NZ旅行記①【オークランド編】
幼い頃は楽しみな日に限ってよく熱を出していたものだ。原因は高揚感で前日はしゃぎ過ぎていたことにあるのだが。
歳を重ねるにつれそんなことも無くなった。ありがたいことに今回も元気に出発当日を迎えることができた。
8泊10日ニュージーランド一人旅
今回の旅程はこれだ。
8泊かけてニュージーランドを縦断する。
飛行機とレンタカーで南下する計画だ。
9/6は大好きなバンドのフロアライブで個人的前夜祭
9/7の夜に成田空港発
そして旅は9/8からスタートする。
8 Sep. @Auckland
上空10,000mで日の出を迎えたのは初めてだった。空は黒みを帯びた青色で、昇りたての太陽は白かった。限界寸前のお尻。美味しい機内食。この日から3ヶ月間留学を頑張るらしい隣の席の方に声のボリュームに配慮しつつ最大限のエールを送り、オークランド空港に降り立った。
空港内を歩くだけですぐに分かった、この快適な湿度。確実に冬だ!猛暑が続く日本から飛行機に乗った僕は半袖だった。だがこの寒さですら嬉しくてたまらなかった。ニュージーランドに来たんだ!念願の一人旅が始まる!
着替えるタイミングを失ったまま空港を出てしまい、人通りがまばらになったタイミングでヒートテックに着替える。その上から長袖シャツとアウター。長袖に腕を通せるのって幸せだ。
オークランド空港は市街地から離れているためバスに乗る必要がある。ニュージーランドはバス社会だ。NZ最大の都市オークランドのバスでは現金が使えず、AT HOPカード (日本のICOCA的なカード)が必要なことはバスに乗ってから初めて知った。
バス代を支払うことができず困ったが、なんと器のでかい運転手、
「その角を左に曲がったらコンビニがあるからそこで買いな。今回はタダでいいよ」と。
なんて優しいんだ。。
すぐにカードを買って次こそはちゃんと支払わないとな。そうして市街地に降り立ち、教えてもらったコンビニに入った。
店員さんは丸眼鏡をかけた若い男性だった。
自分「Can I have an AT HOP card?」
店員「How much?」
How much!?想定外の返答だった。恐らく最初にいくらチャージしたいのかということなのだろう。そこまではすぐに推測できたが、相場が全く分からない僕は困った。
ならば『いくらあれば足りますか』と聞いたらいいじゃないか。
「How much...... 」あれ、
足りるって何て言うんだっけ。全く英語が出てこない。その時だった
店員「How much!!!チッ」
怒号と舌打ちと台パンを同時に喰らってしまった。
お互いに無言。幸い後ろに他のお客さんはいなかった。そこまで短気なことがあるかと思いつつも、急いで『いくらあれば足りますか』を翻訳にかける。
enoughだ。。。なんで出てこないんだろう
「How much is enough?」
「10 $」
こうしてAT HOPカードを手に入れた。店を出る時には意外にもthank youと言ってくれたのだが。
旅の初っ端で英語のできなさを痛感したと同時に、これから8日間やっていけるのだろうかと一気に不安になった。この旅では沢山の『ますように』を抱えていたが、『無事日本に帰れますように』がとにかくいちばんだと感じたのはこの瞬間だった。
この日予約していたドミトリーに荷物を預けたのが正午を過ぎた頃。天気は良し。今日はオークランドを観光する日と決めていたんだ。
オークランド市街は独特の匂いが充満していた。梅田駅に特有の匂いがあるのと同じ現象だろうか。香水のような匂い。全然嫌いな匂いではなく、むしろクセになった。
本来なら2時間ほど街を散策する予定だったが、思っていたよりも早い段階で満足してしまい、予定を早めてフェリーに乗ることに決めた。行き先は行ってみたかった場所の一つ、デボンポートだ。
デボンポートへはブリトマート駅近くの港からフェリーで15分ほど。なんとか手に入れたAT HOPカードで往復チケットを買った。30分に1本の頻度で直行便があるにも関わらず、座る場所に迷うほど観光客が多かった。僕は座らずに海風を浴びる選択をした。
