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国土を切り売りしそうになっていると疑われているスリランカ

スリランカの水事情についての記事がスリランカの新聞DailyMirrarに載っていました。
記事の内容自体は深刻です。もしかしたら、公共財を国民の意見を聞かずに売却しようとしていたのかも、という内容です。
簡単に和訳したので添付します。

スリランカ政府が大規模な水資源政策案を閣議決定までしたにも拘わらず議会に提示しなかったのですが、問題はその理由。
水資源政策と言いつつ、もしかしたら水資源管理の権利を民間に売るつもりだったのではないか?それが明るみに出ると、大統領選に影響を与えるために、一時的に取り下げたのではないか?
という記事です。

スリランカは、基本的には水資源の豊かな国です。
実際、農園は山岳地域にありますが、それらの山の中には地面に空いた無数の小さな穴から水が湧き出して道路を湿らせている。そんな場所すらあります。
しかし、ある紅茶農園のマネージャーから聞いた話では、イギリスが植民地時代に作った水道管があるのですが、その口径がどう見ても大きすぎると。流量が口径に見合わない。そこに現在流れている流量から推測すると、100年前には今の3倍程度の水がスリランカの河川に流れ込んでいたのではないか、ということでした。

実際、この10年ほどで乾季に雨が降らない状況は、かなり深刻になってきています。4~5か月程度、まったく降らない時もあるとのことで、先日ご紹介したNuwan博士とMahendora農園マネージャの論文のように、雑草を管理することで、地中の水分量を保全する活動も行われています。

スリランカは、気候変動の影響を大きく受けています。
キリン在職時代、農園内のマイクロ・ウォーターシェッドを保全する活動を始めたのですが、これはそもそもは危機感を抱いた農園マネージャー達が始めた取り組みでした。
日経新聞では、経済危機によって必要な肥料が買えないことで、スリランカの茶葉生産が低迷しているとのことで、政府としては経済問題は大きな課題だと捉えていることはわかります。

しかし、良く知られているように、スリランカが借金を返せないために、ハンバントタ港を99年間にわたり中国国有企業に借款した事実は、多くのスリランカ人の自尊心を傷つけたのは事実でしょう。

そういう中で、このような話が出てくるのは、政権には大きな汚点となり得ます。

ちなみに、日本でも一時、水道の民営化の話が盛り上がっていましたが、今は殆ど聞きません。やはり、インフラを外国企業の管理下に置くというのは、今の世界情勢ではあり得ないでしょう。いったん外国企業に渡してしまえば、水質管理や長期的視点での修繕など、すべてが日本の管理下を離れてしまいます。防衛的な観点でも、今の状況ではあり得ません。

一方で、能登半島の地震での断水の長期化を見ても、水道事業の広域化は、もはや必須と言えると思います。
水は生きるために必要ですが、何か災害でも起こらない限り、インフラと言うのは、そこにあって当然だと思い、深く考えることがありません。私たちはもっとインフラに関心を持つ必要があります。