抗不安剤のすすめ
普通に生きてたのに、突然「あっもう無理だ」と思った。
数年ぶりのこの感覚。
ほんの2、3日前の話。
ぷつっとなにかが切れる音がするとかいう表現をよく聞く。
が、私の場合、音はしない。
それはとっても静かにやってくる。
夜が更けていくように、じわじわと。
暗くなってきたなと思ったらもう、出口の見えない湿地にいて、手遅れなことに気付く。
あ、もう戻れないとこまで来てしまった、と。
その時やっと、どこかで無理をしてて、なんとか紛らわせて上手く生きてたんだと振り返る。
私の場合厄介なのが、具体的に「何か」辛いことがなくても堕ちてしまうこと。
カウンセリングに行くと必ず、辛い原因の「何か」を求められる。
でも、これといって思い当たる節がない。
絶対的な外的要因がない。
ここでやっと、辛い「何か」を自分自身で作り出してることに気がついた。
過去の暗い経験が、感覚が、健気に生きようとする「今」の私をどうしても蝕んでくる。
悲観のフィルター越しで物事を見て、考えてしまう。
なぜ。
普通に生きてるだけなのに。
普通に生きてるだけだったから、こちらとしては訳がわからない。
辛かった。
調べてもらうと、どうやら脳神経が混線している発達障害のために、過去のトラウマや悩みを上手に処理できない性質を持っているらしい。
私はこの生まれながらの混沌を、個性として飼い慣らしつつ生きる他なくなった。
だからどうにかしたくて、ただ幸せに生きたくて、
ずっと調べるだけで止まっていた心療内科に罹ってみた。
そして、抗不安剤を飲んだ。
凄い。
飲んで数時間後には、訳もわからず涙が出てくる感覚を忘れた。
病院で心理テストとして、「一本の木をイメージして自由に描いてください」と言われた時、
絶対に絶対に、わかってるはずなのに、
枝分かれのイメージが全く湧かなくなって、
結局訳の分からない絵を描いて出した。
薬を飲んで数時間後の今、はっきり枝分かれのイメージが湧いている。
さっき思い出せなかった感覚が嘘のよう。
人はこうやって少しずつ苦手を手懐ける術を学んで生きていくんだ。
昔より、上手に生きられる時間が長くなった。
昔より、堕ちた後の対処法が身についた。
私はきっとまた堕ちる。
でも、絶対にアップデートして復活する。
どうやらこれが私の生き方。
悪くないかも、と思った。