デボンポート港着。港に降り立った瞬間、感動の溜息が漏れた。もしかすると声さえも漏れていたかもしれない。
絶対に好きな場所だ。。。
オークランド中心部とは雰囲気がガラリと変わっており、ヨーロッパ風のおしゃれな建物が並んでいるかと思えば左手にはビーチで犬を散歩させる人、右手には公園で子供と遊ぶ人、鳥と戯れる人。落ち着いていて平和で、幸せオーラで包まれているような場所だった。
予め決めていた目的地は一つしかなく、それも当初は夕暮れ時に訪れるつもりだったため、かなり早く着いた僕は写真を撮りながらゆっくり散歩することにした。
ニュージーランドはどの街でも路駐が一般的だ。写真を撮っている途中でカメラの設定を変更しようと思い、何も気にせず路駐車の前で立ち止まった。本来は液晶を見て設定すればいいものの、日なたで画面が見えづらかったのでファインダーを覗いて設定をしていた。その瞬間だった。
「Are you taking photo of me!?」
急に路駐車の助手席から女性が飛び出し、すごい剣幕で僕の方に向かってきた。一瞬何が起こっているのか分からなかった。が、すぐに気付いた。
レンズが助手席の方に向いていたんだ。路駐車に人が乗っている可能性を失念してしまっていた。
当然その方の写真など一枚も撮っていないが、日本語ですら潔白を証明するのが難しい場面なのにましてや英語でなんか説明できる自信が全くなく、
No No No No!
と逃げることしかできなかった。
咄嗟にSorryなんて言わなくてよかった。余計に不利になるところだった。
かなり焦ったが、落ち着いて考えてみれば100%自分が悪い。ファインダーを覗くときは今後気をつけないとな。
そんなこんなでMt. Victoriaに到着。唯一の目的地とはここのことだ。
マウント・ビクトリアとはデボンポートにある標高80mほどの丘のことである。海を挟んで南側ではオークランド中心部、北側ではランギトト島を望むことができる。
太陽が照っていた。黒いロープが蛇に見えて飛び跳ねたりしたこともありすぐに頂上に着いたが、その頃にはかなり汗をかいていた。しかし頂上は強風。すぐに気持ちよさが上書きしてくれた。
まずは北側のビューポイントへ。正面に望めるランギトト島は富士山よりも傾斜がなだらかに見えた。
そして南側へ。
マウントビクトリアが本気を見せてくれた。
想像以上の景色に圧倒されその場に立ち尽くした。国内イチの都会とは思えないほど海は青く綺麗で、スカイタワーを含むビル群はやはりどこか日本とは違う雰囲気で。オークランドの魅力を存分に感じられた気がした。
景色だけではない。
右に写る若い男女グループの過ごす青春の様子はあまりにもきらきらして見えた。写真の左側では新婚さんがウェディングフォトを撮っていた。こうして人生のステージが変わるごとにその時々の大事な人とここに来てみたいものだ、なんて考えた。
これでもかというほど深呼吸をして名残惜しくも丘を下ることにした。ありがとうマウントビクトリア〜
街に戻ってからのプランは全くなかった。帰りのフェリーで考えようと思っていたのだが、襲われた睡魔には従順に従うことにした。
少しでも長く眠っていたかったのでフェリーはいちばん最後に降りた。すぐに港で立ち止まる。これまで何度も見てきた、オークランドおすすめスポット一覧が載っているサイトを開くもこれといったものがなかなか見つからない。とりあえず適当に歩いてみようか、そう思い前を向くとAT HOPのチャージ用の機械があったので、後に困らないようにチャージしておくことにした。
しかし画面のどこにも“チャージ”らしき単語が見つからず、シンプルな見た目の機械の割に案外苦戦した。
そのときだった。横から女性が来たかと思うと、チャージをするなら“Top Up”を押すんだ、と教えてくれたのだ。恥ずかしながらtop upにチャージの意味があるとは知らなかった。
Thank you!と目を合わせると、その方は日本人のように見えた。NZで初めて日本人らしき方に会えて嬉しくなった僕はつい、
Where are you from?
