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恋をしろ!

くらもちふさこさんという漫画家をご存じだろうか。
1970年代後半に乙女の心を鷲掴みにしていた漫画家さんで、月刊誌「別冊マーガレット」の発売日、25日がそりゃもう毎月待ち遠しくてたまらなかった。25日にはおこずかいが絶対切れないようにしていたものだ。

今でも「好きな男性のタイプは?」と聞かれたら、間違いなく「ちぃちゃん!」と答える。くらもちさんの名作「東京のカサノバ」に出てくる、大女優を母に持つカメラマン志望の男の子で、かなり複雑な育ち方をしているのに飄々とした不思議な男の子だ。…ちいちゃんのことを思い出すだけで、胸がキュンとなってしまう。何十年も前の、二次元の人なのに、大したもんだ。だから、くらもちさんはすごいのだ。

昔の少女漫画に登場する男の子は、現実離れした甘いセリフを吐きまくったりするイメージがあるけど、ちぃちゃんは生々しいほど等身大の男の子だった。隣のクラスにきっといるよねこういう人…と思わせてしまうところが、ドキドキで、でもちぃちゃんみたいに素敵な人は、現実世界ではなかなかお目にかかれない。

なぜくらもちさんの話をしているのかというと、今クールのNHK朝の連ドラは、くらもちふさこさんの実際の作品がドラマの中に登場し、その作者はカリスマ漫画家として、豊川悦司さんが演じている。
こちらのシーン、豊川さんのバックに見えるのは、くらもちふさこさんの原画だ。‥‥なんて素敵なシーンなのだろう、本当にもうドキドキしてしまう。

そんな興味から見始めた朝ドラ、いつの間にか、このカリスマ少女漫画家の秋風羽織(この名前も実際の漫画の登場人物の名前)に釘付けだ。ただでさえカッコいい豊川さんの変人っぷり、そしてご多分に漏れず、実はいい奴っぷりが切ない笑。

そしてこのドラマ、脚本は北川悦吏子さんで、心に突き刺さりまくるセリフに圧倒される。朝の8時から「今のは忘れちゃいけねえ!」とメモったりする日々である笑。こんな具合に…

「恋をしろ。漫画ばかり読んだり描いていた奴らの知識は深い。しかし、それではダメなんだ。リアルを拾うんだ。創造は負ける。好きな奴がいたら、ガンガン会いに行け。仕事なんかいつでもできる。ベタなんかいつでも塗れる。空想の世界で生きている奴は弱いんだ。心を動かされることから逃げるな。そこには真実がある。半端に生きるな。創作物は人が試される。その人がどれだけ痛みと向き合ったか、憎しみと向き合ったか、喜びを喜びとして受け止めたか。逃げるな」

秋風羽織のこの言葉には、「だから物を創るんだよ」とクリエイターの誰もが頷くのではなかろうか。だからやるに値する仕事なんだよな、という想いがぎゅっと詰まっている。

なぜこんなに正確にこのセリフを覚えているかと言うと、あまりに感動してしまったので、お昼の再放送を録画したからだ。いま、録画を見ながらキーを打っているのである笑。

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杉本 ゆみ
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