました。このような今の社会では、どこでも通用するポータブルスキルが重要視されるのです。
もし色々な事情で前の仕事を辞めざるを得なくなったりしたとき、不運だと嘆くのか、それともチャンスだと前向きに捉えるのか、それは人それぞれです。チャンスと捉える人は、それはスキルアップのチャンスだと考えるからです。働いているとローカルスキルを得るためには一生懸命になりますが、今の仕事とは直接は関係のないスキルや、将来役立つかもしれないスキルの習得のためには時間を取れないのが現実です。次の就職までのインターバルは、新たなスキル、それもポータブルスキルである資格を取得する絶好のチャンスなのです。
このように考えると、再就職というのはスキルアップをする充電期間としてとても重要な時間だとみることができます。雇用保険をもらって少しのんびりしたいと考える方もいるとかと思いますが、もしかするとそれはもったいないことかもしれません。これまでじっくり取り組めなかったスキルアップのために使える時間が手に入ったのだと考えるようにしましょう。
もちろんスキルアップは今の仕事を続けながらでも可能です。今の仕事に役立つ資格を取ったり、将来やりたいことを実現するための転職に向けての準備だったり、働きながらでも学び続けることがとても大事です。
スキルアップのために利用できる制度には、「公的職業訓練(ハロートレーニング)」や「教育訓練」などがあります。これらの制度は、訓練の受講費用が無料だったり、かかった費用の一部が戻ってきたり、さらには生活のために給付金をもらいながら学べる支援制度もあります。(支援制度の利用には一定の要件があります。)
こういった制度を上手に利用しながら、将来を見据えて計画的にスキルアップを図るためには、誰もが自分のキャリアプランを考えてみることが必要です。そのためにとても役に立つものが二つあります。それは、「ジョブ・カード」と「キャリアコンサルティング」です。ジョブ・カードは国が定めた様式の呼び名で、私たちのキャリアを「見える化する」ツールで、手書きでもエクセルでも作ることができます。キャリアコンサルティングは、資格を持った専門家によって1対1で行う、キャリアプランを考えたりそれを実現させるための支援のことです。
みなさんが使える制度は、みなさんが思ってる以上にたくさんあります。専門家(キャリアコンサルタント)の支援を上手に活用しながら(キャリアコンサルティング)、あなたらしいキャリアを歩んでいきましょう。
・・・04/08/24・・・