と聞いてしまった。
Japan!
良かった〜日本人の方だ。僕はオークランドのおすすめスポットを訊いてみた。
彼女はNさんという。一人旅で来ていてこの日が12日目。帰国は明後日に迫っていたが、この日デボンポートから帰ってきて以降の予定を決めていなかったらしい。やはりみんな似たような動き方をするものなのだろうか(n=2)。しかしNさんはオークランドにはかなり詳しい方だった。
話を聞くと、8年前にオークランドで5ヶ月間留学していたとのこと。この8年間ずっとニュージーランドのことが忘れられず、今回の飛行機のセールの機会に思い切って一人旅を決行したという。なんて素敵な話だ。
結局Nさんはおすすめスポットをたくさん教えてくれただけでなく、一緒に案内までしてくれた。貴重な一人旅の時間を割かせてしまって申し訳ない気持ちもあったが、「どうせ暇だったから!」と笑顔を見せてくれる親切な方だった。
南島が今回の旅のメインだったらしいNさん。というのも、8年前の留学時はオークランドにしか滞在しておらず、南島には行けなかったらしい。今回が念願の南島だったと言うわけだ。
「テカポ湖で星見れました?」
「見れた!天気が良くてめっちゃ綺麗だったよ!」
こんな会話をした記憶がある。とにかくNさんは南島を楽しめた様子だった。
そんな話をしながらNさんにはAT HOPのチャージの仕方だけでなく、スーパーでの買い物の仕方、バスや電車の乗り方、飲食店での注文の仕方などなど、ニュージーランドのルールを細かく教えてもらった。初耳情報ばかりで、おそらく彼女がいなければ必ず今後困っていただろう。感謝しかなかった。
Nさんはおすすめスポットとしてミッションベイを挙げた。ここの夕日が綺麗らしく、今バスに乗ればギリギリ間に合うから乗ろう!と提案してくれた。まさかこれからバスに乗るとは思っていなかっただけに、予想外に遠くへ行けることにわくわくした。
AT HOPカードを手に入れて最初のバス。自慢気にピッとして乗車した。
日本に住んで24年、できるようになったことがほとんどで、どこか得意になっていた節がある。しかし海外に1人で来てみれば言語の壁が大きく、何をするにも不安になる。こんな小学生に戻ったような感覚は初めてで、どきどきしつつもこの海外体験が毎分毎秒楽しかった。
降りる時もピッとするだけ。Nさんが先に降りる。僕も続けて、、、あれ?
カードがない!
財布の中、いつも入れてるカバンのポケット、ズボンのポケット、どこを探してもカードがなかった。普段所持品は滅多に無くさない方だが、人に迷惑をかけてしまうこんな時に限ってやってしまうものだ。
バスには他の乗客もたくさん乗っている。僕が降りないとバスは進めない。運転手と乗客の目線を痛いほど感じた。Nさんが笑っていたのが救いだった。それでも見つからなかった。運転手さんに言うしかない。。
Sorry, I lost a bus card...
