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多様な価値とCOP16

COP16が、遂に10月21日からはじまります。
ここ1週間で、Nature Positive Initiative から「自然の状態に関する指標(State of Nature Metrics)」の提案があり、WWFからは「LIVING PLANET REPORT 2024」が公表されたのも、すべてCOP16の開催に合わせたものでしょう。

・自然の状態に関する指標

・LIVING PLANET REPORT 2024

COP16のテーマは「自然との平和」。
ノーベル平和賞に日本被団協が選ばれたことも、このテーマの重要性を再認識させてくれました。

COP16では多くの議論がされると思います。主な内容は以下で確認できます。

COIP16オフィシャルサイト
https://www.cbd.int/conferences/2024

大きなテーマは多分次の3つだと考えています。

・遺伝資源のデジタル配列情報の使用から得られる利益を公正かつ公平に分配するための多国間メカニズム
・ネイチャーポジティブを目指す上での先住民族と地域社会が果たす重要な役割
・生物多様性の保全と持続可能な利用のための資源動員のための金融の役割

このうち、「自然資本と金融」は別にして、日本では「遺伝資源」と「先住民」のテーマはわかりにくいものかもしれません。しかし、非常に重大です。

例えば、ある国の土の中に画期的な薬品を作ることのできる微生物が潜んでいるとします。この場合、別の国の人が勝手にその国の土を持ち帰り、微生物を見つけて薬を作る、ということは、生物多様性条約違反となります。なぜなら、その微生物の遺伝情報は、それがいた国の所有物だから。これが「遺伝資源」の考え方です。
問題は、その情報がデジタル化され、ビッグデータとして利用可能となり、且つ、AIによってその情報から新しい薬品のアイデアを生み出すことが可能となってきていること。
土をもって帰らなくても、今は遺伝子解析された情報はインターネットで自由に手に入り、しかもそれがどの国の所有物かを意識することなく遺伝資源を活用できるようになる。これをどうするか。

また、例えば何らかの生物多様性のクレジットを作る際に、ある一定の場所を囲い込んで保全する必要性がありますが、実はそこには先住民がいる、といった問題が「先住民」のテーマの一部です。

これ、いずれも、幼稚園児が勝手に友達のおもちゃを使い始めて、親や先生に「ダメ」と言われているのと同じことなんですよね。
ところが、これが大人の世界になり、何かを最優先だと規定してしまうと、色々理屈をつけて無罪放免になる。ここが問われていると思います。

「価値」は人が決めるものです。だからこそ、価値は多様です。
ある人にとってはどうでも良いものも、別の人にとっては大切なものであることが多々あります。しかし、現実世界で何が緊急問題か、と言う議論中をする中では、(例えば、GHG削減が最優先、薬を待っている人に薬を提供することが最優先で、それ以外のことは我慢してもらって当然、と言った)優先度が低い「価値」は無視されてしまうのです。
「原理主義」は、原理にあわないものに価値を認めない。そこが恐ろしいのです。
先住民の問題でも、公平な移行でも、様々な価値があり、自分には意味がなくても、別の人にとっては重要なことかもしれない、という「ごく普通の認識」を取り戻す必要があります。
COP16の「自然との平和」の議論の中で、価値の多様性を再認識できることを期待します。



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