明るい明日に向かうためのチャンスの年
昨年は、日本では自然資本に大きなスポットが当たった年でしたが、ヨーロッパでは厳しい環境規制に逆風が見えてきた年であり、アメリカでは完全に反ESGが定着した年だったように思います。
今年は、これらの動きが、更に大きなパラダイスシフトにつながるかも知れません。
私は、環境の世界では、自主的な取り組みのレジームと、規制により解決を目指すレジームが交互に循環していると考えています。
最初はモントリオール議定書。これによりフロン規制とオゾン問題が解決した成功体験から、条約で解決を目指す機運が高まり、京都議定書に繋がりました。
しかし、それが2期目に破綻して、今度は自主規制に活路を求め、これによりパリ協定が成立しました。SDGsはこれらと一体の動きであり、ESGも同じレジームの中で主流化しました。
ところが、それでは生温い、遅すぎるとの声が強まりISSBが現れ、EUでEUDRやCSRDが成立します。ところが、昨年、これらの厳しい規制に対する強い拒否反応が表面化し、混沌が生まれ始めています。
流れはまた、自社的なレジームに向かうのでしょうか?
ESGにも厳しい視線が向けられると想像しています。従来、投資家が企業に迫るものがESGだった訳ですが、今は「果たして大きな負担のあるESGで問題は解決したのか?」「投資家のステークホルダー以外に対する副作用に投資家の責任はないのか?」「そもそもESGは本当に企業と資金の出し手の長期的な収益に貢献できるのか?」の声が更に強まると予想しています。投資家にも、企業に求めたこと、投資したことへの責任が問われる時代が来ると思います。
とは言え、これをマイナスだと受け止める必要はありません。目標が達成に近付けば、答え合わせと次の課題が突きつけられるのは当然であり、時代が変われば正しいとされることの定義は変わるのです。重要なことは、何事にも負の側面があることを理解し、影響を受ける人々のことを考えて判断し行動することです。バランス感覚を取り戻し、トレードオフを解消し、ランドスケープアプローチを実践するためには、中庸の重要さを認識することも大切です。今年は、これらを冷静に深く考えることのできる環境が整ったのだ、と捉えるべきです。
だからこそ、理屈のための理屈ではなく、手触り感を持って考えることが大切です。明るい明日に向かうためのチャンスの年にできる可能性があるはずですし、そうしたいですね。
(写真は、年末に行った宮古島の日の出です)