運転手さんも困っただろう。行きな、と伝えてくれた。申し訳なさと感謝とでなんと言ったらいいやら。
何もできない小学生になってみて、より人の優しさが沁みることに気付いた。日本に帰ってもこの気持ちは絶対忘れずにいたいと思った。
とはいえ、カードを持ってバスに乗ったのだから消える訳がない。冷静になってかばんを探してみたら、入れたことのないポケットにカードが入っていた。
何やってんだか、、浮かれていたのだろう。
とりあえずなんとかなった(?)から良しとする。
ミッションベイとはランギトト島の真向かいにあるビーチのことだった。季節の問題か太陽は木々に隠れていて見えなかった。が、夕暮れ時のミッションベイビーチは空も海も紫色に包まれていて幻想的だった。Nさんは写真を撮っている。
薄紫色の空には三日月が登っていた。
「月の形って日本と一緒かな?」
「多分一緒です!」
咄嗟にそう答えてしまったが、その時点では自信をもって言えたわけではなかった。
そういえば日本では数日前に新月だったことを思い出す。じゃあ世界のどこで見ても形は同じだ。
1人で勝手に納得し、宙に浮く直前の発言に後付けで自信を上乗せした。
日が沈み体が冷えてきた頃だった。Nさんも寒かったのだろうか、話題が変わる。
「フィッシュ&チップス食べたことある?」
「ないです!」
19時前だった。すぐ近くにおすすめのお店があるとのことだったので一緒に行くことになった。
フィッシュ&チップスのことは正直舐めていた。というよりも味が想像できていたと言った方が正しいか。これが食べたことのなかった理由の一つになるのかもしれない。しかしいざ食べてみると、フィッシュがとにかく美味しかった。Nさんのおすすめだもんな、さすがだなと。
20時頃、外が真っ暗な中バスでオークランド市街地に帰った。バス内は現地の中学生ヤンキーが元気いっぱいだった。来ていたパーカーの背中に日本語で「レジャー」と書かれていたのがシュールだった。
バスを降りる。Nさんは別のバスで8年前お世話になったホームステイ先に帰るとのことだったので、ここで解散することにした。
何もかもわからなかった1日目、NZのあれこれを教えてくれたNさんは僕にとっての恩人として記憶に残ることになるだろう。
「南島も楽しんで!気をつけてね!」
そんな言葉をかけてくれる最後の最後まで優しい方だった。
荷物を預けていたドミトリーに帰った。宿泊代を浮かすため、今回の旅は8泊のうち7泊をドミトリーで予約していた。
想像していたドミトリーは明るくて賑やかな部屋。英語でコミュニケーションをとるのが楽しみだななんて思っていた。
しかし扉を開けてみると、予想とは真逆だった。
部屋は真っ暗で静か。先に部屋に入っていた宿泊客はそれぞれのベッドでくつろいでいた(寝ていたのかもしれない)。
電気をつけられない上に物音すら出せない。なかなか気を使うドミトリーでシャワーと荷物の整理を済ませ、一日を終えた。ベッドはふかふかだった。
↓レジャーパーカーはNZで流行っているらしい
9 Sep. @Auckland
共同のシャワールームには窓がついていた。この日初めて外を眺めたのはこの窓からだった。
文句なしの快晴。昨日よく見たカモメたちも気持ちよさそうに飛んでいた。
部屋で目が合ったデンマークの男性と
Good morning!
と挨拶を交わした。話してみると陽気な方で、日本のお菓子をあげるとCool!と喜んでくれた。
Have a nice trip!
You too!
