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反ESGに抗するコストコ

反ESG旋風が吹き荒れ、巨大な金融機関が続けてNet-Zero Banking Alliance(NZBA)からの脱退を宣言しています。いずれも、共和党からのプレッシャーを受けての判断のようです。

https://www.reuters.com/sustainability/sustainable-finance-reporting/wells-fargo-departs-climate-banking-group-another-high-profile-exit-after-2024-12-20/?utm_source=chatgpt.com

問題なのは、これに対するNZBAの声明です。
「NZBAは銀行の脱退は残念だと考えるが、ウェルズ・ファーゴが独自の状況に基づいて下した決定は尊重する」

NZBAは、金融の力で企業のGHG排出ゼロを推進する団体です。(私自身は、この手法には疑念を持っています)
参加している金融機関は、ESGで点数をつけ、融資の可否を使ってサステナブルな(つまりは倫理的な)対応を企業に迫ってきました。
それが、政治の圧力の前では「政治の圧力だから仕方ないよね」で済ましてしまう。これは、企業側なら、株主総会で投資家から質問書を送られる案件です。
例えは良くないかも知れませんが、戦前、軍国主義を讃え教え子を戦場に送り出していた教師が、敗戦したら突然民主主義を唱え出した姿に重なります。

反ESGを政治的に押し付けるいまの共和党のやり方は民主主義に反します。
しかし、その圧力に晒されているいまだからこそ、(退会は仕方ないのであれば)ESGで唱えた倫理観が本物かどうか、金融業界には(今のレベルではなく)それを補う明確なメッセージと行動が望まれます。

マクドナルドなど次々と企業がDEIを取り下げる事態となっており、確かに今のアメリカで反ESGに抗することは容易ではありません。
しかし、リスクを認識しながらも、戦っている企業は存在します。

会員制倉庫型店を展開し、よくバラエティ番組で紹介されるコストコは、保守系シンクタンク「National Center for Public Policy Research」(NCPPR)からの多様性方針撤廃の提案を受けて、取締役会全会一致で下記の声明を出して、株主にその株主提案に反対票を入れるように呼びかけています。
「コストコホールセールの成功は、従業員、会員、サプライヤーといった重要なステークホルダーへのサービスによって築かれ、多様性、公平性、包括性に関する取り組みは、当社の倫理規定に沿っている。」

アメリカの現在の政治状況を見ると、コストコの言動は、とてつもなく勇気がいることであり、実際にリスクも高いと想定されます。
それでも尚、自ら信じることを貫こうとしている企業は存在します。