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ラ・ネージュの展覧会/茶会とは

はじめに
『人生に必要なものはすべて幼稚園の砂場で学んだ』という本がありますが、毎回展覧会ではその時々にここに集まる作品達から学ぶべきことが多く、私の場合、いつも最新の展覧会の展示を終える度、「今回が最高!!」と、思うのですが、今回は特に、人知れず、『ご自愛ください』という、やおら巻き紙に筆でタイトルをたくさん書いてから早7年、の、自分の著作に来年2月27日製本完成!という締め切りを書き、文章の締め切りとしてはこの12月5日を設定し、3日からしか取りかかれなかった為、3日の午前中にとりあえず100、タイトルだけを書き出し、本来は、それまでに書き溜めていたものも使うかも知れないつもりで、でも、100、1タイトルA4一ページの文章を、結果的に色々ありながら5日には間に合わせることができず、11日、つまり8日間で書き上げつつ、やっぱり「あとがき」の後に、何編か、そのさらに「まとめ」的なものを数タイトル書きたいと思う中、頭の中で色々考えていたところなので、余計にこの展覧会に感じることが多く、他の方には全くピンと来ないと思うかも知れない、本来は、自分の為の覚書のようなことを、ここに書かせてもらいたいと思います。

展覧会は、案内状作成の為の取材の時から始まっている
今回の展覧会は、2021日12月15日に初日を迎えた『NOSTALGIA』。基本的に、碧亜希子さんのモザイクの展覧会の展覧会なのですが、今回は、昨2020年11月の野村昌司さんの展覧会に碧さんがZoomで見に来られ*、その時に野村さんの『dancing』という作品をいたく気に入られ、12月の碧さんの展覧会に、野村さんがその作品を持って来られ…  その辺りの経緯や、今回に繋がる諸々がここに表れているので、案内状の画像をアップしてみますと…

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この案内画像の左上の2枚の写真のように、ブルーとオレンジの野村さんの絵画作品が、碧さんのモザイクの展覧会場に図った訳ではないのに自然に溶け合い、特に2番目の"dancing"とその隣の作品は、たまたまついていた値段が同じだったこともあり、物々交換となり、それぞれ碧さんのアトリエに、そして、野村さんのお宅に飾られています。
私はいつも、案内状に使う写真を撮りに行く目的もあり、展覧会の前には必ず作家さんのアトリエを訪ねることにしているのですが、今回は、その、昨年12月の碧さんの個展"AO2020"の最終日に、次回の碧さんの展覧会の時に、「こんなに自然に作品同士が呼応するなら、一部コラボしてみましょう!」という流れになり、碧さんが、2枚の作品を、「これに手を加えて来てください」と宿題のように渡され、ここでそういう形の展覧会は初めての試みなのでどういう形で野村さんが参加するのかの打ち合わせの必要もあり、2021年10月26日に、野村さんは訪問先の長野から、私は京都から、碧さんの愛知県にあるアトリエで集合し、打ち合わせをした時のアトリエの様子と、その時取材した作りかけの作品、久しぶりに出してみようかな、と、おっしゃっていた作品達の写真が他の紙面にコラージュされています。

一般的に、ギャラリーの展覧会の案内状にはその展覧会で展示される完成した作品の美しい作品が使われていることが多いのですが、それもいいけれど、私は、「途中経過」や「現場」がとても好きなのです。
作家さんのお住まいがどんなに遠くても、展覧会前に必ず進捗状況を見に行くと言うと、「すごい!丁寧ですね!」とか「偉いですね!」と、言われるのですが、いえいえ、全然そんなんじゃなくて、ほんと、さっき言った、「「出て来るものの生まれ出づるところ」を見たいだけ。」なのです。
そして、自分自身が、「はい、できました。」を「おお〜、凄いですね〜。」と、見るだけでなく、「あの時、こんな感じだったものがどんなに仕上がって来るんだろう〜。」と、期待を膨らませて搬入の日に梱包を解いて出て来た完成品を見たい。だから、私以外の見る人(の中)にもそういう人もいるだろう。けれど、制作現場に色々な人をゾロゾロ連れて行くわけにもいかない。でも、私は主催者特権で行くことができる、ならば、それを伝えたい。伝える為もあるけど80%は自分の嗜好、20%が私の「ジャーナリスト根性」でやっているのだと思います。
そんな訳で、うちの案内状は、いつもそんな感じの途中経過です。
そして、今回、この紙面で、左上の方に写っておられるのがモザイク作家の碧さん、左下の方に写っておられるのが画家の野村さんです。
碧さんは、完成写真を中央に載せている、今回の表題作『NOSTALGIA』の制作途中を見せておられます。その右には、今回久しぶりに出してみようかと思われた蔵出し作品が三点。右回りにアトリエの様子、碧さんがモザイクを修行されたギリシャの修道院をイメージした陶器(にモルタルを塗って、モザイクも施し仕上げた作品)をベースにした作品がモルタルを塗る前に焼きあがった状態が並び、野村さんが持っている壺は、その時試しにモルタルを塗ってから碧さんが着色したものを、仕上げて来てください、と、渡されるの図、です。
全ての写真の答えが展覧会にある体となっています。

