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戦略/業務/ITコンサルの違いを架空PJで解説します

求職者や社内の若手から、「コンサルとSIerの違いがわからない」、とか、「今はIT全盛期だから、結局どのコンサルもITコンサルに行きつくのでは?」といった話を受ける時があります。

ここからは、自分なりに解釈している各コンサル(およびSier)の違いを、架空の事例をもとに記載していきます。

※注
前回も記載しましたが、職業柄接する人はITコンやSIer出身の方のため、若干戦略コン経験者からは記載内容に「?」がつくこともあるかもしれません。ご容赦ください。
また、あくまでわかりやすく違いを記載するため、おおざっぱな説明にもなっています。

事例:ある人材紹介会社A社の成長戦略

まずは前提です。大手人材紹介会社A社は、汎用的な人材紹介サービスと、一定層に特化した人材紹介サービス(第二新卒層/営業経験者/IT経験者/旅行業界経験者)、そして求人媒体サービスを有しています。

昨今人材紹介サービスでも競合が増えており、採用市場でもリファラルやダイレクトスカウトも増えるなど、自社を取り巻く環境に変化がおきています。

こうした環境下を今後どう乗り切っていくべきか、CEOはじめ上位層皆が悩んでいる状況です。

戦略コンサルの登場

ここでCEOが相談するのは、戦略コンサルです。
戦略コンサルは、CEOから上記悩みを相談され、競合他社や市場調査を行います。また、A社の各事業の現状の売上、伸びる事業や伸びない事業の精査を実施します。

この結果を踏まえ、A社に対して以下を提言します。

・ダイレクトスカウトにも参入すべき
・コロナの影響もあるため、旅行業界の人材紹介は縮小/撤退すべき
・IT業界の人材紹介は伸びていくが、他社と比較して伸び悩んでいるのでテコ入れすべき。AIを用いたマッチング等もすすめるべき。
・バックオフィス/人件費が少し高いので下げるべき

さらに上記ダイレクトスカウト市場の参入については、自社でやるよりも、M&Aで現在ダイレクトスカウト事業をやっているB社を買収したほうが良いとも提言します。

※ここでのB社周りの案件(デューデリジェンスやPMI等)も便宜上戦略コンサル、そして以下ではITコンサルや業務コンサルが行うことにしますが、FASコンサルが行う場合も多いです。

CEOは戦略コンサルの4つの提言をうけ、それぞれを進めていくことになりました。

業務コンサルの登場

ここから業務コンサルが登場します。
業務コンサルは上記4つの課題に対して、各事業部のトップや現場と話しつつ、以下のように対応していきます。

ダイレクトスカウト業務

A社とB社を統合するものの、B社は全く別会社だったため、組織文化/業務フロー/人事制度等何もかもが異なります。

そこで業務コンサルは、人事制度の統合、組織体制の再構築、各業務フローの統合(効率化)を推進していきます。

ここで統合を契機としてA社の既存事業とうまくシナジーを起こせるかが非常に重要になります。

旅行業界向け人材紹介の撤退

旅行業界からの撤退にあたり、既存の社員をどう配置するか、これを考えるのも業務コンサルの仕事です。

現行の旅行業界の人材紹介業の現行業務フローを確認し、そもそも撤退すべきなのか(実は営業改革すれば売り上げが一気に伸びるのであれば、撤退すべきではない)、も考えることは可能です。

IT業界向け人材紹介のテコ入れ

現行のIT業界向け人材紹介がなぜ伸び悩んでいるかを確認していきます。

KPIやKGIの確認、マーケティング手法の確認、ビジネスプロセス、品質の確認等、ボトルネックを探していきます。

さらに、現行フローを確認し、必要であればRPAやERPを導入、AIを用いた分析システムの導入など、IT領域にまで踏み込むこともあります。

コスト削減

コスト削減としては、人員削減やシステム導入、BPO等があります。

ここでは各コストを分析して、不要なコストを削減しつつ、品質は担保する必要があります。

上述したRPAの導入や、SaaSの導入によるペーパーレス化等もここに含まれるため、IT領域にまで踏み込むこともあります。

ITコンサルの登場

ITコンサルもここで登場します。
なお、注意すべきは、戦略⇒業務⇒ITコンサルといった順番で毎回登場するわけではなく、特に業務コンサルとITコンサルは重なる部分もあるため、併走するケースは多いです。

なお、以下全体的に言えることですが、各システムの開発を内製化していくのか、それともベンダーに任せるのか(その場合のベンダー選定)、ベンダーに任せた後のPMOも含めて、ITコンサルが行っていきます。

ダイレクトスカウト業務

ITコンサルはA社とB社のシステムが違うため、ここの統合もすすめていきます。

また、B社のもつダイレクトスカウトサービスについて、より良いスカウトが打てるようなAIシステムの導入検討や、スカウターが使いやすいUI/ UXにするための提案等も行います。

IT業界向け人材紹介のテコ入れ

各事業間のデータ連携や、マッチング精度の向上、業務効率化に、ITの力は欠かせません。RPAやERP、AIを用いたマッチングシステムの導入等の検討を行います。

さらには、既存の基幹システムがレガシーなため、新規サービスの展開が遅くなっている場合は、基幹システムの刷新についても提案/推進します。

上記ダイレクトスカウトの件と同様ですが、既存のサービスのUI/UXがイケておらず、求職者が離脱している場合は、そこの改善も進めていきます。

コスト削減

ここでも上述したRPAの導入やSaaSサービスの導入を検討していきます。

また、既存のITシステムのコストも算出し、問題のあるシステムには妥当性を評価したり、ベンダーとの契約の見直しも行います。

SIerの登場

ここからようやくSIerの登場です。
SIerは上記のフェーズで現れたITに関わる内容の実行部分を行います。

具体的なシステム内容の要件定義から設計、実装、テスト、導入、運用保守まで推進していきます。すでにこの段階では、どんなシステムを作るか、はコンサルが入り込んでいるため決まっています

例えばIT業界向け人材紹介の売上向上のために、AIのマッチングシステムを作る部分はITコンサルが決めています。SIerはそのマッチングシステムを具体的にどういう内容で作っていくか、ここから入り込んでいきます。

業務要件のヒアリングをして、よりよいマッチングシステムづくりをすることはあっても、マッチングシステムではなく別のシステムを作る、といったことを選択することはないです。

また、このフェーズもSIerだけ存在しているわけではなく、上記のコンサルがPMOとして進捗が着実に進んでいるかどうか入り込むケースも多く、コンサルとSIerが入り混じっている状況です。

まとめ

一旦非常に雑ですが、人材紹介会社A社の成長に、コンサル/SIerがどうかかわっているかを解説しました。

何度も記載している通り、昨今は各コンサル/SIerがそれぞれの領域に進出しようとしています。
DXという魔法の言葉によって、ITが会社の戦略に踏み込むケースが多くなり、DXコンサル(IT×業務×戦略)という名称も生まれている状況です。

なお、個人的にはこのDXコンサルという名前はあまり好きではないです。なんでもかんでも「DX」を使って、求職者もクライアントも煙に巻かれている感があるためです。

各企業がそれぞれの領域に進出しているとはいえ、実態としてどこの領域を強みとしているのか、まだまだ違いは多くあります。

求職者の方は、ぜひこの事例も参考に、どのフェーズをやりたいのか、じっくり考えていただければ幸いです。

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