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恋とか愛とかやさしさなら -わかりたくて、納得したくて、もがく-
本の概要
タイトル:恋とか愛とかやさしさなら
著者:一穂ミチ
発行日:2024.11.4
発行所:小学館
評価:★★★★☆
感想
5年付き合っている彼氏がプロポーズしてくれた。その翌日、彼氏が電車で女子高生を盗撮した。というお話。
読みたいなーと思っていたところに、本屋大賞にノミネートされたというニュースが飛び込んできて、その勢いに任せて読んだ。
1日で読んでしまうほど続きが気になって、ページをめくる手が止まらなかった。
人の心の奥にあるどろどろした部分が等身大で表現されていたからか、読みながら、そう思っちゃうことあるよねー、とか、わかるわかる、と共感する部分がたくさんあった。
自分が悩んだのと同じ時間、啓久にも葛藤してほしかった。明確な答えが出ないとわかっている自問を、何百回、何千回でも繰り返してほしかった。
自分以外の他人のことをいくらわかりたいと思っても、完全にわかることはできない。
それでもわかりたいと思うのは、「自分が納得したい」という願望の表れであって、やはりそれも、無謀だと思った。
あなたの眼差しで世界を見られたら、そしてわたしの眼差しで見てもらえたら、こんなに言葉を費やさなくても済むのに。
ニカは俺をわかりたいんじゃない、ニカが受け入れられる、都合のいいストーリーを欲しがってるだけだろ。
性犯罪加害者の自助グループとの関りが出てくるんだけど、とても苦しかった。
罪を犯した人が言う「もうしません」って全然信用されない。じゃあいつまで再犯しなければ信じてくれるのかっていうと、それは死ぬまでなんだよ。
自分がやったことって、ほんと、死ぬまでついてまわるんだなって思って、人生の重みを感じた。
わたしの外で完璧に残り続けるより、わたしの中で薄れて褪せて、でも消えないでいて。
その予感は煩わしいわけでも、逆に望ましいわけでもなかった。人から見えない場所にこしらえた痣のようなもので、ただ、そこにあって消えない、というだけだ。
5年後、10年後に読み返したら、きっとまた違う文章に惹かれ、違うことを感じ、違うことを考えるのだろうなと思った。