握手をして気持ちよくドミトリーを後にした。
この日はオークランド南部に位置するOne Tree Hillという丘に行き、夕方には国内線でオークランドを出発するプランを立てていた。フライトは18時。余裕を持った時間の逆算により、朝早めの出発が確定していた。
バス社会ニュージーランド。ブリトマート駅のような大きな駅を構えながらも、なんと定期的に電車が動かない日があるらしい。昨日はちょうどその日だった。が、幸い今日は電車が走るようだった。それは駅に着いて初めて分かった。
さて、昨日と違うことは約20kgの巨大キャリーを連れ回している点だ。ドミトリーに預けたままでもよかったのだが、目指す丘は空港方面にある。
ドミ→丘→ドミ→空港のルートは電車で1.5往復することになるためかなり非効率だった。それなら最初はキャリーを連れ回し、降りた駅のロッカーに預ければいいじゃないかと考えた訳だ。
AT HOPカードはあまりにも便利だった。バス、フェリーだけでなく、電車にも対応しているとは。
ICOCA慣れしていたため難なくブリトマート駅の地下に行くことができた。エスカレーターを降りて目にしたのは、イメージ通りの海外の駅!といった空間だった。
降りる駅はGreenline駅。10分ちょっとで着く距離だが、日当たりがよく快適でうとうとした。
すぐにグリーンライン着。ブリトマートとは全く雰囲気が違い、地元の最寄駅に似た雰囲気の田舎の駅だった。
ここからワンツリーヒルまでは徒歩30分。
さあ歩くぞ〜
、、、
ロッカーは!?
グリーンラインののどかさに気を取られ、ロッカーがないことに気が付くまでに数分かかった。
手には巨大キャリー。これから30分ガタガタの上り坂が続く。キャリーを引いていくには相当な労力が必要だ。
ブリトマート駅に戻ってロッカーに預けるしかないか、、そう思い次の電車を調べてみると30分後。うーんなかなか時間が勿体無い。
本気で駅の端っこに置いて行こうかと考えたが、紛失して飛行機に乗れないのだけは御免だったので、さすがに控えた。
結局20kgのキャリーと共にワンツリーまで向かうことにした。こんな道でキャリーを引いたのは恐らく僕が初めてだろうと思えるような道を30分歩いた。
キャリーのタイヤが案外ダメージを負わなかったのは幸いだった。
やっとの思いでワンツリーヒルに到着。しかしまだ喜べない。今はただ丘の麓に着いただけであって、まだ頂上に着いたわけではないからだ。ここから急な坂を登って頂上を目指さなければならない。
さすがにこれ以上20kgのキャリーと一緒に歩くことはできないと判断し、仕方なく木の茂みに隠すことにした。全く意味をなしていない南京錠を御守り代わりにつけて。
そういえば朝から何も食べていない。リュックに昨夜買ったヨーグルトがあることを思い出し、取り出した。
蓋を開け、ヨーグルトを服に飛び散らす。
さすがNZのヨーグルト。今まで食べた中でダントツで美味しかった。このワンツリーのベンチで食べたヨーグルトにハマり、残り6日間毎日同じヨーグルトを買うことになる。
さてさて、一息ついたところで頂上に向かって歩みを進めた。するとすぐに羊に遭遇した。この旅の初羊。
かわいい。。。
実はワンツリーに来た目的は、頂上の景色2割、羊8割だった。
羊はデフォルトで顔が笑っているからずるい。子羊は存在してくれるだけで元気を与えてくれる。
それと羊から感じるこの余裕。ここが最大の都市オークランドであることを忘れさせるほどの安心顔だ。ふわふわしていたのは毛だけではなく、醸し出す雰囲気までもだった。
正直この時点でワンツリーに来た目的はほとんど果たせたのだが、せっかく苦労してここまで来たんだ、頂上まで登らない選択肢はなかった。それからの道中も素敵で、あっという間に頂上が見えた。
頂上に到着。景色ももちろん良かったが、ここではおばあさんと一緒に小鳥を可愛がったのが特に思い出。小さな出来事かもしれないがこれら一つ一つに心が温まり、1人でにこにこする旅人がここに出来上がるわけである。
丘の麓に戻ってみると、茂みに隠しておいたキャリーは無事だった。良かった〜
しかしまたグリーンライン駅まで一緒に帰らなければならない。帰りは若干の下り坂が続くため行きよりはラクだったが。
