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「私のことを覚えていますか」からのホラー体験
漫画アプリ「ピッコマ」で東村アキコさんの「私のことを覚えていますか」を読んでいたら、主人公の遥が小学校時代の初恋の相手を思い出すシーンが出てきた。
その瞬間、今まで敢えて封印してきたかのような当時の記憶がドーッと溢れ出てくるんだけど、初恋の相手は「こうちゃん」と呼んでいた男の子で、ジャニーズの原石みたいに綺麗な顔をした少年だった。
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そして、その「こうちゃん」を見た瞬間、私自身の初恋の相手も蘇った。
顔がそっくりすぎて本当にビックリ。
小学校2年の3学期、彼(T美くん)は転校生として同じクラスにやってきた。
「こうちゃん」のルックスを見てもらえばわかるように、彼は一躍女子たちの注目を浴びた。
人気者となったT美くんは、なぜかわたしのことを気に入ってくれて、放課後になると毎日のようにふたりで校内でおしゃべりをしていた。
霜が降りた廊下の白い窓ガラスに絵を描いたり文字を書いたりして、他愛ないことを話していたことを思い出す。
![](https://assets.st-note.com/img/1674373920326-g0bubOCNMX.jpg?width=1200)
そんなある日のこと、わたしはボスキャラ的な女子に呼び出された。
「T美くんのことで話があるの」
人気のないところにわたしを連れ出すと、ボスキャラは大真面目な顔で話し始めた。
「T美くんはね、実は女の子だって知ってた?」
たしかに、彼が休みの日になると女の子の服を着ているという噂は耳に入っていた。名前も中性的な名前だったし、きっと女の子が欲しかったお母さんが可愛い顔をしたT美くんに女の子の服を着せていたのだろう、と推測していた。
ボスキャラがT美くんからわたしを引き離す作戦だということはすぐにわかったし、「嫉妬って醜い」と軽蔑さえしたけれど、反論すればわたしがボスキャラから何らかの攻撃を受けることも明らかだった。
「そうだったの。わかった、もうT美くんとは仲良くしないよ」
その日以降、女子たちがT美くんを「女の子」と呼んでからかい始めた。
わたしは決して彼女たちのいじめに加担しなかったけれど、T美くんを庇うこともしなかった。
「女の子! 女の子!」とからかわれているときに、ちらっとT美くんの方を見たら、彼が怒りに燃える目でわたしを見ていたのを今でも思い出す。
昨日まで友だちだったのに無視を決め込んだわたしの方が、いじめをしている彼女たちよりも裏切り者で残酷な人間と思えたに違いない。
わたしの初恋は、3学期の終了とともに最悪の形で終わってしまった。
3年生を迎えて、わたしとT美くんは違うクラスになってしまったけれど、ボスキャラは彼と同じクラスになった。
そして、あるときボスキャラに遭遇したわたしは恐ろしい体験をする。
ボスキャラがT美くんにべったりくっついて歩いているのを見たのである。
しかも、わたしに気づいたボスキャラが近づいてきてこう言ったのだ。
「T美くんが女の子だなんて勘違いだったみたい。そんな子どもっぽいことを言うのは止めて、今じゃ仲良くしてるのよ」
小学校2年生の女の子の策略に心底ゾッとしたわたしである。
まぁ、もともと男子と遊んでいる方が性に合っていたのだが、このホラー体験以降、女子よりもますます男子と気のおけない関係を築いて行くことになる。