いざ、クイックツアーへ
さて、では、展覧会場の様子を見てみましょう。
クイックツアーです。
まず、こちらは入り口です。以前は下に「入場料500円(高校生以下無料)、どなたでも入れます。」とか書いていたのですが、まぁ。興味を持って、よく読んでもらえたら全部案内状に書いているのでやめました。

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右側のドアを開けた正面に見えるのが、今回の主役、碧亜希子さんが初めてここラ・ネージュで展覧会をされた際に雪をイメージして作られたモザイク作品"La Neige"の習作が目に飛び込んで来ます。

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その右側の壁を見ると、そこには今回友情出店される野村昌司さんの最新作、かつ、初めて富士を描かれた"Out of the Blue"があります。

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左手下に広がる半地下になった1階の常設展示スペースには、今回、中央に おまりさんの平面作品、右側に宮木康さんの漆芸、左奥に江崎たんぽぽさんの平面、左手前に河野滋子さんの立体作品をフィーチャーしており、色々な方から繋ぐことを託されたチラシや冊子類が置いてあります。

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碧さんの"La Neige"を見て左手上に続く階段を登り切ったところでは、碧さんのこちらの作品が皆様をお迎えします。

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そして、ここからが、多分、もし今他所もされていたとしてもラ・ネージュ独自に昨年コロナの時代になって開発した、作家さんのZoom在場。ここにリアルにおられない時にはアトリエからZoomで在廊してもらいます。
それにより、リアル在廊とは違い、私が大好きな制作風景を、アトリエにいかずして、ご来場の(Zoomであれ、リアルであれ)皆様にもシェアすることができるようになりました。これは画期的なことだと思います。(自画自賛(笑))

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まず、サクッとツアーさせていただきますと、こちらが入り口入ってすぐの、芳名帳を置いている壁となります。最初の順路です。
今回ここが、碧さん、野村さん、それぞれの作品のコラボ面となっております。
呼応していることを感じていただけると思います。
また、今回、野村さんが碧さんの個展への友情出展に際し、2点とも奏墨(墨絵)を選ばれたのも、入り口右手に野村さんのもう一つの顔である油彩の作品を展示した理由です。(野村さんの過去作品は多数1階常設展で見ることができます。)

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それに続くのは、コラボ作品面です。
『AO2020』で野村さんが預かられた作品は、1年の時を経て、この右側の壁に展示された"Blue Snow"と"Green Snow"となりました。
案内状の写真のように10月26日に託されたMonastryの習作は、この左右の端にあるような姿となりました。

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こちらは先程の続き、入って正面に見える壁。最新作の地衣類をイメージしたモザイク等が並びます。
そして、お客様がおられない時には、碧さんの愛犬まろちゃんを碧さんの代わりに映し出し、碧さんは制作に励まれ、私は癒されています。
こちらもお客様がおられない時には音声をミュートに、カメラもオフにしてリラックスするという技を体得しました。

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その左手、北側の壁、右側のピアノの上には、このような作品達が。
中央の足のある作品が、常設のおりんとマッチしています。

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吹き抜けになっている北川の、大きな窓のある正面の壁にはこのように、緻密な過去の作品と、最新の作品が何の違和感もなく並んでいます。
平面作品と、立体感の間にも何の違和感もありません。

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最後の壁は、ギリシャで修行した頃の伝統的な漆喰を使った間接技法*と、最近の碧さんの、建築や舗道の一部にならなければ、凸凹していたっていいじゃないか!の直接技法の作品達が調和しながら並んでいます。立体が色と形を添えています。

