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IPBESの自然の多様な価値評価報告書とTNFD
自然保護団体がTNFDそのものに反対を表明しています(下記がその声明です)。
流石に内容は過激すぎるとはいえ、金融や企業が主導するESGそのものに対する不信感には、耳を傾けるべき点もあるかもしれません。
実は、最近nexus報告書を発表したIPBESは、2022年に「自然の多様な価値と価値評価の方法論に関する評価報告書」という長い題名の報告書を発表しており、環境省による和訳版も公開されています。
この報告書の中では、実際には2018年に提唱されたNCP(Nature’s Contribution to People)という概念が紹介されています。NCPは生態系サービスを置き換えるものではなく、自然の価値をより多様に理解するための概念であり、「市場を通さない自然の価値もある」ことが強調されています。
自然には文化的背景によって異なる捉え方があり、
①自然によって生きる(living from)
②自然と共に生きる(living with)
③自然の中で生きる(living in)
④自然の一部として生きる(living as)
といった多様な世界観が存在します。そのため、自然を普遍的に類型化することは困難であり、包括的な視点で捉え、意思決定に反映させる必要性が述べられています。
確かに、「自然資本」と言った時点で、私たちは自然を貨幣価値に転換して捉えていることになります。自然を守るには資金が必要であり、ESGの存在意義がそこにあることも事実です。しかし、自然とは何かについてこれだけの多様な捉え方と価値観が世界にある中で、市場価値や投資家からの評価という単一指標を重視しすぎている点については、NGOの指摘に一理あるかもしれません。
この反省を踏まえ、TNFD移行計画ディスカッションペーパーにおいてトレードオフや環境課題の漏洩、ランドスケープアプローチの視点が盛り込まれています。これは、TNFDがあくまでネイチャーポジティブを第一義に考えていることの証左であり、歓迎したいと思います。
自然資本の対応に資金を回すことは大切な取り組みです。しかし、あくまで第一目標はネイチャーポジティブであることを、忘れないようにしたいものです。