
レインフォレスト・アライアンス認証取得支援を始めた理由と起業家精神
なぜ私が前職で、スリランカ紅茶農園へのレインフォレスト・アライアンス認証取得支援を始めたか?それはRAの創設者ダニエル・カッツの革新的な思想に衝撃を受けたからです。
彼は、「規制では森林破壊は止められていない」ことに気づき、それを止めるには保護活動そのものを持続可能なビジネスにする必要があると考えたのです。
たった24歳の時にです。
具体的には、以下を始めます。
・現実に焼き畑農業をやって森林を破壊している農家を排除するのではなく、彼らの課題を理解し対応することが必要だと考える。(ランドスケープアプローチ)
・農業の知見に乏しい小農園に農業技術を教え、畑を広げなくても十分な収益を上げられるようにすることが森林破壊を止めると考えて実行に移す。(持続可能な農業)
・そうやって持続可能な農業で出来た農産物を、原料として買う企業や消費者が調達することにメリットを感じる仕組みを作る。(認証システム)
・更に、自然を見る・体験する観光業にも認証を広げることで、自然を保護すること自体をビジネスにする。(サスティナブルな新しいビジネス創出)
・自然の保護にはグローバルな体制が必要だと考えて、国際機関や多国籍企業との良い関係を構築する。(エンゲージメント)
いまでこそ普通の発想のように見えますが、彼がRAを創設したのは1987年です。
ちなみに、ダニエル・カッツは、ニューヨーク大学スターン経営大学院で MBAを取得しています。
いまの視点からは、上記は明らかにMBA的な発想であり、起業だと言えます。しかし、当時、ビジネスの発想を、サスティナビリティに持ち込み、実際に始めたのは彼を含めて少数でした。
2013年から開始したスリランカ紅茶農園の認証取得支援の背景には、社会貢献的な自然保護ではなく、ビジネス的な発想をベースとした自然保護なら、社会を変える一役を担えるのではないかと言う期待があったのです。

彼の発想は起業家精神のそのものであり、その行動は本来のESGだと思います。
投資家から押し付けられ、投資家の評価を気にする、やらされ感満載のESGとは大きく異なります。数字を財務諸表に載せろ、と言われ、精度がイマイチの現在の換算値では大した判断ができないことに皆が気づいているはずなのに、それに労力を使うようなESGでもありません。
本来のESGは、金銭価値以外の価値(非財務と呼んでたんですから)をエンゲージメントで評価して判断し、後押しするものだったはずです。彼の取り組みに賛同し協力した企業や投資家もまた起業家精神を持っていたと言えるでしょう。
大事なのは開示ではなく、実行であり革新です。ダニエル・カッツが行った社会と企業に本来の価値を生み出す新しいシステム作りこそが、企業が最も得意とすることのはずであり、求められていることです。そのための資金の出し手が投資家の役目です。
なぜ、持続可能性を高めるのにビジネス的発想が必要なのか。
ESGが目指したものを改めて見つめ直すことで得られる手触り感のある腹落ちが、投資家と企業、そして地域コミュニティや消費者に、改めて必要なのです。