R4 予備試験 再現答案 行政法 A評価
1 再現答案
第1 設問1
1 Dが本件処分の取消訴訟の提起を断念したのはその出訴期間(行訴法14条2項)が経過していたためである。本件処分は平成18年4月14日になされており、現在は平成31年3月5日であり「処分...の日から一年を経過し」ているため、「正当な理由」がなければ提起出来ないのが原則である(同条項本文、但書)。
同条但書の趣旨は、行政行為の法的安定性を重視する一方、被処分者の責めに帰することができない事由により、出訴期間が厳守できなかった場合にこの者を救済する点にある。そうすると、「正当な理由」とは、客観的に見て被処分者の責めに帰することができない事由により、出訴期間が厳守できなかったことを指すと解する。
本問では、教育委員会により、平成18年4月14日に本件処分がなされており、それは本件条例(以下略)4条3項に則り、C古墳の所有者たるDにもその旨が通知されたことが資料により明らかである。そうすると、Dには、本件処分がなされたことを知り、それに対して不服を申し立てる十分な機会があったといえるから、客観的に見てDの責めに帰することができない事由により出訴期間を厳守できなかったとは言えず、「正当な理由」はない。
2 そこで、Dは出訴期間のない無効確認訴訟(行訴法3条4項)により本件処分を争うことにしている。では、Dは「当該処分...の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者」(同36条)といえるか。その原告適格が認められるか検討する。
(1)「法律上の利益を有する者」(同36条)とは、無効確認訴訟が実質的には出訴期間の伸びた取消訴訟であることに鑑み、取消訴訟の原告適格を定めた同9条1項の「法律上の利益を有する者」と同一に解釈すべきである。すると、「法律上の利益を有する者」(同36条)とは、当該処分により、自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害される恐れのある者をいい、当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、そのような利益も法律上保護された利益に該当する。
(2)本件処分はC古墳をB町の指定文化財に指定するものであり、特定人を名宛人とする処分ではないから、Dは「処分...の相手方以外の者」として、9条2項にしたがって「法律上の利益」(同36条)が認められるか判断することとなる。
まず、DはC古墳の所有権を法律上保護された利益と主張することが考えられる。本件処分は4条1項に基づいてなされている。かかる処分をするには、所有者に対する通知義務が法定されており(4条3項)、条例は、少なくとも、その所有権について配慮しているといえる。
そして、指定の「施行に当たっては、関係者の所有権...を尊重する」ことを要請している(3条)。更に、その現状変更行為をする場合に保護委員会の事前許可が要求され(13条1項)ており、指定処分が違法な場合には、所有権に対する不当かつ重大な制約が課されることになる。そうすると、本件条例は、文化財指定物件の所有権は一般的公益に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する、所有者という個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含んでいると解され、Dは「法律上の利益を有する者」であるといえる。
3 以上より、無効確認訴訟についての原告適格が認められる。
設問2
1 本件処分が無効か検討するに、無効事由は明文なく、解釈問題となる。そこで、行政行為の法的安定性とそれに対する信頼を保護するため、処分が無効となるのはかかる安定性を考慮してもなお容認し得ないような①重大な違法があり、かつ、②その違法が明白なものであって、信頼保護の要請に反しない場合をいうと解する。
2 まず、Dは「本件処分では保護委員会への諮問が行われておらず、考古学者E一人のみの意見を聴取しただけであるから、重大明白な違法がある」と主張する。
対して、B町は「Eの意見聴取を経たことにより条例4条2項に基づく保護委員会への諮問手続は実質的に履践されたといえるから、その瑕疵は治癒されている」と反論するとともに「瑕疵があるにせよ、それは処分と別個の行政行為なのだから、処分の効力には影響を及ぼさない」と反論する。
