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【都市計画学生が見るバンコク①】地域の人が育てる3種類のみどり

Sawadeekha!Beckです。
都市について勉強する学生の視点で見たバンコクのまちの様子を記録したいと思います。

本日は、私をバンコクに引き付けた大きな要因である、ローカルの人々により守られ、育てられる「まちなかのみどり」について綴っていきます。


【前提】バンコクにおける緑地の捉えられ方


大学の授業でも、友人たちも口をそろえて言います。
「バンコクは、みどりが少ない」と。

実際、バンコクの1人当たりの緑地は1.47㎡/人。WHOによる推奨面積は9㎡なので、その6分の1しかないようです。

Bangkok’s green space is relatively low compared to its population. According to the BMA (2023), the city has a green area ratio of 1.47 sqm per capita, far less than 9 sqm per capita – the minimum recommended by the World Health Organization (WHO).

JLL.The green way forward: expanding Bangkok's pocket parks

ちなみに東京都の1人あたりの公園面積は5.74㎡で、東京もWHOの基準には到達していないです。

都内の公園は12,110ヵ所、約8,076ヘクタール(令和5年4月1日現在)で、都民1人当たり約5.74㎡になります。

東京都建設局.東京都の公園


でも、これはあくまでも上から見た平面的な面積としてどのくらい緑があるか、ということを測る指標であり、立面的な見え方、私たちの歩く時の視点は考慮されていません。

もちろん、緑地の面積はとても大事な指標(グリーンインフラの雨水マネジメント的な視点、ヒートアイランド緩和の話とか)ですが、立面として表れるみどりにも価値(ウェルビーイング、微気候調整)があります。

そして、バンコクではそのアイレベルの緑量が半端ではないです
ものすごいんです。

しかも、行政やデベロッパーによるものではなく、個人が自由に育てているものがたくさん!


今回の記事では、バンコクのまちなかを歩くたびに、見かけてうれしくなり引き付けられるみどりを3パターンに分けて紹介します。


①公と私の隙間を埋めるみどり

バンコクの人々は少しの隙間でもあれば植木鉢をおいて、プライベートとパブリックの間に生まれる空間・公と私がつながる場所をみどりで埋めているように感じます。

ショップハウスの庇の下、路地裏の空間、道路に置かれたベンチの上…。
大学院の授業で低所得者の方の多いコミュニティにも行きましたが、どこに行っても大切に手入れされている植木鉢がたくさん。

コミュニティで話を聞いてみると「食べれるものを植えているんだよ」と聞きましたが、それにしてもどこにもかしこにもありすぎる気がします。

Urban Theoriesの講義で、先生はいつも、
「都市は、くらし(経済活動、文化など)と場所との関係の変化のプロセスの中で形作られている」
と言います。

私は、バンコクという都市に表れている、このみどりの形は、この温暖な気候に生きる人々のくらし方に基づいているのでは…と思っていて、修論ではこれをテーマに研究を進めていく予定です。

Ratchadaphisek駅の近く。軒下の植木鉢


断面で理解してみる。英語力は目をつむってくださいね


Thonburi(前の王朝の時の中心地)のポルトガル人居住区の路地
Talat Noiコミュニティ


②公共インフラを侵食するみどり

公共インフラである、道路や水路の上に滲み出すのではなく、もはやそれらを侵食するようなみどりも見かけられます。
どこもかしこも歩道も水路の上もみどり、もはやジャングルみたいになっています。既存のインフラがみどりの軸に転換しています…。

Yawarat近くの歩道。ジャングル!
断面スケッチ
Thonburiの華僑の地区の中の水路、と記憶しています

教授に「行政が撤去する可能性はないのか」と聞いたところ、
「水路の上に植木鉢がおかれたところで、きれいだし、誰かが迷惑をこうむるわけじゃないんだから、多分それはないな」
とのこと。

日本はその逆ですよね。
日本で景観の仕事をしていた時、
人々の賑わいが公道ににじみだすことが求められてはいるけど、
少しでもお店のワゴンや植木鉢、看板が公道にはみ出しているのは許されない印象を受けました。

確かに、歩道がふさがれたら通行人に危険があるかもしれないけど、
でもそれが放置自転車やごみじゃなくて、まちに利益をもたらすものなら、もっと日本も寛容になっていいのかもしれないと、私は思います。

これから、どんどんまちが縮小していく日本において、
いつまでも線引きを重視せずに、タイのように寛容な心を持ってもいいのかも。人類が減ることでできた隙間に緑が戻ってきて、それがまた、人の生活を潤すかもしれないし。


ちなみに、
私が忘れられない公共インフラを侵食するバンコクの景色は、5年前に住んでいたアパートの屋上から見たこの景色。
植木鉢ではないけど、水路沿い生えている民地の樹木がスペースの空いている水路の上に枝を広げていっていて、水路が緑の軸になり、見えなくなるまでまちなかに進んでいっていることがたまらなく魅力的な景色でした。

DIn Daengのとある水路


③信仰心とみどり

最後に紹介したいみどりは、信仰心と関係しているみどりです。

まずはタイに一度来たことがある方なら見たことがあるであろうこの祠。

Lat Praoで見かけた祠。しまうまがたくさん
Jim Thompson Museumの祠

Phra Phrom Shrineといい、家を建てるときに土地の神様に祈りをささげて建てられるものだそうで、これが「植物とセット」に大切にされている場所がある、印象を受けます。

この祠について、わたしはとっても気になっていて、本や論文で調べてみたり、先生に聞いてみました。
(たぶんほとんどの情報がタイ語でしかヒットしないのかもです)

今私がわかっていることはこれだけ。

  • 仏教とはまた違う

  • 建てられる場所は風水によって決まる

  • 日本の祠と違って、台座が目線より高くなっている

  • 建物が更新されても残っている(再開発で建てられたモールの敷地内にもある)


あとは、日本のご神木に近い印象を受けていますが、こんな風に、しめ縄のようなリボンのようなものがまかれた大樹も気になっています。
これに関しては、名前すらわかりません。

タイのご神木?

経済成長して開発が繰り広げられるバンコクですが、まちなかでは、信仰心と絡み合ったみどりがビルの合間や残っているコミュニティの中で見られます。バンコクの伝統的な緑を探るうえでヒントになりそう。

(バンコクにあるお寺の多くは敷地は広くても、お庭がない印象を受けています。まだちゃんと調べてない。)




以上、わたしが気になっている、バンコクのまちなかのみどりに関するレポートでした。

Beck





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beck
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