恐怖を飼いならすための性癖

※注意:陰鬱な好みについての話をします。引く人は引くと思います。ここでの「性癖」とは「好きな二次元作品のシチュエーション」というインターネット的な意味です。


このまえ『ミュウツーの逆襲』を見たとき、サトシが石化するシーンが出てきた。そのとき、私はほんの少しだけ石化愛好家の気持ちがわかった。
私の場合、さっきまで元気だった人から急に人格が失われて動かなくなるというところに味わいを感じた。

私は洗脳モノが好きなのだが、その原体験はやはりポケモンだったと思う。サトシがタマタマだかナッシーだかに洗脳される回があって、私はその回がなんだか怖かった。
しかし、興味深くもあった。なんとなく、親の前で見てはいけないと思った。今思うとそれは「うわあ! エロい!」という感覚だと思う。
ポケモンに限らず子供向けアニメはなぜかやたらと洗脳シチュが多く、苦労した記憶がある。

ちなみに「ポケモンがえり」の回も同じ感覚になった。子供たちがポケモン化して奇行に走るというような話だったと思う。コイキング化した少女が水たまりの上で転がり跳ねている様子を今でも思い出す。
どうも、知的生命体が理性を失うシチュに興味があるらしい。

怖いものが好き

というわけで幼い私は洗脳モノに恐怖(と興味)を抱いたわけだ。実際、怖いという感想はおかしなことではないと思う。

だって、正気を失うのって普通に怖くないですか? そのあいだに腕が一本なくなってもおかしくない。なんかよくわからない毒を飲むかもしれない。財布を人に渡したり、大事な暗証番号やパスワードを他人に教えてしまうかもしれない。唯一信用できる存在である自分が信用できなくなる。それって本当の絶望だ。

特に私はかなり我が強いうえに疑り深い。プライベートにおいて、自分が納得しない限り他人の意見は聞かないし簡単に信用しない。人の言うことを聞く自分を考えただけでキショいなぁと思う。だから、より一層そのシチュエーションに恐怖しか感じないのだろう。

そしてよく考えると。私がフィクションにおいて強い愉悦を感じるものはだいたい恐怖が由来になっている気がする。

最悪な話、主人公が変な薬にハマって破滅する話もかなり好きなのだが、そのきっかけは大昔に読んだ2chのSSだ。当時、体験談としか思えない描写の生々しさもあり本当にトラウマになったのだが、どう転んだのか数か月後にはそのストーリーのパターンがかなりヘキに刺さるようになった。

鬱展開も好きだし、なんか主人公が炎上して大変なことになる話も好き。私の好きなものはだいたい怖いものだ。そして、石化もめちゃくちゃ怖い。アンビリーバボーかなんかで閉じ込め症候群の話を見たときもトラウマになったもの。

性癖:猟奇

以前、こちらの本を読んだ。
猟奇博物館へようこそ - 白水社 (hakusuisha.co.jp)

著者がフランス滞在中に魅せられた猟奇的な作品たちについて哲学に絡めて解説する本である。
私はこれを読んだときに「私のヘキって猟奇だ!」と思ったのだった。

一般的に「猟奇=グロ」と解釈されることが多いと思うが、厳密には違う。イコールではない。
本来の意味では、奇怪なものや異常なものに強く惹かれることそれ自体を猟奇と呼ぶのだそうだ。グロはその一部分ということになる。
ざっくりいうと「猟奇」とは「怖いもの見たさ」である。
怖いもの、気持ち悪いもの、最悪なもの、そういう異常全般を安全圏から自分を排してひたすら観察してみたい。そういう非倫理的な好奇心のことなのである。

かなり心当たりがある。私に刺さるものだいたいそんな感じだ。
そんな感じで、私の性癖を一言でいうと「猟奇」なんだと思う。

怖いものに向き合うため、私はそれを「性癖」として消費することにしたのだろうか。

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