(1) 第一の反論につき本件条例は指定に際して保護委員会への諮問を義務付けており(4条2項)、かかる保護委員会は過半数の出席がなければ開くことが出来ない(22条2項)とされている。その趣旨は、保護委員会には所有権制約という重大な不利益と文化財の保護という二面の調整を行う専門的技術的判断が求められる(21条1項、3条)ことから、その合議体を維持して多様な学識経験を持つ専門家(20条1項参照)による公平中立な議論を徹底させようとする点にあり、それこそが重大な権利制約を正当化するために必要不可欠な要素である。そうすると、B町の反論である、考古委員Eのみの意見聴取では、専門的でこそあれ、公平かつ中立的な議論がなされたとは到底評価できないから、瑕疵は治癒されず、条例の趣旨や本質的要素に明確に反する点で重大な違法がある。
(2)第二の反論について、確かに、B町の主張の通り、手続と処分は別個の行政行為であるから、手続の瑕疵が直ちに処分の瑕疵を構成するとは言えないのが原則である。もっとも、かかる手続が処分をなす上で必要不可欠な前提行為となっている場合には、処分についても一体としてその瑕疵が承継されると考えるべきである。
本件処分では前述の通り、所有権の制約という重大な権利制約を伴う処分を正当化するために、保護委員会への諮問が要求されているのであって、かかる保護委員会による諮問手続は本件処分をなす上での必要不可欠な前提行為であり、手続の瑕疵が一体として処分の瑕疵に承継される。そうすると、第二の反論も失当である。以上より、本件処分は、重大な違法があり(①)、それは資料に記載されているのだから明白な違法(②)ともいえ、無効である。
3 さらに、Dは「本件通知には本件処分の指定対象物の範囲が本件盛土を含むのかについて記載がなく、処分の内容が不明確であるという重大明白な違法がある」と主張する。
対してB町は「そもそも通知・告示には処分範囲を明確にするように条例に義務付けられていないので違法はない」と反論し、また、「仮に違法でも、C古墳が指定文化財たることを示す標識を盛土から露出した巨石のそばに置いたことによって、指定範囲に盛土を含むことが明確になっており、違法は治癒されている」と反論する。
(1)第一の反論について、確かにB町の反論通り、通知及び告示の内容は法定されてない(4条参照)。もっとも、原則、町指定文化財の所有者はこれを自ら管理することが義務付けられており(6条1項)、その現状変更や保存に影響を及ぼす行為をしようとする場合には保護委員会の事前許可が必要(13条1項)とされていることからすると、そもそも、所有者にとっては、文化財に指定された範囲が明確になっていないと、これらの規則に従い、文化財を適切に維持、管理、およびその変更のための事前許可申請すらすることができない。そうすると、明文に処分の範囲を明確にする義務がなくとも、本件条例の趣旨から通知や告示おいて、指定範囲を明確にする法的義務がB町側には当然あったと解釈すべきであり、これに反すれば所有権に対する不意打ち的な制約になるため、重大な違法である。したがって、第一の反論は認められない。
(2)第二の反論について、巨石の周辺のみがDから管理責任者として選任された(6条3項)教育委員会により草刈りがされてきたのに対し、それ以外の部分である盛土全体には樹木が生い茂っていたのだから、むしろ、この盛土全体は管理の範囲外であったと評価されても仕方なく、標識が巨石のすぐそばに置かれたことは何ら意味をなさない。したがって、第二の反論も認められない。以上より、重大な違法があり無効事由が認められる。以上(3310字、88行)
2 追記
うお、こいつ初見の公法系なのに書きすぎだろと思われた方が多いと思いますが、安心してください。憲法が無理だと悟った(再現見ていただけるとわかると思いますが1200字くらい)ので、90〜95分かけてます。とにかく三段論法を意識し、徹底的に評価しようと頑張りました、2.5ページ目くらいからめっちゃ字を途中から小さく書きました。憲法は見栄えが悲しくならないように大きく字を書きました。
再現してる中で自己矛盾を起こしているのに気づきました。例えば、設問1でDを「被処分者」とか言ってんのに、原告適格の論証でDは「処分の相手方以外の者」とか言ってて、多重人格かて。あと、補充性をフル無視しました。良くてもC以下かと思っていたらAを頂けたので思ったより多くの人が無視したのかもしれません。赤信号みんなで渡れば怖くないってやつですね。また、最後は当てはめきれていなかったと思います。
条文は本番でもちゃんと補充性のとこも読んだはずです。でも、全く気づかなかったです。ちなみに全日程が終わって1週間たったくらいまで気づかなかったです。気づいた時は声にならない声が出ましたし、落ちたと思いました。