「一分間の絵」
いよいよ服を形にする時、今思うと初めの3作を作る時もそうでしたが、そもそも縫製技術などが全くないからこそ、「一分間の絵」のように、思考を外し、できるだけ直感的に、閃きを大切に作っていこうと思いました。
よくよく計画的に作られたものでは太刀打ちできないので。
「一分間の絵」というのはどういうものかというと、もう28年の付き合いになる画家・野村昌司さんが、文字通り1分間で絵を書くことにより、思考が外れ、物事を直感的に、大局的に捉えることができるようになる、と、提唱され、既にご自身、また、ご自身の絵画教室で実験的にしておられたのを、2013年、ラ・ネージュで「1分間で絵を描こう」というタイトルで、このような形で月1回、約1年開催して来たワークショップで描かれた1分間で描く絵のことです。
このように、対象物を置いて(無機物、花や野菜のような生物と無機物の組み合わせ、そこにいる人物など)、それを、キッチンタイマーできっかり1分測って描く、を、1時間の間、繰り返します。1枚1枚にサインと日付を入れます。
1時間、↑な形で対象物を変え、描き続けた後、好みで、時間内(30分程度)に、着けたいものだけに好みの画材で色を付けます。
そして、こんな風に、一人一人、その日に描いたものを並べてお互いに講評?し合います。(貶したりはしません。)
その後、タイトル写真や下の写真のように、その中で自分が気に入ったものをこの3種類の安いA4の額に入れてみて写真を撮ったりして、みんなで悦に入り、
お茶を飲んで感想など語り合いながら談笑して終わります。
その効用はこのようなもので、その後、ラ・ネージュでの野村さんの展覧会の中、ワークショップ的に開催した時もそうだったのですが、
印象的なのは、特に、入学に向け、また、その後授業でも繰り返し繰り返しデッサンを訓練されたような芸術大学出身でその専門に関連する仕事されている方が、意外と初めは大変戸惑われ、約1時間の間、1分でタイムオーバーで描くことを繰り返され、最後に制限時間内で納得いくものが描けた時、ほぼ決まって、「ただ絵を描くことが好きだった子どもの頃の感覚をようやく取り戻せた!」ということをおっしゃって、時に涙を流されることでした。
苦行は時に、いや、往往にして、テクニックと引き換えに、根源的な喜びを奪い去ってしまうようです。
いくつか当時描いたもので、すぐ写真が出て来たものを並べてこの項は終わりにします。
一分間で、何を描いて、何を描かないか、なんかもなかなか面白いのですよ。