ひつじの読了録
「これは経費で落ちません!経理部の森若さん8」青木祐子著/集英社オレンジ文庫
ネタバレ有り!!
合併後のどさくさで人事異動があったりなかったりの天天コーポレーション。今回の疑惑は、いずれも大事にはならない。その内容よりも、人の機微、関係性がより細やかに描かれていると思う。
そして、森若さんが「なんか変」と気づいてしまうことにスポットが当てられたりもする。職人さんなどの本当のプロはそういう感覚があると思う。で、森若さんは放っておけず、調査をし出す。真夕もいっしょに調査したりもするが、なぜ気がつけるのかが真夕にはわからない。実は、真夕は気がついているところもあるが、突き詰めて考えない。流してしまっている。それが上手く描かれていると思う。
で、一番大きな出来事は、遠距離恋愛の中で微妙に変化していく2人の関係なのかもしれない。太陽が元カノとランチしたと聞いて、ビデオ通話を切ってしまう森若さん。正直だよね。混乱したままの気持ちのぶつけるのではなく、まずはその場を撤退する。混乱する自分の気持ちを持て余しつつ、最終的には、調べたデータを元に相手と相対する。この辺は冷静な経理の森若さんらしさがにじんでいる。そして、29歳女2人の会食シーンがなかなかいい、お酒もつまみも美味しそう。
そんな森若さんの相変わらずの恋愛ぶきっちょさに笑い、山田太陽の一見天然な純真さと気配りに癒やされ、真夕のときめきのゆくえ等にも思いをはせてしまう。勇さんも含めて、今後どう展開していくのだろうと、ほとんど恋愛小説的になっているなあと思いつつ、続きを待つ気持ちになっている。
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