こうして無事グリーンライン駅に到着。ワンツリーヒルで最高の思い出がまた一つできた。
さて、微妙な時間が残った。これから空港に行くには早すぎるが、そんなにまとまった時間があるわけでもない。電車を待つ間に次の予定を考える。
実はオークランドで気になっていた場所が一つ残っていた。オークランド博物館である。これから行けなくもないが、ゆっくり観て回れないことは確定していた。少し悩み、迷ったら行けの精神で向かうことにした。
オークランド博物館の入場料は大人32$。3階建てでフロアごとにテーマが変わる構成となっていた。1階はニュージーランドの先住民であるマオリ族の歴史と文化について。2階はニュージーランドの国土、自然史について。そして3階は第一次、第二次世界大戦について。個人的にどれも非常に興味のある内容だった。
現在の時刻は15時前。博物館からは電車とバスを乗り継いで空港に向かう必要があったため、15時半には博物館を出なければならない。つまり僕に許された観覧時間はたったの30分。思いっきり悔しい顔をしたのち今回はじっくり観るのを諦め、早歩きで全ての展示を観る方針を取ることに決めた。
館内はほとんどの展示が撮影OKだった。
面白すぎる、、、
駆け抜けるオークランド博物館
文章を読む時間はなかった。じっくり読めたら何倍もおもしろいだろうなぁと思いながら展示だけ観て楽しんだ。それでもかなり楽しめた。
特に驚いたのは、本物の零戦が置いてあったことだった。当然実物なんて見たことが無かったのでドキッとした。オーラがあった。時間が無いことを完全に忘れてしまっていた。
でもなんでニュージーランドに零戦が置いてあるんだろう。
後で調べてみると、この機体は終戦当時、太平洋のソロモン諸島でほぼ無傷のまま保存されていたそう。整備士たちが「若い命を無駄にしたくない」という思いで修理を遅らせ、そのタイミングで終戦となったためパイロットも機体も無傷だったそうだ。
ニュージーランド軍が機体を譲り受け、1959年にオークランド博物館に寄贈されて今に至る、という背景らしい。
零戦の展示だけはじっくり文章を読んでしまった。時間の存在を忘ていたから。
本物の零戦を前に色々考えていたところでハッとして時計を見た。
やばい!
結局予定を7,8分過ぎて博物館を後にした。
次こそはゆっくり観たい。またNZに来なければ。
駅までかなり本気で走った。
20kgのキャリーも引きながら。ガラガラガラガラガラ...
修行かと思った。
ギリギリで電車に間に合った。Puhinuiという少しかわいい名前の駅で降り、バスに乗り換える。
バスに乗ると、先に座っていたゴツいイカつい男性にチラチラ見られている気がした。巨大キャリーを連れて吊り革に掴まっている僕は気付かないふりをしていた。
しかしあまりにも視線を感じるので、チラッと顔を向けると目が合った。
すると男性は笑顔になって隣に座るスペースを空け、ここに座りなといったジェスチャーをしてくれた。
なんで優しいんだ。。2
ここまでまだ2日しか経ってないが、本当に優しい人ばかり。初っ端に短気なコンビニ店員に会ってしまったのも今思えば運が良かったのかもしれない(彼を深く知っているわけではないので悪くは言えないが)。
他の人の優しさがより際立った。
ニュージーランドのこういうところが好きだ。
ほっこりしたまま無事オークランド国際空港に到着。英語オンリーの飛行機に若干どきどきしながらも、ここでは大きなトラブルなく乗ることができた。
ありがとうオークランド
こうして北島を離れ、旅のメイン南島へ向かった。
20時頃に無事着陸。
乱気流で酔ったまま、太陽の沈んだ空港内をぐるぐる回ったため、南北を逆に知覚してしまった。
初めての土地で一度知覚してしまった方向感覚はなかなか修正できない。
この日のドミトリーは空港から徒歩圏内で予約していた。散々キャリーを連れ回したこともありかなり疲労が溜まっていたため、空港のすぐ近くで予約した過去の自分を褒めてやりたかった。
降り立った都市の名前はクライストチャーチ。
明日はここでどんな景色に出会うだろうか。
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