サスティナビリティ、CSV、ESGの定義の曖昧さ
こんな記事があったので...
環境もそうですが、何かと言えば「投資リターン」を求めてくる経営トップ(中間管理職にもいますが)や投資家がいることが、日本企業の「ESGには熱心だが、現実の経営戦略としては機能していない」理由のように思います。
人的資本に関しては、EU的CSRの文脈からすれば、人への投資は投資した企業へのリターンではなく、社会全体の課題が解決することでの間接的なリターンなはずであり、一般的な意味での人への投資も、本来は「育てる」ことと「継承」が目的のはず。回収という概念は馴染まないと思います。
それ以上に、そもそも人への投資を怠ったからの失われた30年であり、今からやる人的資源は、その負債の返済から始まるのでは?という疑問が沸きます。
投資もせず、修繕費も出さずに、「まだまだ使える」と言って現場の実態を見ず、または投資できる利益を稼がず、経費だけを削減して見せかけの利益を作り、修繕すらしないと、いつかは頑丈そうな橋も僅かな地震で崩落する。そこの解決もなしに「人的資源」と言われても違和感があるのは当然。
こうなるのは、使っているワードの定義の曖昧さ。それが混乱を招いているように思います。
「CSV、サスティナビリティなど色々な言葉があってややこしいから統一できないか」という議論がたまにあるようですが、その時点で理解が浅く、議論できるベースすら作れていない気がします。
サスティナビリティは、「Our Common Future」で「現在の世代のニーズを満たしつつ、将来の世代がそのニーズを満たす能力を損なわない開発」とされたのが始まりとされていますが、日本語では「持続可能性」というワードでそんなに間違っていない気がします。突きつけられているのは「社会や自然の持続可能性がなくて、企業が長期に生き残れるの?」なので、儲かる儲からない以前の生存条件のはず。
CSVはCreating Shared Valueの略で、社会の課題を解決することで収益も上げるという経営戦略。当然、収益性を問われます。または、競争戦略として、競争ステージそのものを変えることで他社が入ってこれない(または追いつけない)ブルーオーシャン戦略のはず(その場合は非常に大きな投資が必要、且つ回収は長期的になります)。
ESGは、もともと金融系から来たものであって、投資判断であり、「投資家が企業に突きつけるもの」。豪州子会社の人が昔「のど元にナイフを突きつけつつ、握手を求めてくる類のもの」と言っていましたが、まさにそれ。
現在の「人的資源」は、明らかにESGからきていて、要は「投資家から言われちゃってるんだよね」の世界。だから、人的資源でROIを持ち出す人が現れてしまう。
もう少し、社内でワードの整理からやり直す必要がある企業が多いように思います。