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自然に基づく解決策と人権
気候変動がもたらす影響の適応策・緩和策として「自然に基づく解決策(Nature-based Solutions、NbS)」に注目が集まっています。
例えば、植林はGHG固定に有効であるだけでなく、土壌を安定させることで気候変動に伴う大雨での土砂崩れを防ぐ緩和策にもなります。ヴィンヤードの草生栽培は、同じように土壌を保持する機能だけではなく、草原を復活させることで生態系をはぐくむ機能があります。
このように、NbSは「夢の取り組み」に見るのですが、実際には大きな副作用もあります。
今年の春、第55回国連人権理事会で「人権に基づくアプローチなしに自然基盤の解決策は存在しない」というタイトルのイベントがありました。
そこで議論されるほど、NbSには大きな副作用があるのです。
2009年にNbSを提唱し、2016年にはその定義を提唱した国際自然保護連合(IUCN)が、2020年に「自然基盤の解決策に関するIUCNグローバル基準」(IUCN Global Standard for Nature-based Solutions)を策定・発表しています。
この記事は、この概説を説明したものです。
自然に基づく解決策が人権とかかわりがある、と言われえてもピンとこないかも知れません。
それは、日本から遠いところで発生しているからです。
例えば、GHGクレジットを提供するために、ある広大な森林を整備するとした場合、一般的には30年程度は適切に整備することが求められるため、クレジット提供企業は森をよりよく管理するために囲んでしまおうとしがちです。
しかし、そこには先住民が住んでいたり、そこを様々な生活の糧を得る場所として利用している場合が多くあります。土地所有権があいまいな場合、GHGクレジットによって先住民が追い出される事態が発生します。
このような事例が、NbSの副作用の典型例です。
尚、実際の「IUCN世界標準」は日本語化されていて、ダウンロード可能です。
海外のGHGクレジット、生物多様性クレジットを使う場合、または農業などでNbSを検討されている場合には、一度ざっと見ると良いと思います。
https://portals.iucn.org/library/sites/library/files/documents/2020-021-Ja.pdf
https://portals.iucn.org/library/sites/library/files/documents/2020-020-Ja.pdf