東大ロー2023 再現答案③公法系54.2点
1 再現答案(再現率90%くらい、大筋は一緒)
第1 設問1 (法令名は行政事件訴訟法)
1 X社は本件内定取消(以下「本件処分」)が「処分」に該当するとして取消訴訟(3条2項)を提起するとともに、非申請型義務付訴訟(3条6項2号)を併合提起することが考えられる。まず、取消訴訟の「処分」に該当するか。
「処分」とは公権力の主体たる国または地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務関係を定め、またはその範囲を確定することが法律上認められるものをいい、「処分」にあたるためには①公権力性と②具体的法効果性が必要となる。本件処分によってX社は法的に本件助成金を受けることができる地位を失うから②は満たされる。もっとも、本件処分は国でも、地方公共団体でもなく、独立行政法人たる振興会によってなされているところ、①が認められないのではないか。
振興会は我が国における伝統芸能と現代舞台芸術の振興及び普及を図る公共性ある目的を持って創設されている(独立行政法人日本芸術文化振興会法3条、以下「法①」)。かかる目的達成のために、「助成業務」としての「芸術に関する団体が行う芸術の創造」に必要な「基金」等を「援助」することが認められている(法①16条、14条1号イ)。かかる「基金」等補助金の財源に関しては補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「法②」)が準用され、これによって法②中の「各省庁」が「振興会」、そして「各省庁の長」が「振興会の理事長」、更に「国」が「振興会」と読み替えられることになる(法①17条)。そうすると、公共性ある助成業務の補助金の支出に関する決定に関して、法は独立行政法人を国に準ずるものとして扱う趣旨を明確にしているといえ、振興会の行為に関しても①を認めて国と同列に扱うべきである。従って、①も満たす。よって「処分」にあたる。
2 そして、補助金等の交付の「申請」(法②6条)という文言やそれに対して調査義務が課され、交付決定に関しては申請者に対して通知義務が定められており(法②6条、8条)、申請権があるといえる(3条6項2号)。その交付に関する「承諾の決定」(法②6条かっこ書)に関して、本件処分である取消決定がなされているから「法令に基づく申請を…却下する処分がされた場合」にあたる(37条の3第1項2号)。従って、「申請をした者」として申請型義務付訴訟を併合提起できることになる(37条の3第2項、3項2号)。
第2 設問2 (法令名は憲法)
1 本件処分は本件要綱8条3項4号に基づきなされているところ、同条項は「政令」(73条6号)であり、法律の委任の範囲を超えるものとして違憲ではないか。
2 政令が法律の委任の範囲を超えるかは(以下略、筋違いすぎる駄文を再構成するのメンタル的に良くないのでご容赦ください。多分500字くらいです。明らかに間違いです、そもそも本件要綱は「振興会理事長裁定」ですから、内閣府とはまっっっっっっっっっっったく関係ないです。つまり、設問2は本当に0点です。表現の自由と言うド典型論点が浮かばなかったので失点は凄まじいと思います。追記を参照してください)
第3 設問3 (法令名は行政手続法)
1 まず、本件処分によりX社は補助金の交付を受けられなくなるため、本件処分は「不利益処分」にあたる(2条1項4号ニ)。この場合にその処分の「理由を示さなければならない」(14条1項本文)ところ、本問ではその理由提示が不十分であり、それにより処分の違法を構成するのではないか。
(1)理由提示の趣旨は、行政庁に対する不服申し立ての便宜を図り、かつ行政庁の判断の透明性を確保しその恣意的な判断を防ぐ点にある。そうすると、その趣旨を十全たらしめるためには、どのような理由に基づいてどのような法が適用され、なぜ処分がなされたのかをそれ自体から明確に読み取れる程度の理由提示がなされていることが必要である。
本問で提示された理由は、助成の対象である本件映画に社会的に問題となっているSNS上の名誉毀損で逮捕された者が出演しており、これに対して補助金を支出するのは「公益性の観点から適当ではない」というものである。しかし、これでは何を持って、公益とするのかも不明である。また、逮捕された者が全編120分の映画のうちわずか10分しか出ていないのに、公益が害されるというのはあまりに抽象的な論理であり、不十分である。したがって理由提示の瑕疵がある。
(2)かかる理由提示は処分とは別個の手続であるが、理由の開示を求める権利は、国民の権利として行政手続法内に明確に法定された重要な権利である。従って、理由提示の違法は直ちに処分の違法を構成する。よって本件処分は違法である。
2 本件処分は裁量権の逸脱濫用があり違法(行訴法30条)ではないか。
(1)まず処分の根拠法規である第8条3項柱書では「次の各号に該当すると認めたとき」は「交付決定…を取り消すことができる」と規定しており、4号で、「公益性の観点から…不適法と認められる」場合に、上記取り消しができる。よって、要件裁量、効果裁量ともに認められている。本問では要件裁量の逸脱を検討する。
(2)かかる概括的文言と振興会の目的が我が国における伝統芸能と現代舞台芸術の振興及び普及を図ることにあり、補助金の支出対象の決定には、我が国の芸術に関して精通した専門的技術的判断が要求される処分の性質から、その裁量の範囲は広範である。
そこで、当該処分をなす上で、重要な事実の基礎を欠くかまたは事実を基礎とした判断が著しく妥当性を欠く場合には、違法となる。
本問では、120分の映画のうち10分しか出ない俳優A1人が名誉毀損という私的な犯罪を犯したのみで映画そのものの補助金を支出しないという判断を下しており、著しく妥当性を欠くといえる。よって違法(タイムアップ&紙面が限界)。
2 追記(順位等がもしわかったら追記します)
設問2、0点。つまり、素点が30〜40点分吹き飛んでる感じしますね。そもそも点数ではなく偏差値換算なので、単純にどう影響したかはわかりませんが。それでも54.2で耐えた(?)という一番よくわからない科目です。
設問2で表現の自由を書かなかったのは、単純に思いつかなかったからです。なんか特殊な事情が多い問題でしたので、そっちに気を取られ、表現の自由の「ひ」すら思い浮かばなかったです。後は口述ですね。憲法に3週間以上触れられなかったかつ、直前に触れた憲法も統治ばっかり見ていたこともあって(だから73条とかいう訳わかんないのに手を出したのもある)憲法の基本的な思考力が落ちていました。映画→表現という基本的な思考過程すら踏めなかったので、悲しいです。(そもそも憲法自体が苦手なので、なんとか実力を上げていかないとまずいですね)