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クイックツアー中に、少し触れましたが、北側正面は、このようになっています。
ちょうど開場の時間帯には晴れていると、このように、うっすら虹のような光が見えます。

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Zoomを使うことにより、より明確化したラ・ネージュの(展覧会の)特性
今一度、同時代の茶室、ラ・ネージュの目指すところを書いた、画像を見てみましょう。

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↑これです、これ。ラ・ネージュでは誰しも「無責任な野次馬」ではいられないのです。何人も責任ある「"場"の構成員」なのです。
お茶会のお客さんです。
だから、Zoom参加も、リアル参加も全く同じ、だけど、やり出して気付いたんですけど、リアル参加はお一人お一人のペースでものを備に見てもらえるし、アートに囲まれた場所でお茶を飲みながら歓談できるというメリットがある。
けれど、Zoom参加の場合は、スマホやタブレットで参加された場合、状況によってはそこの空気をラ・ネージュに吹き込んでもらうことができるのです。
そして、それを、他のZoomの参加者は勿論、先程のまろちゃんのポジションに映すことにより、会場におられる方にもシェアすることができます。
例えば↓は昨日、仁和寺さんからお越し下さった方がおられましたので、無理を言ってスマホで入っていただきましたところ、ラ・ネージュに宇多野の風が吹きました。そして、ここで展示している作品の他、碧さんは今は稲沢にある、昨年ラ・ネージュで展示した作品も展示することができたわけです。

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このモットーは、設立当初からあり、この当時、ハガキをスキャンして、この大きさまで縮めないとネットにアップできなかったホームページ上から取った画像ですが、2000年に久しぶりに、コンサートシリーズを始める時に、改めて"La Neige Concert Series for Mutual Communication"と名付けました。

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これではよく読めないし…と、思ったら、1階の過去資料に現物があるかもと思い💡、見てみたら、ありました。そして、写真を撮ってみました!

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ブレていません。
うわぁ〜、今回、碧さんの展覧会のテーマが『NOSTALGIA』なんですが、図らずも、私のノスタルジアみたいになって来ました。

話を戻して…だから、昨年時々おられましたけど、Zoomで、というより、オンラインの展覧会だからと匿名的に来て、一方的に覗いて行こうとされる方は、NGなのです。っていうか、そもそも、そういう方は、ギョッとしてすぐ退出されますが。
実際にここに来るお客様は顔出しがないなんてあり得ないわけですし、ここにリアルで来るのと全く同じこと。そして、初めは苦肉の策で他を思いつかず、Zoomで始めたのが、図らずも双方向性があり、ただ見せるだけを目的としていない、ここ、ラ・ネージュにとってはピッタリのツールだったのです。

今回、この誌面では、クイックツアーのみさせていただきましたが、実際にはその時のリアル、また、Zoom会場の様子にもよりますが、殆どの場合、懇切丁寧なパーソナルツアーとなります。
例えばこの「寄り」などは、iPadでのズームアップならではだと思います。
まず、窓のある北正面の3作品(中央、右、左の順に。)。

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そして、地衣類の左側と右側。

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このようには肉眼では見ることができません。
これらの画像は、Zoom参加者のみならず、プロジェクター投影で、また、それでは飽き足らない人には3台あるiPad画像でリアル参加者にもシェアされるわけです。

会議用で、箱の中に人の顔ばかり映るZoomで、インカメラしかないパソコンではなく、アウトカメラもあるスマホ、タブレットを使うことによる、革命で、それは、コロナ禍の緊急事態宣言により、どうしても開催したい予定している展覧会や演奏会が目白押しだけど、観客を入れられない!どうしたら中止せずにできるのかを考えた苦肉の策から生まれました。

愛するアーティストの人達の愛する作品の晴れの場。ここで「今」しかできない一期一会の企画。を、どうしても開催したい!の想いは、このやり方を私に授けてくれました。

テクノロジーと、濃密なコミュニケーションの融合。

草葉の陰から喜んでくれている人もいるんじゃないかなぁと思っています。

テクノロジーは使っているけど、とっても濃密な、私も誰が来るか選べない、選ばない、天が亭主のお茶会に、来たい方は是非。

アーティストがギリシャ語話せるからギリシャ語でもいいよ、って誘ってるギリシャ人の友達が、碧さんがモザイク修行をした、碧さんの作品の一部の材料である石の産地でもあるギリシャの風景を見せてくれるかもしれません。


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