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その後の日記(5)
退院後に我が家の和式スタイルの生活を改めようとあれこれ家の中改造をしている最中だ。まずは入院中にデイルームにあったのとほぼ同じ介護用ダイニングチェアを買った。といってもテーブルはまだバタフライテーブルで急場しのぎでしかない。
これまでの生活はちゃぶ台で食事をしていた。このちゃぶ台だってこだわりがあって丸くなければダメ、そして直径も80センチ以上の大きなもの。結婚して家を買ってまずしたことがこのちゃぶ台探しだった。あちこち方々探して八王子の村内家具でようやく見つけたものだった。理想の和式ダイニング生活はその後ずっと続いていた。まさか自分がこんな身体になるなんてことは考えてもいなかった。
ただしダイニングに関しては急場しのぎでもなんとかなるが、一番急がなければならないことがあった。それは寝床だ。これまでは畳に布団を敷いて寝ていたのだが。今の状態では脊椎に多大な負担がかかる。それは寝起きの動作である。絶対にしてはいけない運動が必ず伴うのだ。今は退院しても脊椎は骨折状態に等しく、真っ直ぐさせた状態を保たなければならない。入院中にベッドで寝る時でさえ寝方のコツをリハビリで教わるくらいで、寝起きは慎重にしなければならない。布団に入る動作も教わるには教わったができるだけ早くベッドを用意する必要はあった。
これまでの僕の生活の中でベッドというものはほとんど存在せず、ベッドでの生活が定着したことはなかったのだが今回はそうも言っていられない。部屋にベッドを入れなければならない。まず最初に僕の部屋には冬タイヤがあったのだが、これを手放して部屋のスペースを確保しなければならなかった。こんな病気になる前は1年に2度タイヤ交換を行っていて、その度にタイヤの上げ下ろしをしていた。我が家はエレベーターもない団地の4階なので年に2度の大イベントでもあったが、もうこんな体ではタイヤなど運べない(今は2リットルのペットボトルでさえも片手では持ち上げられない…本当に終わった人間だ。)ため、ディーラーに勤めている友人に連絡をして持っていってもらった。高校時代の古い友なのだが、変わり果てた自分の姿を見てやっぱり多少は驚いていたようだ。
そして今日近くにあるニトリにベッドのマットレスを見に行った。いつもと違ってマットレス選びも慎重にしなければならなかった。別にニトリでなくてもいいのだが。ニトリが一番手っ取り早いし、IKEAだと自分で持ち帰って組み立てなければならない。今の自分にそんなことはとてもできない。となるとIKEAの場合は「商品価格の2割+5000円」で組み立てサービスをしてくれるのだが、仮に5万円のベッドを買ったとすれば組み立てだけで1万5千円かかる。それにマットレスは別だ。
そんなわけでニトリが近くにあることもあってマットレスを見にいったのだが、ただ見たって違いのわかる代物でもなく、触って座って寝てみないといけない。そして知ったことは座って沈むマットレスでも寝てみるとやたらと高反発だったりする物もある。あれこれ寝転んでは感触を確かめながらマットレス選びをしたが、寝たり起きたりの動作そのものが腰にも障るため買い物をしているのにもかかわらず苦痛な時間だったことは言うまでもない。
マットレスと一緒にフレームもあれこれ見たが、狭い部屋に収納スペースを確保したいので収納型のものを選ぶ。実際に店頭や事前にはWebも見ていたが、いろんなタイプのベッドがあり、中には非課税の介護用ベッドもあったのだが電動ベッドはマットレスがどれも固くて薄かったので今回は候補にはならなかった。もう一つ電動ベッドだと収納スペースが確保できない。結局一番シンプルで収納もたっぷりできるシングルベッドに落ち着き、写真のような組み合わせのベッドに決めた。下の写真はマットレスも選んだものである。こういった組み合わせは店員さんにお願いするとマットレス交換などもしてもらえる。
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結局マットレスは「ふつう」の固さのものを選んだ。ベッドフレームもやたらと引き出しがあって少し高めのベッドにした。頭の部分には照明もあってこれが気に入ったし、色は最初から白が良いかなと考えていたところ白が一番納期が早いということでほぼ即決。
このベッドが来ればおそらくは脊髄が落ち着くまではほぼ寝て暮らす生活へとシフトしていくのだろう。とにかく今の畳に布団ではトイレに行くのでさえも一仕事だし、その度に腰を痛めるリスクもついてくる。これが終わると今度は長年愛用していたちゃぶ台を手放してテーブルをダイニングに入れる予定になっている。そうでないと自分の身体には悪いとはわかっていても、やっぱり和式の生活をやめることは残念でならない。せめて自分専用の小さなテーブルだけでいいのでちゃぶ台はそのまま残せないか考えてはいるのだが。
こんなつまらない病気一つで自分の慣れ親しんだライフスタイルを変えなければならないこと、そしておそらくは働けるようになっても今の仕事はもうできないような気がしてそれがとても寂しい■